325:お風呂を頂こう。
少しの横移動の後に上昇していき、スゥッと滑らかに停止する小部屋。
「さ、着いたわよ」
ジェイさんが到着を告げながら壁を開いて、元居た部屋への入り口を作る。
あ、お姉ちゃんとアヤメさんが戻ってきてる。
「あ、おかえりー。お野菜貰ってたんだって?」
「あー、うん。で、何でお姉ちゃんはサッパリホカホカしてんの?」
なんかお風呂上りみたいなつやつやお肌なんだけど。
アヤメさんも似たような状態になってて、既に抵抗を諦めたのか普通に落ち着いてお茶を飲んでる。
「やー、連れて行き方は怖かったけど、奥でお風呂に入れてもらっちゃったんだー」
「普通に連れて行ってくれりゃ良いものを……」
「あら、アヤメちゃんは入って来た時から警戒してたし、素直に誘っても来てくれなかったでしょう?」
「……まぁ、そうかもしれませんけど」
「それに面白くありませんしね」
「うふふ。そうねぇ」
「ほんっと、あんたらは……」
額に手を当ててうんざりした顔になるアヤメさん。
でもなんだかんだ言って本気で怒らずに付き合ってあげるんだよね。
「雪ちゃんもだけど、アヤメちゃんも大概寛容だよねぇ」
「まぁ否定は出来ないけどさ…… こいつら、私がキレる二歩手前くらいまでしか絶対にやってこないんだよ……」
「プロですわねぇ」
何のだ。イジりのか。
ていうかあの拉致られ方をされても、少なくとも後もう一段階はセーフなんだな……
私が言うのも何だけど、心広すぎじゃない?
「しかしお風呂ですか。どんな感じでしたか?」
なんかレティさんが食いついた。
そういえば自分たちの拠点持ってないし、お風呂にも入れてないんだよね。
このゲームだと必要って訳じゃないから気にしてなかったんだろうけど、入れるとなったら別なのかな。
「良かったよー。広々してて脚は伸ばせるし、ふちに頭のっけてだらーんってしてても滑っていかない様にジェイさんが補助してくれるし」
脚が伸ばせるのは良いなぁ。
うちのティーカップ、しゃがむか足を出すかしないといけないし。
……でも補助って多分、触手伸ばして支えてるんだよね。
まぁ補助には違いないし、文句は無いみたいだから良いのか。
「あと、お湯の温度もお願いしたらすぐに調節してくれたよ」
「うふふ。そこはそれぞれの好みが有るから、言ってくれた方が助かるわねぇ」
まぁ熱いお風呂が好きな人をぬるま湯につけておいても、満足はしてもらえないだろうな。
「あとお風呂に入る前に別々の小部屋に入れられて、シャワーで体を洗わせてもらったよ」
あー、まぁ垢とかは出なくても埃は引っ付いてるかもだし、先に流しておいた方が良いよね。
私もシルクに洗われるし。
「柔らかいのから硬いのまで、いろんな感触のブラシやタオルも用意してくれてたし」
「ブラシっていうか先端がブラシの形になってる触手が生えてたんだけどな……」
あー、壁から……
タオルも表面のつぶつぶを調整した内臓だろうし。
「まぁそれはもう諦めてるけどさ。ただ、シャワーも風呂もお湯がな……」
「お湯? どうしたの?」
げんなりした顔でつぶやくアヤメさんに先を促す。
「ただの水じゃなくて、片栗粉溶いたみたいにトロットロでさ……」
……要するに粘液風呂か。
「良いじゃない、あれはあれで気持ち良かったんだからさ」
「気になるもんは気になるんだよ」
まぁ、それはそうだろうな。
……っていうかジェイさん、こっそりちょっと味わってない?
人の体を粘液に浸して、自分の触手でこすらせたり内臓で水分吸ったりしてるし、実質嘗め回したりしゃぶったりしてる様なもんでしょ。
シャワーで流した粘液やお姉ちゃん達が浸かってた粘液も飲んでるだろうし。
……まぁうん、綺麗にしてもらう対価だと思えば……?
いや、ほんとに食べてるか知らないけどさ。




