表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

319/3658

319:攫われよう。

 おや、シルクがアヤメさんの頭をぽふぽふ撫でてからこっちに飛んできた。

 これはアレか、巻き込まれる可能性を考えて避難してきたのか。


「おーいシルクちゃん、ちょっとこっち来ないか?」


「アヤメちゃん、ちっちゃい子を盾にしようとしちゃダメだよ?」


 帰って来いと呼ぶアヤメさんをお姉ちゃんが諭す。

 ていうかシルクが居てもさっきみたいに隙間を通されるだけだと思うけどね。

 まとめて飲み込まれたとしても、多分シルクだけ優しく吐き出されるのがオチだろう。



「ていうかさ、リアクションの大きさなら私よりミヤコだろう?」


「いやアヤメちゃん、人を売らないでよ」


「いやお姉ちゃん、さっきアヤメさんを生贄にするって言ってたよね」


 一体どの口で言ってるんだ。


「あ。 ……うん、聞かなかったことにしようね!」


「そうですね。きっと気のせいですよ」


「あんたも大変だな……」


 仲間に売られるアヤメさんを見て、ロクさんが同情の目を向ける。

 なんていうか妙に実感のこもった顔してるし、ロクさんもパーティーでイジられてるんだろうか。



「悪いけど、近寄ってこないでもらえますかね?」


 ジェイさんがうぞうぞと触手を蠢かせてアヤメさんの方に這いずっていき、それを見たアヤメさんが立ち上がって離れていく。


「あらあら、寂しいわ? もっと仲良くしましょうよ」


「その触手をこっちに伸ばすのをやめてくれたら良いですよ」


「うふふ、解ったわぁ。それじゃ触手は伸ばさないでおくわね」


「おわっ!? くっ、なんのぉっ!」


 おぉ、足元に穴が開いたけど咄嗟にふちを蹴って落ちるのを回避した。

 警戒してたとは言え良い反応だなぁ。



「おー、アヤメちゃん凄いなぁ」


「まぁ、どちらにしろ同じ事なんですけどね」


 あー、うん。

 飛び退いて姿勢を整えた結果、壁を背にしちゃってるもんねぇ。


「へっ!? んむぐっ、むぅーっ!!」


 うわぁ……

 アヤメさんがレティさんのコメントにどういう事だって顔した瞬間に、壁から無数の人の腕が生えてきてアヤメさんをゆっくりと引きずり込んでいった。

 完全にホラーだな。



「アヤメちゃん、やすらかにねむれ……」


「あらあら、お友達を売っちゃダメなんでしょう?」


「ひーっ!? やっぱダメかぁー!!」


 あー、黙ってれば良いのにお姉ちゃんが要らん事言って連れて行かれた。

 まぁうん、ちょっとそうなるだろうとは思ってたよ。


 笑顔で手を振って見送るレティさんに何も無いのは、同じ仕掛ける側として仲間扱いだからかね。




「さて、それじゃどういった物が見たいのかな?」


「放っておいて良いのですか?」


 何事も無かったかの様に話を進めるディーさんに、一応尋ねるアルおじさん。


「ああ、彼女たちなら大丈夫。少なくとも怪我をすることは無いよ」


「いやー、大丈夫って言えるかは微妙なとこじゃないっすかね……」


 ロクさんが若干引き気味にツッコむ。

 ディーさんの客で良かったーって顔してるな。



「まぁ今更言っても仕方ないですし、こちらはこちらの話をしますか」


 ルミさん、気が弱そうな顔してる割には結構ドライだな。

 いや、別に顔は関係無いけどさ。


「はいはい! 俺ドリル!」


 ロクさんが元気に挙手して希望を述べる。

 そういえばそれが見たいって言って来たんだっけ。


「ジェイ、頼むよ」


「はぁい。すぐに送るから、ちょっと待っててね」


 ジェイさんの声が天井から響き、言い終わった直後に机の脚の一本を通ってぬるりとドリル付きの腕が机の上に生み出された。

 ……粘液でめっちゃテカってるんですけど。



「ジェイ、いつも言ってるじゃないか」


「あら、乾いたままじゃナカで擦れて痛いじゃない?」


「滑らせなくても運べるだろうに、まったく…… ま、自分は立ちもせずに取ってきてもらってるんだ。文句を言える立場でも無いな」


 壁から伸びてきた触手の持つタオルを受け取り、義手を拭くディーさん。

 いや、あれもタオルじゃなくてジェイさんだな。

 多分サフィさんを拭いた時と同じ感じの、腸を開いて布状にしたものだろう。



「はい、これがご希望の品だよ」


 きれいに粘液を拭い終わって、ロクさんの前に腕を置くディーさん。


「おぉ、ロマン武器…… これ、装着しないと動かないんですか?」


 片手で二の腕を持ち、反対の手でドリル部分を掴んで回しながら訊くロクさん。


「うん、それは僕専用で作ってるからね。動かしてみようか?」


「あ、良いんですか? それじゃお願いします」


 ロクさん、まったく遠慮がないな。

 ディーさんも披露できるのが楽しいんだろうから何も問題は無いけどさ。



 ……ふと横を見てみたら、ルミさんが腕の接合部とかドリルの境目とかめっちゃ見てる。

 そこまで気になるものなのか。


「ん? 仕組みが気になるのかい?」


「あ、はい。今日はこちらのアルおじさんの武器の相談に来たんですけど、私元々こういった機械が大好きでして」


「お、それは嬉しいね。よっ、と」


「おー、回ってる回ってる。すげー」


 ルミさんの目に気付いて話をしつつカコッと腕をはめ、回転させてロクさんに見せるディーさん。

 そういえばドリルはアヤメさんも見たがってたな。

 いや、あれはクロスボウの方が気になったのかもしれないけど。

 まぁ良いか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ