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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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318/3658

318:ドッキリさせよう。

「うふふ。リアクションの大きな子は好きよー?」


 ロクさんを受け止めた背もたれから触手を生やして、よしよしと頭を撫でながら体を起こしていくジェイさん。


「っていやいやいや、え、何? ちょっ、えっ、あ?」


 おーおー、すごい混乱してる。

 ディーさんが体に色々仕込んでるのは言ったけど、ジェイさんについては何も言ってなかったもんなぁ。



「それじゃ改めて自己紹介しましょうか。私はジェイちゃん、生物や植物の研究と研究所をやってるのよー?」


「……『研究所をやってる』って、普通なら運営してるとかそういう意味なんだろうけどな」


「うふふ。私の場合は文字通りねぇ」


 アヤメさんがうわぁって顔をしつつもコメントを挟んでいく。



「え、これ、この椅子、ジェイ、さん!?」


 うん、この慌てようにはジェイさんもニッコリだな。

 いや、まぁ大体いつも笑顔だけど。


「そうよぉ。はい、これも私だけど、遠慮なくどうぞ?」


 倒れそうになった時に投げ出してたカップを、きっちり受け止めていたジェイさんが差し出す。

 おぉ、肉で薄い膜を張って、お茶がこぼれない様にしてある。



「え、何、マジで!? ちょっ、気付いてたなら言ってくれよおっさん!」


 とりあえずカップを受け取りはしたもののさっきみたいに口を付ける気になれないのか、隣のアルおじさんに文句を言うロクさん。


「ドッキリのネタをバラすわけにはいかないと思いまして。皆さんあえて黙っているようでしたし」


「くっそ、逆の立場だったら俺も黙ってるだろうから何も言えねぇ……」


 空気を読んだだけだと言うアルおじさんの言葉に、素直に納得してしまうロクさん。

 それで良いのか?

 いや私なんて入る前から知ってて黙ってたんだけどさ。




「それにしても、ジェイさんにしては脅かし方が優しいですね」


 正直椅子に固定して床に引きずり込むくらいやると思ってた。


「あら、この子はあくまでもディーのお客様でしょう? 私が取っちゃうわけにはいかないじゃない」


「あー、なるほど」


 でも正直、すでにちょっと精神すり減らしてるよ?

 取っちゃうわけにはいかないって言いながら前に出した体でロクさんのお腹に抱き着いて、背もたれと一体化して逃げられなくしてるし。


 あ、前側も木に擬態した。

 丸太に埋まってるみたいにされてるぞ、ロクさん。



「こらこらジェイ、そう言うならちゃんと放してあげなよ」


「はぁい。ごめんなさいねぇ?」


 人型のジェイさんが近寄って、倒れないように両手で肩を支えてから椅子を元の形に戻した。


「う、あ、いや、大丈夫っす……」


 近づいてきたときにちょっとビクッてしたけど、ちゃんと座れる程度には落ち着いてるな。

 まぁ落ちそうになったのも、いきなり飛び出てきてビックリしたからだし。



「ジェイ、もうそれ(・・)も良いんじゃないか?」


「そうねぇ。実はこれ、結構疲れるのよ」


 スッと色を失って、全身が本来の青白い色になるジェイさん。

 お、やっぱり服や靴も全部擬態だったか。


 ここでも「うおっ!?」って驚いてるロクさんに、満足げに頷くジェイさん。

 まぁ今回はお姉ちゃんやアヤメさんもちょっと声が出てたけどね。

 ……でもまだ続きが有るんだよな。



「ふー、やっぱりこっちの方が楽ねぇ」


「ジェイ」


「んもぅ、解ったわよ。段階を踏んだ方が楽しいじゃないの」


「まぁ、気持ちは解るけどね」


 解るんだ。

 まぁ長い付き合いだろうし、割とディーさんも見た目に似合わず子供っぽいところあるもんなぁ。



「えいっ」


 掛け声とともに両脚にピピッと筋が入り、バラッと解れて細目の触手が床に広がっていく。

 ロクさん、ギャーとか言ったらジェイさんが喜ぶだけだよ?

 いや、むしろ聞いてなかったのに全く動じてないアルおじさんとルミさんの二人が凄いのか。


「うふふ。何もしないから大丈夫よー?」


「……ふぅ、よっしゃ落ち着いた」


 お、しっかり深呼吸して落ち着きを取り戻した。

 ずっと驚いててもイジられるだけだって気付いたか。

 ジェイさんはちょっと残念そうだけど、少なくとも今はこれ以上ロクさんで遊ぶ気は無いらしい。



「ふぉわあぁっ!?」


「うわビックリしたぁ!? アヤメちゃん、いきなり何なの!?」


 いきなり奇声を上げるアヤメさんに驚いて椅子から落ちそうになるお姉ちゃん。

 ……レティさんがニッコリしてるってことは、何かイタズラされたんだろうな。


「いや、今首に何か…… いや、何かって言うかどうせジェイさんだろ」


「うふふ。アヤメちゃん、確証も無いのにひどいわー?」


 ニッコリしつつ頭をコテンと倒して首を傾げ、知りませんよーって顔をするジェイさん。

 でもやりそうなのも、実際にできるのも今の状況じゃジェイさんだけだよね。

 よく見たらシルクの足の間、ちょっとヌメってるし。

 あれジェイさんの粘液でしょ。




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