304:練習しよう。
おっと、ぴーちゃんの先生になってくれるなら私からも挨拶しないと。
ぴーちゃんの横に行くかな。
「ぴっ、ぴー、ぴっ」
「あーうん、見てたよ」
「おじさんに指導してもらえる事になったよー!」という事をジェスチャー込みで説明してくれるぴーちゃん。
ジェスチャー込みっていうか喋るわけじゃないから、説明は鳴き声の発音とジェスチャー頼りだけど。
「うちの子をよろしくお願いしますー」
「ぴー」
おじさんに聞こえない挨拶をしつつ、ぴーちゃんと一緒にお辞儀する。
あ、後ろでシルクも一緒にやってた。
「お役に立てるかは判りませんが、こちらこそよろしくお願いします」
おじさんも丁寧に頭を下げてくれた。
なんていうか、紳士的な人だなー。
「では早速。ああは言いましたが、まずは私の教えられる基本的な技術から始めるとしましょう」
「ぴっ!」
うん、基本は大事だよね。
少なくとも地上に居る時は使えるんだし、体の動かし方も学ばないとだ。
よく考えたらこれ、ぴーちゃんが鍛えられるにつれてカトリーヌさんのダメージが増えていくわけだけど、まぁそれは望む所だろうし別に良いか。
みんな帰らずに色々やり始めちゃったし、私もなんか練習するかな。
何しよ?
……あー、そういえば今日の話してる時に複数の魔法を同時に使う練習しようかとか考えたっけか。
うん、やってみよう。
「あ、私は魔法の練習するけどシルクはどうする? その辺で遊んで来ても良いよ」
私の言葉にふるふると首を振って、近くの地面にふわっと座るシルク。
お傍で見てますって事なのかな。
って座ってる様に見えるけど、よく見たらちょっとだけ浮いてる。
別にそれ、立ってても同じなんじゃ……
あー、立って見られてたら気になりそうって配慮なのかな?
まぁシルクがそうしたいならそれで良いや。
何で試そうかな?
んー…… あ、そう言えば【大洪水】や【灼熱旋風】って発動時だけやたらコスト重いんだよね。
あ、【姫蛍】もか。
これって、消費がほぼゼロになるまで出力を絞って常時発動しておけたら、発動コストを節約できるんじゃないかな?
流石にいきなり【浮遊】を含めて四つ同時になんてのは無理だろうけど、やってみる価値は有るかも。
……どれもあんまり使ってない気もするけど、まぁうん、鍛錬の一種だし全くの無駄って事は無いだろう。
うん、実用的な面で言うと【大洪水】が候補かな?
でも【姫蛍】で常時ほんのり光ってるのも妖精らしさが有って良いかも。
……このゲームの【妖精】っぽいかって言われると、うーん……って言いたくなるけど。
とりあえず、試しに【大洪水】を起動。
温度と出し方は通常のままで、出力を絞って……って減らす調整でもMPは消費するんだな。
まぁ追加消費で調整って書いてあったから当然か。
でも維持コストはちゃんと減ってるから、どこまで絞れるかやってみよう。
……あ、出なくなった。
ん、でも今出てないのにMPが減ったな。
いやこれ空腹や浮遊で減ってるだけか。
あ、いや、ちゃんと発動してるわ。
微妙に右手の人差し指の先だけがひんやりするから、他より少し湿ってるっぽい。
……なんかこれじゃ手汗みたいだな。
とりあえず元の出力に戻してみるか。
うん、調整でMPを使うとはいえ普通に発動するよりは安いな。
まぁ発動位置が固定だから、この指からしか出せないけど。
うーん、【座標指定】の相対座標で私の前に設定すれば……
いやダメだ。
それ、そこに誰かが居たら体内で発動して危ないわ。
普通の人ならそこまでの痛手じゃないだろうけど、私と同じサイズのぴーちゃんとかもっと小さいラキとかだとマズい事になるかもしれないし。
うん、危ない事は止めておこう。
口の中なら元々湿ってるけど、それはそれで舌が重なったりしたら自分が危ないし。
【姫蛍】なら体の好きな場所で発動できるけど、【大洪水】と【灼熱旋風】は手からってきっちり書いてあるもんなぁ……




