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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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302/3658

302:観戦して回ろう。

 さてさて、そのラキは頑張ってるかな?

 あ、ぴーちゃんがカトリーヌさんに飽きたのか他を見に行った。


 ……操ってる人と目が合ってビクッてされて、ちょっとしょんぼりして謝られてる。

 うん、まぁ仕方ない。

 現実だとそのまま逃げられるだけだから、謝ってもらえる分まだ良いよ。うん。



 お、やってるやってる。

 ってあれ、なんか攻守が入れ替わってるのかな?

 ラキがグローブ付けてる。


「別の遊びにしてみたの?」


「はい。いくらやっても捕まえられなかったので、お願いしてみたのですが……」


「ん、何か問題が有った?」


「問題と言いますか…… ラキさん、そちらの方が得意らしい上に、容赦も全く無いですね」


 あ、顎にまっすぐパンチが入って人形の首がバコーンって吹っ飛んだ。

 削り取るとかへこませるとかじゃなくて丸ごと吹き飛ばすとか、一体どうなってるんだアレは。

 


「あー…… まぁ、飛びかかる時限定の能力みたいなのもあるっぽいくらいだしね」


 私に向けて勝利のダンスを踊るラキを見ながらコメントする。

 今は完全に攻撃に備えてない状態みたいだけど、頭部を破壊したら勝ちってルールなのかな?

 レティさんも糸を置いて飛び散った土を人形の根元に集めてるし。


「よしよし、頑張ってるねー」


 踊りを止めて両手を上げ「褒めて褒めてー!」って顔をしてるので、近づいて人差し指でナデナデしてあげた。


「よし。ラキさん、もう一勝負と参りましょう」


 準備を終えたレティさんの言葉で、ラキが私の指先に頬ずりするのを止めて人形に向き直る。


「お互いに頑張ってねー」


 試合を始めた二人に手を振って離れる。

 ……あれ?


 そもそもあれって待ってる時間に遊んでるために渡した様な?

 まぁ良いか。

 別に他の用事が有るでもないし、そこまで夜遅くもないし。




「あ、白雪さ」


「あっ」


 横から近づいた私に挨拶をしようとしたカトリーヌさんが、ほっぺたに人形のパンチを受けて吹っ飛んだ。

 あれ、でも痛そうではあるけど無事だな。

 少なくとも首はちゃんと繋がってる。



「ご、ごめんカトリーヌさん! 大丈夫!?」


「いやお姉ちゃん、自分で当てておいて何言ってんの」


「いや、なんか当たると思ってなかったからビックリして……」


「ご心配なく。と言いますか、思ったより痛くないですわ……」


 あ、ガッカリした感じで戻ってきた。



「まぁ、よく考えてみたら同じスケールな訳だしね」


「そうですね。土で出来ているおかげか、重めの打撃ではありましたが」


「んー…… 多分素材じゃなくて、根元が固定されてるからじゃない?」


「ああ、なるほど」


 お姉ちゃんの推測に納得するカトリーヌさん。

 足が滑ったりしない分、パンチの反動を綺麗に受け止められるのかな。



「では、今度は石などで作って頂いて」


「いや、別に私カトリーヌさんを殺したいわけじゃないからね?」


 鞄を後ろに隠しながら言うお姉ちゃん。

 いや持ち主じゃないと多分出せないし、そもそもお姉ちゃんの持ってる石を使えとも言ってないし。

 ていうかその反応、その鞄どれだけ石入ってんの?



「残念です。ではこのまま練習を続けましょう」


「えー? カトリーヌさん相手だと、当たった時焦っちゃうんだけど……」


 うん、まぁそうだろうね。

 さっきのも挑発された勢いでそのままやってただけだろうし。


「大丈夫ですよ。先程は油断しただけですので」


「でもなー」


「本来でしたら、この程度の弱々しい攻撃しか出せないミヤコさんなどに、この私が吹き飛ばされるはずが無いでしょう?」


「うぬぬー」


 カトリーヌさんの挑発に唸るお姉ちゃん。

 しかしカトリーヌさん、人形の腕をぺちぺち叩いてる仕草や表情とか、見下す態度が手慣れてる感じだなぁ。


 ……あー、そうか。

 あの人の場合、自分がされたい対応を参考にすれば良いのか。



「よーし解った。そんな挑発が出来ない位、上達してやるんだから!」


「それで良いのです。この様な口が二度と聞けない様に、徹底的に打ちのめしてしまいましょう」


「いや、そこまでは別に…… ある程度当てられる様になればそれで良いよ」


「むぅ、案外落ち着いていらっしゃる」


 いや、カトリーヌさんが行き過ぎた事を言うから、逆に引き戻されてるだけだと思うよ?




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