290:食べながら話そう。
しかしそうは言っても、やっぱ眠くなるな……
まぁ別に、寝ちゃいけないって訳じゃないんだけどさ。
もういい加減見られるのも諦めてるし、寝てるのを見られたからってどうという事は無い。
でも、目の前で知り合いにじろじろ見られるのは流石に気になる。
他の視線と違って、どうせ後でからかうためだし。
「ええい、人が寝そうになるのを見てないでちゃっちゃと食べなさい」
「別に急いじゃいないだろ?」
「ねー」
「いや、そういう問題で言ってるんじゃなくてね」
じろじろ見てんじゃないよって言ってんの。
確かにこの後の予定は撃たれることくらいだけどさ。
「雪ちゃんは可愛いからね!」
相変わらず唐突にぶっこんで来るお姉ちゃん。
「はいはい、それもいいから。ていうかなんか久しぶりに聞いた気がする」
最後に言ってたのって…… 多分昨日の朝だったかな?
そんな久しぶりでもなかった。
「そうですか? ……あぁ、白雪さんは別行動だからですね」
「今日、外で四回は聞いたぞ」
「なんで外で私の事をそんなに……」
「雪ちゃんは可愛いからね! っていうか半分くらい聞き流されてた!」
「いや、倍は言ってんの!?」
「休憩などで雑談をしている時、言えそうだと思ったらねじ込んでくる感じですね」
「もう持ちネタみたいなものだよな」
「言えそうなタイミングがそんなに出てきてるのもちょっと気になるんだけど……」
流石に私の話題が出なきゃ言わないだろうけど、なんでそんなに人の話してんの。
……いや、うん、話のネタには事欠かない種族だけどさ。
「まぁ私らの場合ベータと同じ仕様は確認程度だし、そうなったら新しい事の話題になってくるだろ?」
「それもそうか」
同じチームで同じゲームやってて、まだベータの時にやった辺りをうろついてるんだろうし。
「身近に白雪さんが居るので比較的【妖精】の話題は多くなりますが、他にも色々追加された事はありますからそれだけという訳でもありませんよ」
「あー、そういえばランダム自体無かったから、レア種族は全部追加要素なんだよね」
「そうだな。まぁハーフやミックス以外はどれも酷すぎて、殆ど情報も出てこないんだけど」
「まともな人はウンザリして、追加でお金出してでも作り直しちゃうからねぇ」
姉に遠回しに変人って言われた。
まぁ良いけどさ。
「そういえば、あんまり話題にならないけど職業もちょっと増えてるんだよね」
「まぁ正直、大抵の職業はボーナスが違うだけだから目立たないしな」
「専用のスキルが有る方が稀ですから」
そういう意味では【召喚士】は特別なのか。
「そういや、こっそり追加されてた【騎兵】なんだけど」
ん、そんなの…… あー、流して見てた時に見た気はするな。
「あれってどうなの? なんかカッコ良さそうだけど、あんまり見ないよね」
「馬は外壁近くに繋がれてるらしいし、外で見かけないのは移動範囲が徒歩とは違うからだろうけど。ただ、それもあって普通のパーティーには向かないわな」
「まぁねぇ」
「あと、馬もパーティー人数に含まれるらしい」
「あー、【召喚士】と同じ理由で敬遠されるんだね」
「まぁこの場合は【騎兵】側も、せっかくの機動力を潰して無理に組もうとはしないだろうけどな」
「組むとすれば同じ【騎兵】で三人でしょうね」
まぁそうなるよね。
馬にちょっと無理してもらえば二人乗りも出来るだろうけど、思いっきり走るのは難しくなるだろうし。
「で、一番の問題点が」
「何?」
「馬はプレイヤーとは別のNPCみたいな扱いで、しかも祝福を持ってない」
「うわぁ…… ってことは」
「迂闊な事をして死なせてしまったら、それでお別れという事ですか……」
「そういう事だな」
……どこまでも開発は鬼なんだなぁ。
相手はレア種族じゃないんだから、少しは加減しようよ。




