286:しゃぶられよう。
「えーと、結構ちゃんと落ち…… あ、はい」
「だーめーでーすー」みたいな感じで目をつむって首を振られてしまった。
これ抵抗しても最終的に洗われちゃう流れだな。
別に良いんだけど。
叱れば止めてくれるだろうけど、別に叱る程の理由がないからなぁ。
皆を置いて来てはいるけど、別に誰も急いでないんだし。
シルクは「待ってて」と言う風に手の平をこちらに向け、木材を抱え直して脱衣場に出ていく。
あ、すぐに戻って来た。
隅に置いておいて、後で片付けるつもりかな?
近寄って来たシルクにひょいっと抱えられ、私が先ほどお湯を注いだ出来立ての枡の方へ連れていかれる。
脱がされないって事は足だけ洗うんだろうな。
まぁ使ったの足だけだし、何もおかしくは無いか。
「あれ?」
足湯みたいな感じになる様にふちに座らされるのかと思ったら、ふちには置かれたけどくるっと回して外向きにされた。
どうするんだろうと思っていたら、正面にぺたんと座ったシルクが左手を私の翅の下に添えて、右手を私の胸に当ててゆっくりと後ろに傾けていく。
あぁ、左手は落ちない様にって事ね。
えーと、これ、また舐められる感じかな?
もう大体落ちてるはずなんだけど。
うん、やっぱりそれっぽい。
胸を押さえてた右手が下げられて、私の右脚の下に添えて持ち上げ始めたし。
むぅ、腿が垂直になるくらい上げられると少し窮屈だな。
別に苦しくは無いし、背もたれも有るから大丈夫だけどさ。
観念してシルクを眺めているとシルクは私のつま先に顔を近づけて口を開け、
「ふあっ!?」
……うん、ちょっとびっくりした。
まさか足を半分以上、はむっと口に入れられてしまうとは思ってなかった。
くるぶし付近から先の足裏が、ぺとっと唇と舌に貼り付いてる。
ふおおお……
口に含んだ足を少し唾液に浸して、にゅるーっと舌と唇で拭き取りながらゆっくり抜いていかれる。
抜け切る寸前に軽くちゅるっと吸って、指の間もなるべく綺麗に。
こくりと口の中の物を飲み込んでから、顔を横に倒して今度は踵側のおそうじ。
はむっと咥えて、こちらはれろりと舌先を一周させる。
唾液を残さぬ様に口をすぼめて、ちゅぽんと足を引き抜く形になるように顔を下げるシルク。
倒していた顔を起こし、舌を出して足の側面を踵からつま先までれろぉっと一舐め。
内側を舐めたら顔を動かし、今度は外側。
顔を正面に戻して踵からつま先まで舌を滑らせ、先端から折り返して足の甲を通って足首まで。
……結局舐めるんじゃないか!
いや、舐めないとか一言も言ってないけどさ。
左足も同じように処置されて、なんか両足が少しふやけた気分。
まぁ、別にふやけてはないんだけどね。
あと何気に、シルクは結構頭を動かしてるはずなのに、背もたれの左手が微動だにしないのが無駄に凄い。
あ、その左手が動いた。
リクライニングシートの様にスーッと起こして私を座らせて、少し横に回り込んで右手を腿の下に差し込んで反転させ、ふちに座らせて足をお湯に浸ける。
ふいー、ちょっと気持ち良い。
膝から先を軽く前後に動かして、舐め回された足を軽くすすいでみた。
お、これで良かったのか。
背後からシルクの左腕が回され、普段通りに片腕で抱っこされた。
いつの間にか右手にタオル持ってるな。
タオルを持った右手でぽふぽふと足を拭かれ、宙に置かれる。
あ、お湯を捨てるのね。
枡を持って隅っこの排水溝に向かうシルクを眺めつつ、ふと背中側に足を曲げて右手で触れてみる。
おー、油っぽさが全然無い。
……あれ、石鹸使ってないはずなのに何で?
まぁ良いか。
シルクも戻って来たし、皆の所に戻るとしよう。
戻るって言っても、表まではただ運ばれるだけだけど。
抱っこされてホールに向かっている最中に、試しに冗談交じりで聞いてみる事に。
「なんか水だけにしちゃ妙に綺麗になってたんだけど、もしかしてシルキーの涎って汚れを落とす効果でもあるのかな?」
……あははーって感じで聞いてみたら、「え? そうだよ?」って顔で頷かれてしまった。
マジかー。
さっき石鹸使ってたのは、ラキも一緒に洗うからだったんだろうか。
もしくはラキ「で」洗うからだったんだろうか。
昨日のお風呂とかでもそんな感じの事してなかったけど、今日ずっと家事しててレベルが上がって、それで解禁されたとか?
【妖精】ほどじゃないけど、シルキーも謎の多い種族だなぁ。
……【妖精】が呼んだから、とかじゃないよね?




