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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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280/3658

280:お金の話をしよう。

「んで切り上げて受付に戻ったら、なんかラキがぴょこぴょこ踊っておひねり貰ってた」


 モニカさんが私の言葉にまたピクッと反応したけど、今度はちゃんと大人しくしてた。

 流石にこれ以上は本当に叱られると判断したか。


「へー、ちょっと見たかったなー」


 お姉ちゃんの言葉に、モニカさんの後頭部が上下に揺れる。

 まぁ当のラキは知らん顔してるけど。



「それを片付けて役場から出ようとしたら呼び止められて、アリア様に一緒に行こうって言われて並んで帰ってきたわけだね」


「うむ」


「なるほどー。とりあえず雪ちゃんの日常が色々とアレなのは良く解った」


「いや今日は特に…… いや昨日もか。……くそぅ、マシな日はあっても何事も無い日が無かった」


「マシな日でも何かしらで死んでるしな」


「うん。とりあえず言いたいのは、好きでやってるんじゃないやい」


「しかし、少なく見ても半分くらいは自主的にやっていますよね?」


「……否定できない」


「まぁ、多分普通の人なら【妖精】の謎仕様を見つけても出来るだけ見なかった事にするよね」


「ま、まぁ良いじゃない……」


 うん、自分で言うのもなんだけど、確かにここまで開き直る人はあんまりいない気もする。

 カトリーヌさんはどう考えても普通じゃないし。




「それにしても、【妖精】だけズルいって言われそうなくらい荒稼ぎする手段が揃えられてるよな」


「確かに、どれもこれも高値の付く品ばかりですしね」


 アヤメさんが思い出したように言い、レティさんが同意する。



「んー、でもさー」


「なに?」


「正直な所、『稼いで何すんの?』って話なんだよね。自分で使えるわけでもないし」


「あー。まぁ確かに、何買うんだよって話になるな」


「ご飯は必要無いし、食べたくなってもこの体だと銅貨一枚でお腹いっぱい食べられるし」


「屋台ですと無料(タダ)で頂けますしね」


 おじさん達、【妖精】に優しいもんね。



「まぁお金は置いていくけどね。で、基本的に外に出るための品は必要ないし」


「自殺行為だよなぁ。でも、片っ端から先制攻撃出来ればなんとかなるんじゃないか?」


「それは出来るかも知れないけど、一瞬も油断できないしワンミスで死に戻りだよ?」


 そもそも何が居るのか自分の目で見た訳じゃないから、しっかりした予測も出来ないし。



「だねー。てか、【妖精】の事だからまた何かしら罠が用意されてそうだよね」


「不吉な事言わないでよ…… まぁ、外はそのうち試してみないとって思ってはいるけどさ」


「ダメでも死に戻って来るだけですしね。その時はお供させて頂きますわ」


「うん、お願いするよ。……罠が二倍になって襲ってきたらどうしよう」


「もしあるなら、一人分だけでも無理ゲーだろうから変わらないだろ」


 ……まぁそうかも。




「うん、それは良いとしてお金の話だ。ご飯買わない、装備とかも買わない。で、町で出来るって言ったら製造とかだけど」


「それなら色々とお金かかるんじゃない?」


「いや、そもそも私のサイズで何か作っても、普通の人にはあんまり意味が無い」


 この体で人間サイズの物を作るのは、色々と厳しいしねぇ。



「細かい彫刻を入れたりするくらいなら出来るんじゃないか?」


「それでしたら他の方の製造の補助でしょうし、逆に技術料を頂ける可能性がありますね」


「んだね。小さいアクセサリなら一からでも作れると思うけど、それだと素材もあんまり要らないし」


「工具とかは?」


「……市販品、使えると思う?」


「ごめん」


 大抵の道具は、持つことすら不可能だよ。




「あ、お家とかは?」


「あんまり拘らなかったら最初に持ってるお金でも何とかなるんじゃないかな。置く場所さえ確保できればだけど」


「【妖精】の家であれば、何処であろうと皆進んで設置してくれるだろうな」


 アリア様のありがたい様な良く解らない様なお言葉が。

 まぁ良くしてくれるんだからありがたい話か。


 それに今ならもう、この庭園の中なら置き放題だし。



「普通のお部屋だけなら、最悪ちょっと綺麗な箱にドア付けるだけでも良いし」


「三十センチ四方も有ればちょっと狭めのお部屋にはなるね」


「まぁ確かに、変に贅沢しなきゃ十分足りるか」


「そもそも、普通だと自分の家などしばらくは持てませんしね」


「そこは恵まれてるけど、そもそも必要かって言うとね」


「んー、確かにお宿も貸倉庫も有るからね。無理に家持つ必要もそこまで無いよね」


 人間サイズの家だと、土地もそれなりに必要になるだろうからね。

 しばらくは頑張って稼がないと無理だろう。




「でー、後は着飾ったりするとか」


「それは結構かかるんじゃない?」


「んー、でもなぁ。アクセサリはそもそも人間じゃ作れないから自作か同じ【妖精】頼りだし、素材も人間の指先に乗るくらいのちまっとした量しか要らないよ」


「服は?」


「今着てるくらいの質の服を買ったとしたら、結構お高いだろうけど……」


 いや、作った人を考えると値の付けられる物じゃない気もするけどね。

 なんせアリア様のお手製だし。



「けど?」


「素材に拘ったらこれ(・・)になっちゃうんだよねー」


 人差し指からにょろーっと糸を出しながら言う。


「あー、そっか」


「ここから織って服にするのをお願いするにしても、別にお金じゃなくて『この糸上げます』で大丈夫だし」


「布を扱う者としてはそちらの方がありがたいな。というか、金を払われたらそれで売ってくれと頼むだろうよ」


「ですよね」


 アリア様の同意を得られた。

 うん、実際ティアーナさんもすっごい欲しがってたし。




「ま、無駄に贅沢しようと思えば使えなくはないけどね。人に見せるわけでもない豪華な家具とか」


「私のベッドの様に、ですわね」


「あ、別に嫌味ではないよ?」


「私としては」


「はいはい、その方が良いのね」


「雑ですわぁ……」


 言うまでも無いんだからそういう扱いにもなるよ。

 雑だって言うのも嬉しそうだし。




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