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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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276:薄めてみよう。

 よしよし。何はともあれ、ひとまず機嫌は直ってくれたみたいだな。

 うちの子同士じゃなくても、やっぱ険悪なのは良くないし。



「あはは、流石雪ちゃんとこの子だねぇ」


「チョロいな」


「ぴぅ」


「むぅ、否定できない」


 チョロいと言われて少し恥ずかしそうに鳴くぴーちゃん。

 でも実際、今のはチョロいって言われても仕方ないよね。



「時に白雪様」


「はい、何でしょうか」


「先ほどのお品を、今度はこちらの器に頂けま……モニカ、あなたは座っていなさい」


「おら、大人しくしてねーと覚えるまで小屋に放り込んで監視すっぞ」


 コレットさんの言葉と共にジョージさんが現れ、モニカさんの頭をグッと押さえて座らせた。

 なんだなんだ?

 モニカさんの事だから、「ズルい私にも」って所だろうか。



「それは困ります。私には白雪様の一挙手一投足を目に焼き付けるという、何よりも優先される崇高な使命が有るのですから」


「いや手に持ったそれを見てろっつってんだよ」


「モニカ、やる気が無いのであれば他の…… 解ればよろしい」


 配属を替えるぞと言われそうになった瞬間に、こちらに背を向け石碑の横に正座して習得に励むモニカさん。

 この人はこの人で扱い方が解りやすいな。




「では改めて白雪様、こちらの器に頂けますか?」


「あ、はーい。それじゃ蜜採ってきますねー」


 多分普通に欲しがってるんじゃなくて、調べてみる為だろうから数回分確保しておくか。

 余分に持っておいて損は無いので十個ほどをボックスに入れて、最後に一滴頬張ってもにゅもにゅしながら皆のもとへ。



 「お待たせしましたー。この中で良いんですよね?」と言いたかったが口が塞がっているので、視線でコレットさんに問いかけた。


 こくりと頷いたのを見て、コレットさんが持った深くて大きなグラスに頭から突っ込む。

 おおう、包むように持ってるからコレットさんの体温で少し中がぬくい。


 コップの底にてろーっと蜜を吐き、くちゅくちゅして残りも出来るだけ出しておく。

 うーん、当たり前だし今更だけど非常に口の中が甘い。



「雪ちゃん、それ自分で出られるの?」


「そりゃ出らんないなら突っ込まないよ」


 お姉ちゃんにツッコみつつ上にバックしていく。


「おお、不自然な動き……」


「うん、まぁ自分でもそう思うけどさ」


 翅も含めて姿勢を固定したまま、スライドするみたいに動けるし。

 出来るんだから別に良いじゃない。




「ありがとうございます。さて……」


 私が完全に脱出したのを確認して、礼を言ってグラスに顔を近づけるコレットさん。

 むぅ、自分が口から出した物の匂いを嗅がれるのは、なんだか恥ずかしいな。


 ……いや色々やっておいて今更か。

 普通に考えたら人の舌に吐き出す方がよっぽどアレだし。



「う、これは……」


「ど、どうしました?」


 なんだなんだ。

 困ったような顔でグラスから離されると、臭いって言われてるみたいでちょっと……



「すみません、あまりの酒精の強さに……」


「あん? ……お前、よくこんなもん口に入れてられたな」


 ジョージさんが出てきて、横から嗅いで顔をしかめる。

 何、そんなに強いの?



「え、自分じゃ全然判んないんですけど……」


 近寄ってグラスのふちに手をかけ、上に顔を出して嗅いでみても何も感じない。


「【妖精】は酒に酔わないのか?」


「それにしても、匂いさえ感じ取れないって事は無いと思うんですけど…… いや、現に判ってませんけど」


「白雪様、こちらはどうですか?」


 アリア様の疑問にこちらも困っていると、コレットさんがスッと口の開いた酒瓶を差し出してきた。

 嗅いでみろって事か。



「うおぉぅ、くらくらする……」


 私の顔程の大きさの穴に近づき、スーッと嗅いだ所で素早くバック。

 これはきっつい。


「ふむ、酒自体に耐性が有る訳では無いのだな」


「こちらは効果も香りもお酒の様ですが、全く別の代物なのでしょうか」


「かもしれんな。毒を使う生物が耐性を持つのと同じ様なものだろう」


 毒を吐いた覚えは無いんですけど。

 いや、一滴であんな状態になる程の強さなら数滴飲んだら死んじゃいそうだけどさ。




「少し薄めてみてはどうだ?」


「はい。……これでもまだ強いですね」


 アリア様の提案に従い、どこからか取り出した水差しでグラス一杯に水を注いで、ガラスの棒でかき混ぜるコレットさん。

 あー、それでもまだ濃すぎるみたいだな。

 数百倍に薄めてそれって、原液は一体どうなってるんだよ。



「ふむ、この感じなら一瓶で丁度良いくらいではないかな」


「そのようですね。試してみましょう」


 空のワイン瓶と漏斗を取り出し、グラスの中身を注ぐコレットさん。

 ……なんでも持ってるな、この人。


 追加で水を流し込んで薄め、瓶をくるくる回す様に揺らして軽く混ぜる。

 十秒ほど混ぜてから先程のグラスに少しだけ注いで、アリア様の前に置いた。



「ふむ、これならば少し強めのワインくらいか。蜜の風味はほぼ無くなっていそうだが……」


「その点は、薄める側の液体を工夫する事で対応するしかないかと」


「だな。どれ、試しに…… ぬぅ、ダメか?」


「ぴー」


 試飲しようとアリア様が手を伸ばした所に、ぴーちゃんが割り込んで遮る。

 お前には飲ませないぞって事か……




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