263:振り返ろう。
「振り回されたって一体…… あー、おんぶされて飛び回ってたってやつかー」
お姉ちゃんが疑問を口にし、即座に自己解決する。
うん、やっぱりそれも書かれてるのね。
まぁかなり広く飛び回ってたし、見てる人も居るか。
「そだね。まぁ帰ったらシルクに捕まってお仕置きされてたけど」
「あー」
「で、ぴーちゃんがめーちゃんの肩の上で正座させられてる間にエリちゃんと話をして」
「うん」
「なんかカトリーヌさんが死んで私と召喚獣で役場に行った。シルクは残ってお仕事の続きをやってたけどね」
「待って待って。なんで流れの中でカトリーヌさんは死んでるの」
うん、まぁツッコむよね。
「お恥ずかしいですわ」
「いや、誰も褒めてないからね? なんでちょっと照れてるのさ」
「何があったの?」
「えーと、確かシルクの座布団になってたんだけど」
「まずその時点でどうかと思うけど、うん。で?」
ですよね。
「多分下から何かやったんだろうね。いきなりシルクがビクッとして、一気にカトリーヌさんの頭に体重かけてお尻で潰してた」
「イタズラが過ぎましたわ」
「ほんと何やってんの……」
うん、まぁこういう人だから仕方ない。
いや、普通の人なら投げ出すのかもしれないけど。
「で、まぁ役場で合流しようってメッセージを送ってから出発して、受付で二匹をライサさんに紹介して」
「あの人の事だから、喜んだんじゃない?」
「喜ぶどころか、ラキを良く見る為に即座に【視力強化】取ってたよ」
「あー、小っちゃいからね」
「だからってそこまでするかね」
「まぁ、あの人ですから……」
なんかスッと納得されてる。
まぁそうなるよね。
「うん、まぁ解りやすいよね。で、魔法を確認してもらう為にジョージさんも呼んで中庭に行って」
「ん? あー、危ないもんね」
「そういう事。で、行こうと思ったら受付からキャシーさんも連れていかれてね」
「あ、知ってる人だ」
「お姉ちゃんは案内されてたしね。で、色々有ってキャシーさんが石になった」
「えーと、色々?」
「まぁ詳しくは省くとして、お仕事でやらかした罰だね」
「厳しいんだねぇ……」
コレットさんの訓練に付き合うのを、それ以上に恐れてたっていうのは黙っておこう。
本人が目の前に居るし。
いや、多分知ってるんだろうけどさ。
「で、その後に糸も見せて、カトリーヌさんがぴーちゃんに土下座して」
「えーと…… 今度は何があったの?」
「ゴムにしたやつの端っこをカトリーヌさんが噛んで、反対をぴーちゃんがくわえて伸ばしてたんだけど」
「いや、なにやってんの。で、カトリーヌさんが先に放しちゃったんだ」
「そういう事。で、ぴーちゃんに受付で可愛がってもらうお仕事を任せて、魔法の訓練を始めた」
「あー、なんかかわいーのが寝てるって書いてあったね」
「ぴぅー」
ちょっと恥ずかしそうにするぴーちゃん。
うん、ちゃんとそう思って貰えてたならお仕事は成功だな。
「訓練を始める前に、汚れない様にカトリーヌさんに上の服を脱がしてもらって、脇腹に肘を叩きこんだ」
「ひどくない?」
「ひどくない。下に着てる妖精の服まで脱がそうとしたからだし、そのツッコミ待ちでやったんだろうし」
「だんだん慣れてきてるな」
「慣れざるを得ないでしょ……」
この人、一緒に居たらかなりの頻度で何かやらかすし。
毎回戸惑ってちゃキリが無いよ。
「で、服を受け取ってから訓練を始めて、水の訓練あたりで職員さんにめっちゃ見られてた」
「うん、可愛いのが水遊びしてたら見るよね。私も見る」
「うむ、当然だな」
そんな断言されても反応に困るんだけど。
あと水遊びではないよ。ちゃんとした訓練です。
「皆さん、白雪さんの姿に夢中でしたわ」
「だからカトリーヌさんもでしょって言ったじゃん」
「言うだけでなく、びしょ濡れにされましたけどね」
「雪ちゃんひどーい」
「人の抗議をスルーするからだし。私悪くないし」
いやうん、普通の相手ならやらないよ?
お姉ちゃんにはやるかもしれないけど。
「で、そのあと地面から土の柱を生やして動かして、【土魔法】の訓練してたんだけど」
「だけど?」
「唐突にカトリーヌさんに絡まれた」
「え?」
「人聞きが悪いですわ」
「いやー、いきなり人の柱に攻撃を仕掛けてくるのは、絡んだって言われても仕方ないんじゃないかな?」
「……それもそうですわね」
うん、納得してくれた。
「カトリーヌさんは何をやったの?」
「えーと…… お姉ちゃん、平たい石ある?」
「あるよー。はい」
……試しに言ってみたら、マジで円盤状の岩が出てきた。
しかも結構大きいな。
直径が私の身長くらいあるぞ。
「言っておいてなんだけど何で持ってるかな。まぁいいや、貰って良いかな?」
「いいよー。さらばじょにー」
「え、ちょっと待って。石に名前」
「あはは、流石に付けてないよー。冗談冗談」
「ミヤコの場合、本当に付けてても不思議じゃないからな……」
「むー、私は別に不思議ちゃんじゃないよ?」
「普段はしっかりしておられますしね」
「遠回しに今はダメって言われた!」
いや、うん、言われても仕方ないんじゃないかな。
そもそも石を仕入れてるのって「しっかりしてる」時のはずだし。
「まぁそれはともかく、ちょっと柔らかくしてっと」
慄いているお姉ちゃんをスルーして、岩に魔力を流す。
よし、このくらいで良いかな。
「実演ということですわね?」
「そゆこと。そいっ」
岩に手を置き、中央から少し手前に柱を生やす。
カトリーヌさんも反対から同じ事をやってくれてる。
「おー、なんか生えた」
「で、まぁこんな感じでうねうねさせてたんだけど」
「私が声をかけて、いきなり『えいっ』とやった訳ですわね」
私の柱がガンッと殴られて欠ける。
「なるほどー。確かにこれは絡んだって言われるね」
「でしょ? で、そこから『やったなー』って反撃に移ったけど」
「けど?」
「一発も当てられずにカウンターでへし折られた」
「あー、こんな感じね」
「……一応言っておくけどこれ、別に再現してる訳じゃないからね」
悲しい事に、真面目に殴り掛かってあしらわれてるだけだから。
むぅ、ラキとやりあってた分、更に上手くなってないか……?




