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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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259/3658

259:飛び方を知ろう。

「んー…… ねーねー、アリアさまー」


「む? どうした、めーちゃん」 


 おや、ずっと静かに聞いてためーちゃんから何かあるらしい。



「んー、【樹人】は、高位種族じゃないんですよねー?」


「うむ。確かに人類よりは強力な種だが、どうにもならないという程ではないからであろうな」


 そういえば死に戻りした時も、衛兵さんに真っ二つにされたって言ってたな。


「むー、仲間外れだー」


「まぁ特殊な種族って意味では似たようなものだし、別に良いんじゃない?」


「んー、そうなんだけどねー。うん、まぁいっかー」


 私のコメントに、一瞬考えたけどすぐに納得してくれるめーちゃん。

 どうやらちょっと言ってみただけらしい。




「あの、アリア様。少しお聞きしても良いですか?」


 おや、今度はレティさんか。

 そういえばさっきから、口元に手を当てて何か考えてる感じだったな。


「うむうむ、何でも聞くが良いぞ! とは言っても、知らぬことは答えられんがな!」


 得意げに胸を張って許可を出し、即座に逃げを打っておくアリア様。

 いや、当然の事を言っただけではあるんだけどさ。



「その高位種族の方達なのですが、こちらの大陸にも居る可能性が?」


 わざわざ言うまでも無く、私達を除いてって事だよね。


「ふむ。現在は見つかっていないが、恐らく居るのではないかな? あちらで確認されていない新たな種族が見つかる可能性もあるし、考えたくは無いがそれらが敵対する可能性も無いとは言えないな」


 なんかフラグっぽいけど、最後のは多分ゼロとは言えないから言ってみただけだろうな。

 どう考えても種族丸ごと敵対したら詰むだろうし。


 現実ならともかく、ゲームでそれはマズいだろう。

 いや現実で詰む方がよっぽどマズいけど。



「まぁそうでしょうね。レティ、なんでわざわざ聞いたんだ?」


「いえ、他の方々にも知らせた方が良いかと思いまして」


「あー、そっか。変に突っ込んでも無駄死にするだけだもんな」


「ふむ。……あぁ」


「おや、何か?」


 何かを思い出したらしいアリア様に、レティさんが問いかける。

 というか問いかけろと言わんばかりの間の取り方だな。



「いや、先ほどの話にも出た普段は雲の上を飛んでいる連中…… マハー・パクシーと呼ばれているが、そいつらはまず上空に居るであろうな」


 あ、そういう種族名なんだ。

 まぁ多分人類が勝手に呼んでるだけで、本人たちに言ってみたら「え?」って感じになるんだろうけど。



「マハー・パクシー…… 『偉大なる鳥』と言った感じでしょうか?」


「レティちゃん、それ何語?」


「ヒンディー語ですね。マハは聞いた事も有るかと思いますよ」


「えっと、マハラジャとか?」


「はい。マハーが偉大、ラージャが王という意味ですね」


「へー。レティ、相変わらずやたらと物知ってるなぁ。ていうか命名規則が解らんわ」


「気にするだけ無駄なんじゃない?」


「まぁ人の名前だって各国入り乱れてるしねぇ」


 まぁ大体欧米系だけど。

 あ、ライサさんとかはロシアっぽいかな?



「まぁそれはともかく、連中にとって海が有ることなど何の障害にもならんからな。迂闊に空を飛ぶのは避けた方が良い」


「いや普通の人は飛べませんよ」


 アリア様の言葉に即座にツッコむアヤメさん。

 まぁうん、普通は飛べないよね。



「そうでもないぞ。【風魔法】を鍛えれば可能だからな。ジョージ、見せてやれ」


「へーい。ほれ、浮いてるだろ?」


 おお、スッと現れてジャンプしたまま滞空してる。

 なるほど、【浮遊】を持ってる種族は居なくても魔法で飛べる人は居るんだな。


「まぁあまり燃費はよろしくないが、それなりに飛べなくもないという訳だ」


「こいつらみたいに常時飛ぶのはまず無理だな。下手すりゃ魔力切れで意識が途切れて墜落しちまう」


「指で差さないでくださいよ。まぁ別に良いですけど」


 こちらに突き出した指に向けて【妖精吐息】を吹きかけておく。

 見せるためにわざわざMP消費してくれたんだし、お礼代わりだ。



「お、ありがとよ」


「いえいえ、こちらこそ」


「ちなみに、【火魔法】を鍛える事でも飛べなくもないぞ」


「姫様、チラッと見ても絶対にやりませんからね」


 ニヤニヤしながら言うアリア様と、即座に拒否するジョージさん。


「どんな感じなんです? ジョージさんの態度で普通に飛ぶんじゃないのは判りますけど」


「こう、箱や板に乗ってだな」


「うん、大体解ったんで良いです。それ、下手したら死体が飛んでくだけでしょう……?」


 そもそも着地をどうする気なんだよ。

 足場を上手く地面側に向けてもう一回爆破でもするのか。



「まぁその可能性も無くはない」


「むしろ、死なない可能性が無くはないってくらいでしょうに…… 言っとくが試さん方が良いぞ?」


「やりませんよ…… ていうか私に言っても仕方ないでしょ。普通に飛べるんですから」


「それもそうか。……っておい、やめてやれよ?」


 ん?

 ……お姉ちゃんとレティさんが、アヤメさんをじっと見てるな。



「いやいや、マジで勘弁してくれよ? 怒るからな?」


「ちぇー」


「少し見たかったのですが」


 お姉ちゃんはともかく、なんかレティさんが本気っぽくて怖い。




「まぁその飛び方は半ば冗談としてだ」


「半ばなんですね……」


「ある程度の高さまで飛んで連中の目に付くと、高確率で撃墜されるから気を付けた方が良いのは事実だ」


 またスルーされた。



「縄張り意識の様なものでしょうか?」


「いや、そういう訳では無いようだ」


「というと?」


「何か見慣れない物が浮いていると、つい触ってみたくなるという習性があるらしい」


「特に敵意が有る訳では無いのですね……」


 なんてはた迷惑な……

 せめて減速してからにしてくれればいいのに。



「なんでそのままの速度で突っ込んでくるんでしょうねぇ」


「ゆっくり飛ぶのは難しいそうだ。それに普通に触れて壊れてしまうのであれば、その程度の物だからそこで興味が無くなるのだな」


「本当にただ気になるってだけなんですね……」


「うむ。鳥などの、元々空を飛んでいて見慣れた物に対しては何もしない様だしな」


 なんていうか、飛びたければなんとかしてみせろって試練みたいな存在だな。




「そういえば本人たちから聞いたっぽい感じですけど、コンタクトを取れた事があるんですか?」


「うむ。少々トラブルがあって頭に血が上ったうちの国の魔術師が、周囲の制止を振り切って文句を言いに飛んで行ってな」


「よく無事で済みましたね。相手が止まってくれるまで避け続けたんですか?」


「いや。己の胸板で突撃を受け止めて、相手の肩を掴んで叱りつけた」


 ……あー、それ絶対ジーさんでしょ。



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