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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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255/3658

255:悪行を知ろう。

「そういえば詳しくは残ってないって言ってましたけど、結構解ってませんか?」


「あぁ、それは原因に関してはという事だ。後の調査隊も何も発見する事が出来なんだからな」


 お姉ちゃんのツッコミにアリア様が答える。

 あぁ、そういう風に答えた質問は「何故起きたか」について聞いてたんだっけか。



「まぁそういう訳で、災害と言われても仕方ない様な事態を引き起こした事があるという話だな」


「それにしても、何か村側がやったんだろうって事になったとはいえですよ」


「ぬ?」


「もし怒らせたら、その村と同じ事になる可能性もある訳じゃないですか」


「まぁゼロとは言えんがな。それを踏まえての『優しくしろ』でもあったらしいな」


「あぁ、普段から仲良くしておいて、ちょっとしたことで敵だと思われない様にしておくって事ですね」


「うむ」


 それでもやっぱり、怖い物は怖いんじゃないかなぁ?

 普通の相手ならまだしも、話を聞いてる限り何考えてるか解らない様な相手っぽいし。



「まぁ、仲良くし過ぎても問題があったらしいがな」


「……えーと、今度はどういう事件が?」


「【妖精】に仲間と認識されて、【妖精】の国、もしくは世界に連れ去られてしまうと言われていたらしい」


「正直それだけでかなりヤバいと思うんですけど」


「主に五歳から十歳くらいの子供を中心に、毎年五十人は失踪していたそうな」


「……本気で大問題じゃないですか」


 しかも子供ばっかりって……

 あ、【妖精】と一緒に遊ぶのが、大体その位の年頃の子だからなのかな?

 趣味とかじゃないと思いたい。



「まぁ他の原因の失踪者も数名は含まれていると思うがな」


「『殺された』とか『食べられた』とかでは無く、『連れ去られた』なのですね」


 疑問に感じたのか、レティさんが横から問いかける。


「うむ。消えた者と仲良くしていた【妖精】も一緒に姿を消すことから、その様に言われていたらしい」


「……その様な相手であれば、親御さんは何故一緒に過ごさせるのでしょう?」


「あぁ、確かに。普通、頻繁に子供を連れ去ってる様な種族と遊ばせないよねぇ」


 最低でも目の届く所に置いておくだろう。



「接触させたくないと思っても、不可能に近いのだよ。楽しそうにしている人間が居れば、どこからともなくわらわらと集まって来る様な連中だからな」


「どうやって察知してるんですかね……」


「それは判らん。しかしまぁ、大層可愛らしい物ではあったらしいぞ。音楽が奏でられていれば皆で踊り、芸を見れば自分達もやってみようと真似をし始めるのだそうな」


「あー、危険でさえ無ければ微笑ましいですねぇ」


「ちなみに、子供の次によく攫われていたのは楽師と芸人だったという」


「……危険だから微笑ましくないですねぇ」


 うん、やっぱダメだわ。



「愛らしさに釣られて進んで演奏してやったり、芸を教えてやったりしている内に好かれてしまうのだろうな」


「まぁそういう事でしょうね…… ってそういえば、【妖精】の国はまだ判るんですけど世界っていうのは?」


「ごく稀にだが、消えた【妖精】と共に帰ってくる事例があってだな」


「あ、それもあって殺されたって評判じゃないんですね」


「うむ。ただ、戻っては来たのだが問題がな」


「……今度は何です?」


 うん、どうせまともに帰ってくる訳無いんだよね。

 【妖精】だもんね。



「失踪から早くて二年、報告にある中で一番長い物で三十年もの時が経って帰ってきたのだが、殆どが失踪当時の姿のままであったそうな」


「えっと…… 似てるだけの別人とか、その人の子供だったとかじゃなくてですか?」


「うむ。どのケースでも産みの親を始め、家族や知人が確認して本人だと判断した様だ」


 うーん、難しい問題だよね。

 誰にも区別のつかない様な偽物を用意した可能性は捨てきれないし。

 まぁそこまで行ったら、他の人に取っては本人みたいなものかもしれないけど。



「にしても、そんな長い時間を飛ばされちゃうと色々大変だろうなぁ」


「そうだな。五歳で連れ去られて二十年の時を超えた女の子などは、十八も年上の妹に育てられる羽目になったという」


「……なんていうか、色々と複雑な感じになりそうですね」


「うむ。まぁ妹の方は、幼い頃に慕っていた姉が帰ってきて大喜びだったそうだがな。目に入れても痛く無い程の溺愛ぶりだったそうだ」


 多分お姉ちゃんは抵抗しただろうなぁ……

 まぁ五歳児の体じゃ、大した抵抗は出来ないだろうけど。



「そういった風に通常では考えられない事態になっていることから、別の世界へ連れていかれているのではないかと言われる訳だ」


「なるほど…… あ、殆どって言うのは?」


「二件だけ例外が報告されていてな。七歳で失踪して四年後に現れた少年が、二十代半ばの姿になっていたというのが一つ」


「逆にその子だけ時間が進んじゃった感じですか……」


「そういう事だな。そしてもう一件は七十を過ぎた老婆が、五年後に生後半年ほどの赤子になって帰ってきたという極端な例だ」


 ……いや、ちょっと極端すぎない?

 しかも他の場合は時の流れが違う世界に行ったんだろうって感じだけど、これだけはそれじゃ説明できないし。

 まぁ他のだって実際はどうなのか判らないから、なんとも言えないんだけど。



「今度は盛大に戻りましたね…… 半年って事は、自分で歩く事も出来なかったんじゃ?」


「うむ。村の近くの花畑で【妖精】にあやされている所を、村の子供が見つけて保護したそうだ」


「それ、お婆さんだって何で解ったんですか?」


「どうやら記憶を残したままで、幼児に戻されていたらしい。いくらか年を重ねてハッキリと物を考えられる様になると、子や孫に自分だという事を伝えたそうだ」


「あ、そういえば戻ってきた人から話が聞けたんだったら……」


「いや、攫われていた間の事は誰一人として口にすることは無かったらしいぞ。無理矢理聞き出そうとしてもダメだったそうだ」


「ダメだった……?」


 そういうのって、どんな事をしてでも調べる人がいそうなもんだけど。

 特に若返りとか。



「うむ。常に数匹の【妖精】に護られている上に、戻ってきた者は皆、人間としては桁外れの魔力と体力をその身に宿していたらしい」


 あ、お姉ちゃんが抵抗できた可能性が。

 でもそれはそれで、今度は妹さんが危険だな。


「……素質のある人を集めて鍛えるのが目的だったんでしょうか?」


「どちらかというと、攫われた中で偶然素質の有った者だけが生き延びたという可能性の方が高そうだがな」


「あぁ、確かに……」


 殆どはそのまま帰って来てないみたいだしなぁ。




「桁外れに強くなっちゃったなら色々出来ちゃうし、変な事やっちゃう人も居そうですね」


「いや、どうも【妖精】としては、与えた力を振るわれる事は望ましくないらしい。付いている連中は護衛でもあり、監視でもあった様だ」


「じゃあなんで、わざわざ鍛えて帰したんですかね……?」


「さぁな。もしかしたら、難しい事は何も考えていないのではないか?」


「聞いてた感じだと、それも十分有り得るからなぁ……」


 どうにもアホの子っぽさが有るっていうか、それこそ幼稚園児並の知能しかなさそうな振舞いも多いみたいだし。


 ……あ。

 もしかして大人になるまで生き延びる個体が、ほぼ居ないとかいうオチじゃなかろうな?

 【妖精】がどう生まれるのかも、どれくらいで大人になるのかも判らないけどさ。

 私達は最初からこの姿だしね。




「あぁ、ついでに桁外れの【妖精】への愛や忠誠心も宿していたそうだ」


「……それ、【魅了】されてませんか?」


「どうだろうな。読んだ限りだと、モニカに匹敵する程の有様だった様だが」


「うわぁ……」


「なにやら酷い言われようをしている気がするのですが」


 熱心に術の指南書を読んでいたモニカさんが、顔を上げて抗議めいた事を言ってきた。

 いや、でも正直このレベルの人が何人も居るっていうのは……

 うん、やっぱり色々と問題があるんじゃないかな。色々と。




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