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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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248/3658

248:お仕事に行こう。

「むう。嘘つき」


「サフィさんが起きないから、ちょっと試しに言ってみただけですよ」


 ソニアちゃんに持ち上げられたまま、むすっとして文句を言うサフィさん。

 起きたなら自分で立とうよ。

 身長差のせいで膝立ちみたいになってるじゃない。



「せっかく気持ち良く寝てたのに…… 鬼畜の所業」


「まぁ寝てたいなら寝てても、私は別に良いですよ?」


 いや、ここ私の部屋じゃないからソニアちゃんの許可が有ればだけども。


「なら遠慮なく」


「ただこれから役場に行きますから、付いて来てないのはジョージさんにバレるでしょうね」


「うぐっ……」


 あ、すごい嫌そうな顔になった。

 まぁそりゃそうだろうね。



「後でジョージさん達に襲撃されるのと、てきとーな嘘で起こされるの、どっちが良かったですかねー?」


 というか石碑の設置でどうせアリア様が自分で来るだろうし、どちらにしろバレて叩き起こされる気がする。

 しかもその場合はコレットさんも一緒だな。


「こっち……」


「でしょ? あ、ソニアちゃんありがとね」


「ん…… 立てます……? 離します、よー……」


「大丈夫、ありがとう」


 ちゃんと言ってから手を離すあたり、ソニアちゃんは優しいな。

 まぁ基準がサフィさんの同僚だから、大体の人は優しいって事になりそうだけど。



「あ、消えた」


「やっぱり、すごいなぁ……」


「居るのが解ってても、全然探知できないもんねぇ」


「うん…… あ、それじゃ、もう行く……?」


「そうだね。それじゃ穴掘りとスキルの練習、頑張ってね。魔力の残りにも気を付けて」


「うん、がんばる…… じゃーね……」


「お邪魔しましたー。ぴーちゃん、ラキ、行くよー」


「ぴっ」


 あるちゃんの横に座っていたぴーちゃんと、その頭に乗せておいたラキに声をかけてドアへ向かう。

 ありがとねーって事なのか、あるちゃんの顔にすりすりしてから飛んできたな。



 ソニアちゃんに手を振って表に出て、めーちゃんに行ってきますの挨拶をしてから役場へ向かう。

 そういえば、なんか樹液を採取するのに使う道具をエリちゃんが買って帰ったはずだけど、何もやってる様子が無かったな。

 とりあえず今日は用意だけしたって事かな。




 さて、数時間ぶりの役場だ。

 展示されたままのキャシーさんの横を通って、ライサさんの受付へ向かう。


 なんかぴーちゃんとラキがキャシーさんの方を気にしてるけど、何か言ってるんだろうか。

 まぁ勝手に治すわけにも行かないから、スルーせざるを得ないんだけど。



「お疲れ様です、白雪様。首尾はいかがでしたか?」


「どうもー。とりあえず、私から離れたら無害になるって事は判りました」


「なるほど…… それでは、屋外でも気軽に使えると言う事ですね」


「いや、人を即死させられる毒を気軽にって事はないでしょうけど……」


 そんなほいほい人を襲いはしないよ。

 反撃に使う時に気にしなくて良いって意味かもしれないけどさ。



「ま、それはさておき。裏庭の手入れに来ましたんで、二匹(ふたり)を預かってもらって良いですか?」


「はい、喜んで」


 うん、表情は微笑んだ程度の変化だけど、凄く喜んでそう。

 まぁいつもの事か。



「ぴー……」


「ん、ぴーちゃんは付いて来たいの? そっか、さっきはラキが一緒だったしね」


「残念です」


 目に見えてしょんぼりした顔になるライサさん。

 判りやすいなぁ。



 あ、ラキがぴーちゃんから飛び降りて机をぺちぺち叩いてる。


「んー、これは『こらー、私じゃ不満なのかー』って事ですかね」


「いえ、その様な畏れ多い事は決して……」


「ほらラキ、ライサさんが困っちゃうから怒らないの。それじゃ行ってくるから、迷惑かけちゃダメだよー?」


 解ってるもんとばかりに腰に手を当てて胸を張るラキ。

 よしよし、可愛がってもらっててね。


 でもライサさんは可愛がってばかりじゃないで、ちゃんと仕事もしてくださいね。




 手を振って受付から離れ、裏庭へ向かう。

 おー、一日来なかっただけでちょっと増えてるな。


 これ、やっぱちゃんと対策しないとキリが無いんじゃない?

 ずっと言い忘れてるけど。


 まぁそのつもりが有るなら、私なんかに言われなくてもすぐにやるか。

 単にこのままで気にならないから放ってあるんだろうし。

 いや気にならないっていうか、優先順位が低いだけだろうけど。



 ん、なんか草が揺れてる…… ってカトリーヌさんか。


「おーい、カトリーヌさーん」


「あら、白雪さん。お疲れさまです」


「お疲れさまー。お邪魔させてもらって良いかな?」


「もちろんですわ。では、私は道のあちら側を担当させていただきますわね」


「はーい。それじゃ私はこっちだね」


 うん、道で二つに分けられてると分担し易くて楽で良いな。



「さて、ぴーちゃんはどうする?」


「ぴゃー……」


 ……この顔は特に考えずについてきたな。

 うん、別に良いんだけどさ。



「それじゃその辺で見ててー」


「ぴっ!」


 いや、別に見張りをしててくれとかじゃないからね?

 そんな意気込まなくても。



「うーっす」


「あ、ジョージさん。どうもー」


「お疲れさん。どうだ、面白い連中だっただろ」


「そうですねぇ」


 うん、色んな意味でね。



「ぴー……」


「ぴーちゃんはどうしたんだ?」


「いや、ちょっとジェイさんに気に入られて……」


「ははっ。そりゃ気の毒に」


「ぴぃー!」


「すまんすまん。本人からすりゃ笑い事じゃねえよなぁ」


 でもぴーちゃん、捕まったのは半分は自分のせいだったよね。

 まぁ抗議したくなるのも解るけど。



「まぁ痛い事してくるわけじゃないですし、嫌われるよりは良いんじゃないですかね」


「あいつら、敵にはマジで容赦が無いからな。特に姫様の敵には」


「あー、そんな感じですねぇ」


「一回、あいつらの研究所で姫様に襲い掛かったバカが居たんだけどな」


「どうなりました?」


「まぁ言っといて何だが、聞かない方が良い事になったな」


「うん、そうだろうとは思いましたけど」


 相当エグい事されてそうだし。

 全部聞かされたら、私でも吐くんじゃないかな。



「とりあえず、まだ生きてはいるはずだけどな」


「あ、殺しまではしなかったんですね」


「まぁあれを生きてるって言うならだがな」


「……どうなってるんです?」


「生首にされて、色々な生物標本と一緒に資料棚に飾られてたぞ」


「いや、それ死んでないですか?」


「俺も良く解らんが、どうやったのか生きたままだったな。死ぬことも許されずに、今もずっと飾られ続けてる筈だ」


 ……うん、それだけで十分にエグいと思う。

 絶対に敵に回さない様にしよう。

 いや、私はそうなっても自爆出来るだろうけどさ。




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