247:起こしてあげよう。
「そういえば体を霧状に出来るみたいだけど、その状態で光を浴びるとどうなるの?」
あるちゃんのお腹に埋もれてのんびりしつつ、穴の横で【錬金術】を覚えるための訓練をしているソニアちゃんに、ふと気になった事を聞いてみる。
まぁ多分普通にダメなんだろうけど。
自分で聞いておいてなんだけど、大丈夫な理由も無い気がするし。
「ん……? あぁ…… 一言で言うと、ダメ、かな……」
「ダメなんだ」
「霧状になるって、たくさんの小っちゃい粒に、ばらけるって事でしょう……?」
「まぁ、多分そうだろうね」
「という事は、光を浴びる、面積が増えて……」
「あー…… なるほど」
大丈夫な理由どころか、ごく普通な感じのダメな理由が返ってきた。
「深夜に試してみたけど、霧にしたところが、すぐに蒸発しちゃったよ……」
「え、それ大丈夫なの?」
「左手無くなって、ちょっと痛かったけど、頑張って、魔法で治した……」
「ちょっとで済むんだ…… まぁ治せたなら良かった」
「うん…… 手、無いと撫でづらいし……」
そこなのか。
まぁ棺桶から出られなかった時は、えるちゃんとあるちゃんをもふもふする位しか、やる事も無かっただろうしなぁ。
まぁ私だったら、それだけでもこのゲームにログインする理由になるけど。
現実だと絶対無理だし。
ってそういえば、私が魔力結晶を作れる事って言っちゃマズいんだっけ……?
まぁソニアちゃんになら良いか。
【吸血鬼】もどっちかっていうとこっち側の種族だし。
まぁ一応、広めない様にお願いしておいた方が良いか。
広めようにもここに住んでると、他人に会う機会って殆どないだろうけど。
あ、別に掲示板とか現実側でとかならいくらでも話せるな。
「ソニアちゃん、さっき私、魔力を圧縮してたじゃない」
「ん……? うん」
「あれで作れる結晶、おっきいのだと凄い価値になるらしくてね」
「あ、出来るの、ないしょ……?」
おや、言う前に察してくれた。
「そうそう。売りに出すのも止めろって言われちゃってるんだ」
「そっか…… 大丈夫、人に、言わない」
「ありがと。まぁ【妖精】を捕まえてどうこうなんて普通は出来ないし、一応って感じだけどねぇ」
「世の中、何があるか、判らないから…… 用心、大事だよね……」
「だね…… ちょっとラキ、あんまりあるちゃんの上を走り回っちゃ駄目だよー」
猫の体の上で暴れちゃだめだよ。
っていうかあんまりちょろちょろ動いちゃうと、あるちゃんが反応しちゃうから。
今猫パンチでバッと動かれると、私が巻き添えで死んじゃうよ。
……おっと、このままじゃずっとのんびりしてしまいそうだ。
いや、別に絶対にダメって訳じゃないんだけど。
「よし、っと。ありがとね、あるちゃん」
魅惑のお腹から離れて、お礼を言う。
あるちゃんは口を閉じたまま、「ぬー」とちっちゃくお返事してくれた。
ラキ、こっちおいでー。
「もう、いいの……?」
「うん。いや、本当はいつまでもぬくぬくしていたいくらいだけど」
「あ、やること、あるんだね」
「役場の裏庭の草むしり、昨日は行かなかったからねー。お弁当代わりの魔力結晶、在庫が心許ないんだ」
「そっか…… それじゃ、その人、起こす……?」
「あ、お願いしていいかな」
私じゃゆする事も出来ないし、攻撃で起こすのも今は申し訳ないし。
いやサボってる相手ではあるけど。
「うん…… おきて、おきてー……」
「んにー……」
ソニアちゃんが近づいて肩をゆする。
なんだその猫っぽい声でのお返事は。
「おーい…… んー、ちょっと、ごめんね……」
おお、両脇に手を突っ込んで持ち上げた。
ってまだ起きないのか。
「おきてー…… むー、どうしよう……」
「んー…… あ、どうもジョージさん」
「ふあっ!?」
あ、反応するかなーって思って試しに名前出してみたら即座に起きた。
「あはは、嘘ですよ。おはようございます」
「おはよ……」
「えっ、あ…… 良かった……」
そんな怖がるならサボらなきゃ良いのになぁ……




