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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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240/3658

240:訓練を覗こう。

 片手でサフィさんの顔面をがっしり掴み、上に掲げる様に腕を伸ばしてぶら下げるジルさん。

 サフィさんはジタバタするのはやめたみたいだな。


 ……いや、やめたっていうかその元気も無くなったのか?

 四肢も尻尾もだらんと垂れ下がってるし。

 首の負担が酷い事になってそうだ。



「あ゛ぅぁー……」


「えっと、それくらいで許してあげてくれませんか? 流石にちょっと可哀想になってきたんで」


 うおぉぅ。

 ジルさんに声をかけたら、首から上だけがグリンってこっちに向いた。

 他の部位が微動だにしないから、なんかちょっとビクッてしちゃったよ。


 こちらを見てこくんと頷き、サフィさんの顔を掴んでいた手をパッと開くジルさん。

 持ち上げられてた状態で解放されたせいで、サフィさんが地面に落下してその勢いのまま崩れ落ちた。



「今度こそ死ぬかと…… ありがと……」


 ごろっと体の向きを変え、仰向けになってお礼を言ってくるサフィさん。


「まったくもう。反省してくださいね? あと、ちゃんとジルさんに謝りましょうね」


 ジルさんがふるふると首を振る。

 別に謝らせなくて良いですよって事かな?

 でもまぁ、一応ね。



「あい…… 本当の事言ってごめぁわぇっ!? がふっ」


 全く反省の色が見られなかったので、転がったままのサフィさんを【追放】で少し浮かせて、背中から落としてやった。

 一応頭を強打しない程度には受け身を取ってたけど、背中へのダメージは防げなかったらしい。

 おおぉ……って言いながら背中を押さえて、のけ反って悶えてるし。


「はい、やりなおし」


「うぅ、結構容赦無い……」



 ん、ジルさんがサフィさんに手を伸ばして……

 あ、さっきと同じ様に両脇に手を差し込んで持ちあげた。

 今度は前からだけど。


「むぅ…… ご、ごめんなさい……」


 無表情のままで下からじっと瞳を覗きこんで来るジルさんに気圧されて、謝罪を口にするサフィさん。

 それを聞いたジルさんはこくりと頷いてサフィさんを地面に下ろし、よくできましたと頭を撫でて消えた。



「酷い目に遭った……」


「いや、殆どが自業自得じゃないですか」


「むぅ」


 表情を見る限り、流石に解ってはいるみたいだな。


「とりあえず、案内は終わった。用事あったら、呼んで」


「はい。ありがとうございました」


 サフィさんが消えるのを見届けてから出発する。

 とりあえず、この後何やるか決めてないし一旦家に帰るとしよう。




 ラキを乗せたぴーちゃんと一緒に、急ぐでも無くふよふよと飛んで行く。

 そういえばカトリーヌさんはまだ工房に居るのかな?

 まぁ別に保護者とかでもないし、わざわざ確認しに行く必要は無いか。

 ずっと一緒に動かなきゃいけない理由もないし。


 ん? なんかこの柵、見覚えがあるな。

 んーと…… あぁ、ここは訓練場の裏なのか。

 午後の半端な時刻だけど、何人か中に居るみたいだ。


 あー、まぁこっちの時刻だとそんな感じでも現実側は日曜の深夜前だもんな。

 パーティーが揃わない人も居るか。

 いや、別にそういう事情でなのかは知らないけどさ。



 ちょっと柵の上から覗いてみよう。

 おー、木刀で試合とかやってる。

 ガンガンぶつけ合ってるけど、こっちには音が聞こえてこないな。


 これも結界の効果かな?

 まぁ夜中に大きな音で訓練されたら迷惑だろうし、防音機能も有った方が良いもんね。


 お、あっちは片手剣と徒手格闘か。

 腕につけてるのはなんだあれ。

 手の甲側が滑らかな丸みを帯びた平面になってて、細長い盾みたいになった籠手かな?


 盾は指をまっすぐ伸ばした辺りまで伸びてるけど、手首に帯で留めてあるからその先は自由に動かせるっぽい。

 武器や相手を掴むためか。



 って素手の人、なんか見覚えがあるなぁ。誰だっけ。

 ……あー、そうだそうだ。

 最初に魔法を撃ってもらう会をやった時に来てた、【空間魔法】使いのおじさんだ。


 足技で戦う人なのかなーって思ってたら、本当に格闘家だったんだな。

 でも靴は普通……かと思ったらそうでもなかった。


 少し離れた所に、手荷物と一緒に金属製のブーツみたいなのが揃えて置いてある。

 訓練用に履き替えてるだけっぽいな。



 【跳躍】で背後に回って相手を蹴り飛ばした所で、塀の上のこちらに気づいたらしく目が合った。

 目が合ったって言っても、向こうからは小さすぎて向いてる方向くらいしか解らないだろうけど。


 やあって感じで手を上げたので、こっちも右腕をまっすぐ上げて挨拶する。

 この距離じゃこのくらいオーバーに動かないと見えないだろうし。


 あ、ヤバ。

 他の人も気付いて手を止めたりしてる。

 訓練の邪魔になっちゃ悪いし、おじさんに手を振って塀から離れよう。

 ばいばーいっと。




 北上して東通りを横断し、道行く人に笑顔で手を振りながら家に向かう。

 うん、たまにいつもとは違う視線を感じる。

 多分役場でキャシーさんを見たプレイヤーだろうな。


 まぁいいか。別に怖がってるとか嫌がってる様な視線ではないし。

 へーマジかーって程度のノリっぽい。

 どっちかっていうと、面白がってる感じだな。



「お帰りなさいませ、白雪様。ご無事で何よりです」


 妖精庭園に着くと、入ってすぐにモニカさんが待ち構えていた。

 【魔力感知】で近づいてくるのを察知して、待機してたのかな。

 ちゃんと仕事を優先しようよ。


「良い人たちでしたよ? 確かにちょっとぶっ飛んではいましたけど」


「酷い目に遭った」


「ああ、サフィはどうでも良いです。どうせ自分が蒔いた種でしょうから」


「ひどい扱い」


「あー、まぁそう言われても仕方ないと思いますよ……」


 実際そうだったし。



「まぁ無事に帰ってきましたって訳で、引き続きお仕事頑張ってください」


 モニカさんの顔に近づいて、ふーっと【妖精吐息】をかけて労っておく。


「あ、そういえばカトリーヌさんは帰って来てますか?」


「カトリーヌ様ですか? いえ、まだお戻りになってはいません」


「そうですか。それじゃ、失礼します」


「はい。白雪様に褒美を頂いた今、私の前に敵は居ません」


 いや、何と戦う気だよ。大人しく庭園の手入れをしていなさい。




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