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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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216/3658

216:首につけよう。

 あぁ、カトリーヌさんが吸い寄せられていく……

 これが飛んで火にいる夏の虫って奴か。

 いや【妖精】は虫じゃないし夏でも無いけどさ。


「白雪さん、少し手を貸して頂いてもよろしいですか?」


「えぇー……」


 まぁ確かに、誰かが外から何かするタイプの器具とか、自分じゃ付けられない物も多そうだけどさ。

 正直な所あんまり触りたい道具じゃないよね。



「ぴ、ぴぴっ」


「いや、ぴーちゃんじゃ持てないから無理でしょ」


「ぴぃ……」


 私が嫌がってるのを見てぴーちゃんが引き受けようとしてくれたけど、羽じゃ扱えそうにない物が殆どなんだよね。

 石の板を持つくらいなら、挟めば行けるだろうけどさ。


 私がツッコむとしょんぼりとした顔で自分の羽の先を見る。

 うん、仕方ない仕方ない。ぴーちゃんは何も悪くないよ。



「うー、少しだけだよ?」


 肩の上のラキを摘まみ上げて机に下ろし、カトリーヌさんに近づいて行く。


「ありがとうございます。では、早速これを」


「やだ」


 薄くて目の細かい布の袋に砂鉄か何かを詰め込んで、閉じた口に木製の柄を付けた鈍器を差し出してきたので、即座に断っておいた。

 これ、ブラックジャックとか言う奴だっけ?

 確かに手伝うとは言ったけど、直接攻撃させようとするんじゃないよ。



「むぅ、ではこれを」


「いや、別にあれが気に入らないんじゃないよ。殴らせようとしないでって言ってんの」


 今度は金属の板を厚手の布を重ねた物で挟んで、縫い合わせて取っ手を付けた様な物を差し出してきた。

 良く知らないけど多分ひっぱたく道具でしょ?



「それでは…… これをお願いできますか?」


「はいはい。いやこれ、別に自分でつけられるじゃない」


 次は金属製の首輪を差し出してきた。

 少しやりづらいかもしれないけど、普通に一人で装着できる物じゃないか。


「ご主人様に付けて頂く事に意義があるのですわ」


「いや、私ご主人様じゃないし」


 異議は認めない。

 「えっ?」みたいな顔してもダメ。



「まぁ付けるくらいなら良いけどさ。ほら、貸して」


 カトリーヌさんの手の上に乗ってる首輪を掴んで、カチャッと開く。


「ぴっ」


 いつの間にか近くに来ていたぴーちゃんが羽でカトリーヌさんを後ろに向かせ、肩を上から押さえる。

 あ、膝の裏にラキがタックルして脚を曲げさせた。

 タイミングを合わせてぴーちゃんがグッと押し下げて、膝をつかせる。

 

 ……うん、脚でラキが挟まれちゃったけどまぁ無事だろう。

 ぴーちゃんがカトリーヌさんの正面に回って、さぁどうぞって顔でこっち見てる。



「あー、うん、ありがとね」


 付けやすくなったのは確かなので、お礼を言いながらカトリーヌさんの首に首輪をはめる。

 多分何もしなくても同じ体勢になってたと思うけどね。


「はい、これも」


「あー、はい」


 フェルミさんが横から、接続用の金具が付いた鎖のリードをスッと差し出してきた。

 断っても仕方ないので、受け取ってカチッと繋げる。



「ふぅ、これで動きやすくなりましたわ」


「いや、そんな訳無いでしょ。あ、ぴーちゃんありがと」


「ぴゃっ」


 動かないままで意味の解らない事を言い出したカトリーヌさんに突っ込んだら、ぴーちゃんが羽でぺしっと頭をはたいてくれた。



「はい、もう付け終わったんだから立って。そろそろラキも息苦しいかもだし」


「ぅぐっ……」


 カトリーヌさんの首に繋がった鎖をグイッと上に引っ張り、無理矢理立たせる。

 あ、膝の裏に居たラキがボトって落ちた。

 大丈夫かな? あ、大丈夫だな。

 カトリーヌさんの踵の辺りをペチペチ叩いてるけど、それ逆恨みだからね?



「けほっ」


 立ったおかげで首を引っ張る力が緩んで、まともに呼吸できるようになったので息を整えるカトリーヌさん。


「あ」


 少しふらついた拍子にカトリーヌさんの足がラキの上にむぎゅっと。

 うーん、無事かな?



「あぁっ、申し訳ございません、ラキ様!」


 カトリーヌさんが足を上げると同時に、反対側の足に走って行ってべちべち叩くラキ。

 無傷だけどご立腹だな。

 ちゃんと加減して叩いてるから、本気で怒ってはないだろうけど。


「ラキもそうなる可能性があるんだから、ちゃんと足下からは離れとかなきゃね。ほらほら、もういいでしょ?」


 むーって顔のラキを摘まみ上げて、少し離れた所に下ろす。

 また踏まれてもいけないしね。



「では続いてこれらもお願いできますか?」


「あー、まぁ良いけどさ。こっちが腕?」


「はい。そちらに鎖もありますので」


「はいはい、繋げって事ね」


 小さな棚に並べられた薄く短い筒の様な物を四つ持ってきたので、確認してカチャカチャはめていく。

 ぴーちゃん、私がはめやすい様にやってくれてるのは判るんだけどさ。

 羽で挟んでぐるんぐるんカトリーヌさんの全身を回して、逆さにしたりするのはやめてあげようね。




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