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VRMMOで妖精さん  作者: しぇる


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215/3658

215:確認に行こう。

「あ、それと今日は蜜ありませんので」


「そんなっ!?」


 しょんぼり顔でもそもそと巫女服をしまう兎さんに追い打ちをかける。


「在庫が切れてるのと、この後用事があるから時間もあんまり無いんですよ」


「それに関しては、私だけで行けば済む話ではありますけどね」


「いや、せっかくだから私も顔出して練習したいし」


 全然スキルが取れる気配は無いけど、普通にやってるだけでも結構楽しいしね。

 今度現実でもちょっとやってみようかな?


 ……いや、やめとこう。

 試しにいくつか作ってから、そのまま道具をしまって忘れちゃいそうだ。

 何度か前科あるし。



「まぁ仕方ないか。いつも有る訳じゃないって、こないだも言ってたしね。おーい、今日は無しだってさー。解散解散ー」


 なんか結局兎さんが中継しちゃった。

 いや、別に何も問題は無いんだけどさ。




「さて、そんじゃ私達も行くとしますかー。おばちゃん、またねー」


「はいよ、いつでもおいで」


 エリちゃんの言葉に合わせて皆で手を振り、飛び上がって屋台から離れる。

 後頭部にシルクをひっつけたエリちゃんに合わせて飛び、南東区に入る路地に向かおう。

 おっと、路地の手前でエリちゃんが立ち止まって、こちらに振り返ったぞ。



「私はめーちゃんのお使いがあるからここまでだねー」


「そだね。そういえば何を頼まれたの?」


 カトリーヌさんも居た時に頼んでたんだし、別に聞かれて困る物ではないだろう。


「んー、パイプとバケツ的な容器をいくつか、かな。樹液集めるのを試してみるんだってさー」


「そっか、それじゃよろしくね。あ、他にも必要だと思う物があれば遠慮なく買っちゃって良いから。足りなかったら言ってね」


「解ったー。けどとりあえずは大丈夫かなー。それじゃ、また後でねー」


「うん。あ、シルクも一緒に戻る? そかそか」


 エリちゃんに引っ付いたまま連れて帰ってもらう事にしたらしい。

 おしごとの途中で呼び出しちゃったんだろうし、そうなるか。



「うへへへー、シルクちゃん仲良くかえろーねぁ痛っ。うぅ、地味に威力が上がってる」


「なにやってんのさ……」


 またしてもシルクのお尻をぷにぷにしようとして、今度は触る前から蹴られてる。

 相変わらず懲りないなぁ。




 エリちゃんと別れて路地を進み、フェルミさんの工房へ。

 ラキとぴーちゃんはどうしよっか? まぁ多分入っても大丈夫だろう。


「お邪魔しまーす」


「いらっしゃい。あら、新しい子かしら? よろしく」


「ぴぴぃ」


 机にとまって体の前で羽を合わせ、ぺこりお辞儀するぴーちゃん。

 ラキは私の肩の上で手を振ってご挨拶。

 そういえばフェルミさんは【視覚強化】持ってるから、ラキもきっちり見えるんだろうな。

 だからどうしたって事も無いけど。



「カトリーヌさん、早速で悪いのだけれど、ここに寝てみてもらえるかしら?」


「はい。このあたりで良いですか?」


「そうね。布団はまだ届いていないから固いと思うけど、我慢して頂戴ね」


 おぉ、天蓋付きの豪華な感じのベッドが出来てる。

 専門外って言ってたけど細かい装飾も入ってて綺麗だなぁ。


 ……横に謎のハンドルが付いて無ければだけど。

 あー、うん、天井を支える四本の柱にらせん状の溝があるな。

 ハンドルを回したら連動して柱も回って、天井がゆっくりと降りていく仕掛けっぽい。


 途中に引っかかる所も無ければ溝も根元まであるから、これ回し続けたら上下がピッタリ引っ付いちゃうんだろうな……



「では、どうぞ」


「ええ。……どうかしら?」


 小さなハンドルを摘まんで、くるくると回しながら確認するフェルミさん。

 油とか塗ってる訳でも無いのに、滑らかに動くもんだなぁ。



「あぁ、とても良いですわぁ…… フェルミさん、ギリギリまで下ろしてみて頂いてよろしいですか?」


「解ったわ。このくらいかしら…… あらあら、少し下げ過ぎてしまったみたいね?」


 ……隙間に入ってるのが私だったら、まだセーフだったろうな。

 まぁ少し苦しそうだけど、折れたり潰れたりはしてないみたいだから大丈夫だろう。


 っていうかなんで少し嬉しそうに言ってるのフェルミさん。

 ……なんで今少しだけクイッとハンドル回したの。

 あ、カトリーヌさんが嬉しそうなのは別になんでとか思わないんで、今更どうでもいいです。



「あら、私ったら…… ごめんなさいね、カトリーヌさん。怪我はないかしら?」


 きゅるきゅるとハンドルを戻しながら隙間を覗きこみ、謝罪するフェルミさん。


「こほっ…… だ、大丈夫ですわ。天井の触り心地なども素晴らしく、大変良い品かと」


 ベッドの出来栄えに「天井の触り心地」って評価項目はあんまり無いと思うな。

 別に良いけどさ。



「ではこのままで加工を進めるとしましょうか」


「はい、お願いします」


 今でもかなり綺麗だと思うんだけど、プロから見れば色々足りないところが有るんだろうな。

 布団とかを置くとまた見栄えが変わってくるかもしれないし。




「ところでカトリーヌさん、興が乗って色々と作ってみたのだけれど、どうかしら?」


 フェルミさんがカトリーヌさんに声をかけながら、棚から横の一面が上にスライドして開くタイプの木箱を持ってきて、私達の居る机にトンと置いた。

 うーん、なんか嫌な予感がする。何が出てくるんだろう……



「うぇぇー……」


「おや、これはこれは。少し試させて頂いても?」


「ええ、そうしてくれると嬉しいわ」


 木箱の壁面をフェルミさんがスッと引き上げると、中にはよく解らない器具がズラッと並んでいた。

 うん、よく解らないけど、何個かはパッと見でカトリーヌさんが喜びそうってのは判るし、他もロクな物では無いんだろう。


 パッと判る物を具体的に言うと、上側の尖った木馬とかジグザグの台と平たい石とか。

 これは嫌そうな声を出しちゃっても許されると思うんだ。


 ……実はカトリーヌさんに一番会わせちゃいけない人だったんじゃない?



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