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ピンクのゾウさん浮かべば次の日パンダ。

 イブの夜というのに、バイト先でもらったおにぎり弁当で済ませた飯。彼女はいないボッチの俺。ボロアパートの天井にはごくありふれた、四角い電気の傘があるはず。


 四畳半の部屋だ。畳の和室、布団を敷いて寝たはず。


 (うえ)には、透明ピンクのゾウさんがぼうう、光って浮かんでいる。ぱたたぱたた、羽ばたく様に耳を動かし浮いているが胴体は無い。頭部だけ。


 動物園で見るそれは、空は青、地平線伸びる大地を思い出している様な望郷の色した黒珠なのだが、目の前の目玉はランランと黄色に光り、目からビーム!を発射しそうだ。


 ああ……、なんであんなもんが見えるんだろう。子供の時からよくある。風邪を引いたり体調不良の時に、こういったモノを目にするんだ。


 それはゾウであったり、インコであったり。ついでに手足が大きくなったりしている。


 負の感情に襲われる。熱でもあるのか。ビームを浴びれば明日は厄日確定だ。俺はそろりと目を閉じ寝ようと試みる。


 瞼の裏に出てくるのは、飛び出し坊や。


 ご近所の角に、新しい飛び出し坊やが設置されている。なぜかこの坊や、恐い。他のも有るのだがこの坊やだけ恐い。良からぬ妄想が暴走する。


 キャハ!キャハ、キャハ!笑いながら坊やがゴゴ、ゴゴ

 ゴゴ!とアスファルトをゴリゴリ削って、動くんだな。


 そうして、追いかけるんだ。フフ。


 怖!ゾウに呪いをかけられたのか!


 目をそろっと開けたら、くにゃんと景色が歪む。天地が一瞬判らなくなる。落ち着け、上は天井で下は布団だ。草原で寝転んでいる様な気がするのは、夢だ、寝ぼけてるに違いない。そう自分に言い聞かせる。


 時々違う空間にいる感覚に襲われる。そこは過去でもあり現在でもあり、そして全く知らない世界でもある。感じるのは湿度。空気中に含まれる水の粒子が大きくなり、存在をアピールしたらどうなるか。


 雨の日は、ポヨヨンポヨヨンと、デカイ水球が部屋いっぱいに浮かんでる。生命は母なる海から誕生したという。魚人間となった俺は、水球の中にニュルリと入り込むんだ。そうしてフィルター越しの世界を見る。


 プールの中から上を見上げる様に。人魚姫の世界を見る。揺らめく蒼と光の世界。


 目を閉じてる内に、ゾウの目からビームを浴びたのやもしれない。妄想がひたすら走る。


 その夜は悶々と過ぎて行った。


 こうなるとしばらく続く。


 翌日の夜は、黒い部分が紫のパンダが浮かんでいた。


 パンダかよ!ニマにま笑う奴は、俺をワンダーランドへと誘う。

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― 新着の感想 ―
[一言] 連夜の悪夢ですか。 退屈はしなそうですが。
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