見た目で損してる
そういえば不思議に思っていたのだ。
異世界であるのに、日本語が通じているという事実に。
ただ、そんなもんなんだな、としか認識してなかったんだけど……。
「やっぱり、俺の言葉って何言ってるか分からない?」
「翻訳魔法を介さなければ。文字通り意味不明な言語に聞こえます」
「翻訳魔法というのは自動なんですか?」
「対象指定さえすれば、その対象と話す時は自動ですね」
「凄いんですねぇ」
いくら魔法と言えど、異世界の言語を翻訳出来るのは普通に凄いと思う。
精度にもよるだろうけど、今のところビオラさんと俺には会話での齟齬とか産まれていないわけで。
となると、少なくとも俺の知る現代の知識で作られた翻訳機とかよりも高性能なんじゃないかな。
「異世界言語を翻訳出来る精霊と契約できるのは、私のアピールポイントでもありましたから」
「精霊?」
「です。魔法というのは、その魔法を司る精霊と契約、あるいは従える事で発動させることが出来ます」
「ふむふむ」
「それらを行うには、生まれ持った才能やセンスが必要となりまして」
「誰にでも出来るものではない、と」
「その通りです。なので、翻訳魔法の大精霊と契約出来る私はエリートという事になります」
こう、眼鏡をかけてたらスチャッと眼鏡をあげる動作をしてそうなビオラさん。
にしても、翻訳魔法の大精霊とやら、どこで異世界言語なんて学んだんだろうか?
しかも言語的には難易度が高いはずの日本語。
いやまぁ、精霊なので、とか言われたらそれまでなんだけれども。
「では御厨さま足元にお気を付けくださいませ」
客室の扉が開き、そのまま到着した駅のホームまで促され。
降り立ったホームは……葉っぱかな?
緑色はしてるんだけど、普通に地面位の固さと安心感がある。
これが世界樹の枝の先の葉っぱとはにわかに信じられないな。
……というか、某ゲームだと貴重な回復アイテムの世界樹の葉に乗ってることが、凄く悪い事のような錯覚を覚える……。
「それでは、ご案内させていただきます」
「お願いしま――」
言いかけて、最初に異世界に辿り着き、先頭車両に案内された時のように。
全ての視界が、色のついた線になり。
「到着です」
気が付けば、朝食をとるお店に到着。
感覚的にだけど、瞬間移動の類なのかな。
分かんないけども。
「ここがお店?」
「はい。人気店でございます」
そうして案内されたお店とやらは、こう……何というか。
コテージとかロッジと呼ばれた方が合うような、木で出来た建物。
というか、小屋。
そんな場所。
「いらっしゃいませ」
「『天葉』のお客様です」
「奥のお席へどうぞ」
なお、小屋の中はお洒落なカフェテリアなもよう。
しかも明らかに小屋の見た目に対して中の広さが釣り合ってない。
どう考えても中が広過ぎである。
「こちらです」
そして通された席は、店内の一番奥の個室。
しかも、大きな窓が付いている席であり、そこから外の景色を一望できる。
というか、このカフェ? 小屋? 世界樹の葉の端というか、結構外側に建てられているらしく。
遮るものが何もない展望だったり。
今この瞬間程、高所恐怖症じゃなくて良かったと思った日は無いな。
高所恐怖症だったらエルフの旅の半分くらいは楽しめてない気がする。
「メニューはこちらです」
「アサイーボウルが有名なんですよね?」
と言いつつ渡されたメニュー表を確認。
えーっと、なになに?
「…………ビオラさん」
「何でしょう?」
「このヒルイ―ボウルというのは?」
「アサイーボウルの果物が肉類に置き換えられたものですね」
「ではこのヨルイーボウルというのは?」
「ヒルイ―ボウルにこの店独自のソースが付き、追加でワインがセットになります」
……いや、アサイーボウルってのはアサイーって果実の事であって、決して朝に良いみたいな意味では……。
――ハッ!? これもしかして翻訳魔法が関係しているのでは?
とすると結構翻訳魔法がポンコツ説が出てくるんだけど……。
そんな脆弱性で大丈夫か?
「普通にアサイーボウルで」
「盛り付ける果実類をお選びください」
「あ、選べるんだ」
「エルフそれぞれ好みがありますので」
それは嬉しいかもしれない。
というわけで、どの果実にしようかなぁ…………。
「ビオラさん」
「はい」
「この『スコブコの実』ってのはどんな味なんです?」
「ねっとりとした食感と爽やかな甘み、そしてほのかに酸味があります」
……こう、異世界だから当然なんだけどさ。
俺がよく知る果物の欠片も存在してないね。
今ビオラさんに聞いたスコブコの実ってのも、言っちゃ悪いかもしれないが全然果物に見えない。
というか、どう見ても牡蠣に見える。
で、味を教えて貰ったけど、見た目のせいで全然味が想像出来ないんだよね。
「ビオラさんのおススメカスタムでお願いします」
「かしこまりました。シリアルは付けますか?」
「シリアルは欲しいです」
「かしこまりました」
という事で、注文の全てをビオラさんに任せ、俺は視線を窓の外へ。
「飲み物は何がよろしいでしょうか?」
「フルーツジュースで」
さてさて、一体どんなモノが運ばれてくるのやら……。




