?「退屈ですわ」
「もう間もなく到着です」
「あ、もうそんな時間?」
ボーっと景色を眺めていたら、ビオラさんから声をかけられた。
いやぁ、異世界の風景ってマジで飽きないんだよ。
……と言っても、俺は船での移動でも外の景色を無限に見てられる人種だから参考にはならんかもだけど。
外の景色が見れる展望露天風呂とかが備え付けられた船とか、マジで一日船に居かけたこともあった。
流石にお腹が空いたから風呂から上がって食事をとったけれども。
「特スイートクラスの御厨さまは、誰よりも先に下車するか、誰よりも後に下車するかを選べますが?」
「先に降りたいかな」
「かしこまりました」
降りるタイミングが選べるのはいいね。
もう少し車内でゆっくりしたい時とかもあるだろうし。
「そういえば、景色を見ていて思ったんだけど」
「なんでしょうか?」
「ああやって空飛んでるのって、ワイバーンとかドラゴンだよね?」
「ワイバーンでございますね」
「襲ってきたりしないの?」
それは、景色を眺めていた時に感じた疑問。
俺が見ていた時は近寄ってくるような事は無かったけど、もしかしたら襲ってくるんじゃ? と思ったことも事実。
なのでそんな事を聞いてみたら……。
「稀にですが襲ってくる事はございます」
「あるんだ」
「ただ、こちらの列車を含め、あらゆる移動手段には必ず『ガードナー』という存在が乗り合わせております」
「ガードナー?」
「文字通り、襲って来た魔物から乗客や乗り物を守る、いわば用心棒のような存在です」
「ふむふむ」
「こちらの列車には、おおよそ常識の枠組みから外れた実力者のガードナーが同行しておりますので、万が一にも魔物に襲われるようなことはありません」
「強いんです?」
「強い、という表現が適切かも分かりませんが、おおよそ戦闘と呼べるような代物ではございませんね」
なんか、話聞くと怖さがあるんだけれど……。
でもでも、やっぱり俺としても男の子ですし?
強い存在と言うのは興味があるわけで。
どんな戦いをするのか知りたいよね。
「具体的に聞ける?」
「……まず、魔物がこちらの列車に敵意を向けた瞬間に、瞬間転移の魔法で深海へ飛ばされます」
「……問答無用が過ぎる」
多分だけど、水圧でぺちゃんこになるよね。
いきなりそんな場所に飛ばされたら。
「ただ、極稀にそれでも戻ってくる魔物が存在しますので」
「居るんだ……」
深海の水圧に耐える魔物がいるってマジ?
オオグソクムシとかそんな感じの魔物?
「その場合は、彼女だけが使える魔法で無力化するそうです」
「どんな魔法か聞いても?」
「詳しい原理は不明ですが、何でも、対象の体内を一瞬で沸騰させる魔法だとか」
「殺意しかねぇ」
「表面が鱗や皮膚で守られていても、体内はそうでない場合が多いので、大層有効との事です」
「そんな方がこの列車に乗り合わせているんですね」
「そうですね」
異世界での旅行、結構安全面はしっかりしているっぽい。
少なくとも、この列車が魔物に襲われるという事は無さそうだ。
「そもそも、彼女はこの列車だけでなくエルフの住む町……ひいては世界樹全域に結界を展開しておりまして」
「?」
「その結界のおかげで、魔物の攻撃はほとんど私達に届きません」
「世界樹全域に……?」
あの、ぱっと見じゃ壁にしか思えない幹をしていたトンデモな大きさの世界樹に?
結界を張ってる?
もしかして、この世界の結界って魔力を使わないとかなのかな?
なんかこう、儀式的な何かで張れるような代物だったり?
「彼女一人で結界士数百人と同じ規模の結界を張れるという事で、どこの町からも引っ張りだこです」
あ、これ多分違うな。
マジで今回のガードナーとやらが規格外なだけだ。
こっわ、戸締りしとこ。
「では、御厨さま。到着しましたのでご案内させていただきます」
「え? あ、はい」
言われて気が付く。
外の景色の流れが止まっている事に。
……いつ止まったんだ?
動き出しの時はその感覚があったのに、今止まった時の感覚が無かったぞ?
「基本的に朝食後、繫華街に移動してからは御厨さまの自由行動となります。もちろん、私は同行させていただきますが」
「はぐれたら大変ですもんね」
「……まぁ、それもあるのですが」
「他に何か?」
「大変失礼ですが、御厨さまは異世界人というのが一目でわかります。ですので、何かを買う時にそれはもう吹っ掛けられるかと」
「あぁ……なるほど」
あったあった。
両親に連れられて外国に行った時、安いから買って行ってくれと言われて渡されたアクセサリー。
値段聞いてびっくり。
とても買えないからと返そうとしたら、受け取ったんだから金払えって言われてさ。
あんまりだと思いつつ財布を出そうとしたら、怖い位に笑顔の両親が俺の前に立ってさ。
現地の言葉で二人ですんごい剣幕で喋り出して……。
結果、支払う値段が十分の一になったんだよね。
流石に九百%ONは驚いたな。
なお、その後両親から警戒心が無いと怒られた模様。
いや、そんななるなんて知らんかったし。
「それと」
「それと?」
「私が近くに居ませんと、翻訳魔法も働きませんから」
「……翻訳魔法?」




