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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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5/30

朝、列車内、日の出にて

 ゆっくりと進みだす景色。

 と同時に、身体全体を押されているような感覚に襲われる。

 それはつまり、俺の乗った列車『天葉』が出発したという事。


「どれどれ」


 先ほど確認した窓の外――世界樹の外皮とは反対側の窓、先程まではホームが見渡せた方へと寄ってみると……。


「そもそもさっきの駅が結構高い所に存在するんだな……」


 見えたのは、地上の小さくなった建物たち、遠くにそびえる山々に、空にはぽつりぽつりと小さな影たち。

 そして――、


「……綺麗」


 山々から覗く、たった今顔を出したばかりの朝日。

 よかった。異世界だから太陽は二つあります、とか、太陽の形が四角形、とかじゃなくて。


「はぁ……コーヒーが美味い」


 そんな景色を見ながら傾ける、ホワイトコーヒーが美味いんですわ。

 もうすっかり慣れちゃったよ、ホワイトコーヒー。

 あ、ちなみに、乗車カードと俺のクレジットカード(親から渡された旅専用)の紐づけもバッチリ。

 そもそも日本円が使えないらしいからね。この異世界。

 というわけで、一度『天葉』の乗車カードを経由することで、異世界マネーと日本円の換金を自動で行ってくれるらしい。

 手数料は無し。

 ありがたい限りで。


「御厨さま」

「……なんでしょう?」


 びっくりした。

 音を立てずに姿を現さないで欲しい。

 危うく持ってるカップを落とすところだったじゃないか。

 高級旅館の従業員さんとかわざと足音を立てるとか言ってたぞ?

 建物の曲がり角とかで、向こうから歩いてくるお客様に自分の存在を知らせるために。

 なのでビオラさんも出来れば姿を現す時に何か効果音を……。


「朝食の時にご案内するお店の希望をお聞かせください」

「ん~……」


 朝食、と言われてもなぁ。

 ぶっちゃけさっきのウェルカムピザで結構空腹は満たされてるんだよなぁ。

 

「ビオラさん的におススメは?」

「私的に……ですか」


 だったら、現地をよく知る人の……エルフのおススメが丸いかなぁって。


「そうですね……。御厨さまに合わせた和食のお店などはいかがでしょう?」

「和食あるんだ」

「ございますね」

「エルフの街なのに?」

「はい」

「ちなみに人気メニューとかは?」

「……和風パフェとかですかね」


 なぜにスイーツ。

 しかも絶対に……とは言えないけど、和食の店には置いて無いと思うんだけど。

 パフェって。

 せめてみつまめとか、ぜんざいとかじゃないかな?


「洋食がよろしければそちらのお店ももちろんございます」

「例えば?」

「タマゴサンドやパンケーキにスクランブルエッグとベーコンなどのメニューが有名ですね」

「そこ良さそう。人気メニューは?」

「ハニートーストにバニラアイスとローストナッツソースをかけた物ですね」

「また甘いのが人気なんですか……」


 いやまぁ、こっちは洋食っちゃ洋食だけどさ。

 そんな甘い物人気なのか。


「他のお店とかは?」

「後は……そうですね、エルフ食もございますよ」


 和食洋食と来て中華かと思ったらエルフ食か。

 普段エルフがどんなもの食べてるのか気にはなるな。

 旅行先で現地の人が普段食べてるものとか、結構新しい出会いが多い印象あるし。


「そちらですと主にアサイーボウルが提供されますね」


 うわぁ……エルフっぽい。

 なんかこう、勝手なイメージ、エルフってアサイーボウル食べて優雅に紅茶とか飲んでるイメージある。

 

「そこの人気メニューはやっぱりアサイーボウルです?」

「いえ、タピオカドリンクが人気ですね」


 あるんだ。

 異世界にタピオカドリンク。

 あと、せめて俺に勧めるなら看板商品であってくれよ。

 いや、朝食っぽいセレクトなのは大変助かるけれども。

 それらが看板メニューじゃないと知った時のこう……ガッカリ感があるんだよ。


「ちなみにタピオカドリンクはミルクティーが一番人気?」

「一番人気ですとイチゴミルクか……黒糖オレかと思われます」

 

 う~ん……ことごとく予想を外してくる。

 流石エルフ、一筋縄じゃいかないって事か。


「まぁ、とりあえずアサイーボウルのお店で」

「かしこまりました」


 なお、俺の選んだのはエルフ食のお店なもよう。

 お腹の空き具合的にも、アサイーボウルなら入りそうだし。

 和食や洋食をガッツリ食べる気にはならなかったな。

 ……お腹の中のウェルカムピザが邪魔してさ。


「もうしばらくすると到着です。それまでゆっくりとお寛ぎください」


 そう言って一礼し、客室から出ていくビオラさん。

 ……登場は転移魔法なのに、出ていくときは扉から出ていくんだよなぁ……。

 ま、いいか。


「にしても、マジで広いな」


 改めて部屋を見渡す。

 一人暮らしの俺の家のリビングよりも広い。

 卓球位ならギリ出来そうな広さ。

 しないけど。

 まぁ、そんな広さだからって特にする事も無く、窓の近くの椅子に座って景色を眺めるだけなんですけどね。

 けど、これが結構面白いのよ。

 眼下に広がる町? 村? には、日本みたいな高層ビルとかは建っていない。

 だからこそ、豆粒以下の小ささではあるが、人であろう動いてる点くらいは確認出来るし。

 あと、空をに浮かんでる影みたいなやつ。

 目を凝らしてみたら、ドラゴンと言うか、ワイバーンと言うか、空飛ぶトカゲみたいな存在だった。

 普段は絶対に見る事が出来ないそれらを見るのは、存外に面白いもので。

 気が付けば、次の町に着くまで、俺はずっと外の景色を眺めていたのだった。

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