何だかんだ日本はクオリティ高い
はぁ……。
いい湯でした。
人生で最長の長風呂だったかもしれない。
しっかり身体を拭いて、髪を乾かし――あれ? ドライヤー……どこ?
「ビオラさん、ドライヤーってあります?」
(周辺に緑色の木のチップがありませんか?)
……こいつ、直接脳内に!?
木のチップね……これか?
チップって言うから燻製に使うようなものかと思っていたら、SDカードみたいなやつだった。
「ありますけど」
(それを手に乗せて叩いてみてください)
こう? と、言われた通りに手に乗せて、ポンと叩いてみたら、
「え? 風が出てきた」
木のチップから風が出てきた。
しかも結構強い。
普通にドライヤーレベル。
――さらに言うと温風。
「魔法の力ってスゲー」
そのチップをドライヤーのように使って髪を乾かし。
……これ、使い終わったチップはどうするんだろう?
風は出続けてるし、テーブルに置いたら出続ける風でチップは宙に浮くし。
「使い終わった後は?」
(チップを折ってください)
ははぁ、なるほど。
このチップ、使い捨てなのね。
いいじゃん、これ。
ドライヤーだとかさばるけど、このチップだったら全然かさばらないし。
値段によるけど普通に欲しいかもしれん。売ってないんかな?
「さぁて、お風呂上りにはフルーツ牛乳……」
で、温泉に備え付けてあったフルーツ牛乳を腰に手を当ててグビリ。
ちなみにだけど、ちゃんと牛乳もコーヒー牛乳も置いてあったよ?
その中から俺はフルーツ牛乳を選んだってだけ。
「ぷはぁ。やっぱこれだねぇ」
程よい酸味とフルーツの香り、風呂上りにサッパリと出来ますわ。
「うし。じゃあ焼肉に行きますか」
という事でしっかり洋服を着て、個室風呂から出るとビオラさんが待機中。
「お待たせしました」
「いえいえ。御厨さまのペースで全然構いませんよ」
そのまま周囲の背景が線になって、焼肉屋に到着。
移動時間ゼロってマジで素敵。
日本にも転移魔法が普及しないかな。
――いや、ダメだな。
物流に革命が起きて携わる人が職を失う可能性がある。
滅多なことは言うもんじゃないな。
「セットメニューをご用意しております。ご飯、味噌汁、漬物、ソフトドリンクはお代わり無料。お酒ですと追加料金がかかります」
「ふむふむ」
「お肉は足りなければ追加することも可能です」
「なるほど」
「食後にデザートとコーヒーが付いております」
「デザートはもはやデフォなのね」
「では、ごゆっくり」
という事で席について説明を受けたわけですけども。
目の前に七輪があるんだよね。
実物初めて見たかも。
こう、歴史の教科書とかでは見たことある気がするけれど。
あー……小学校のころ、昔の暮らしを体験しよう的な行事で使った気がするわ。
炒りおかきを作ったような……。
だいぶ記憶がおぼろげだな。
「お待たせしましたー。ご飯と味噌汁、漬物でーす」
で、早速お代わり無料組が運ばれてきましたよっと。
「飲み物は何にしますー?」
「じゃあ、コーラで」
「はいよー。お肉、すぐにお持ちしますねー」
と言って去り際に指パッチン。
すると、火が付く七輪。
え、いいなぁ、今の。
俺もやりたい……。
まぁ、魔法なんだろうし、人間に出来るとは思えませんけれども。
……とりあえず味噌汁飲むか。
うむ、見た目は何の変哲もない味噌汁だな。
――ふっつー。
いやなんというか、もっとこう、一口飲んだだけで日本で飲んだ味噌汁が吹っ飛ぶくらいの美味しさを期待していたというか。
いやその、海外とかで飲む味噌汁に比べたら間違いなくクオリティはたけぇよ?
でも、言うても日本で普通に飲める味噌汁の域なんですわ。
出汁は昆布と鰹かな? 味噌も合わせ味噌で、マジで普通って感じ。
漬物は? ……うん、こっちも普通。
べったら漬けだよね、うん。
続いてご飯……あ、ご飯は美味い。
美味いけど……旅館のご飯とかってレベル内だな……。
こう、ぶっ飛ぶほど美味しいってわけではないな、うん。
「コーラと最初のお肉でーす」
で、持って来てもらったコーラと……ん? 何肉だ? これ。
見た目まんま葉っぱに見えるんだけど。
こう、ちょっと肉厚の大葉ってくらいの葉っぱなんだが……。
肉なのか。焼くか、一応。
「おぉう……」
網に乗せた瞬間、葉っぱとは思えないジュウゥゥゥゥとか言う音が出て笑う。
しかもしっかり肉汁がしたたり落ちてるし。
え? これ、どれくらい焼けばいいの? 別に火が通っても色変わって無くない?
――あ、段々緑から茶色になってきた。これが火の通った証か。
……枯葉かな? えーっと、肉に付けるタレは……。
レモンダレ、塩ダレ、オリジナルタレ、辛味タレ、味噌ダレ、結構あるな。
そこに塩や胡椒もあると。
最初はシンプルに塩でいただきますかね。
肉の味を感じたいし。
というわけで両面焼いて、完全に枯葉へと見た目が変貌したお肉に塩を振り……。
ガブリッ!
「んっほ!?」
瞬間にあふれ出る肉汁。
というか勢い良すぎて服に飛び散ったんだけど。
……『天葉』内に洗濯機とかあるのかな?
結構お気に入りの服だったんだけど……。
「あ、美味い」
で、枯葉肉の感想なんだけど、ベーコンっぽい。
ただ、そこまで塩味があるわけじゃなく肉本来の味が強い。
ただ、肉の味が鳥でも豚でも牛でもないんよな、何だろう。
……マグロ……かな?
肉汁たっぷりの焼きマグロって感じ。
これ、ワサビと醤油が欲しくなるなぁ。
「あー、美味い」
肉の後にご飯を掻っ込み、それらを飲み込んでなお口内に残る脂をコーラで洗い流し。
「次の肉お持ちしましたー」
さらなる肉の登場に、俺は心を躍らせるのであった。




