もっと無かったの?
う~む……。
やっぱりチョコレート入れよりも名刺入れとして使っちゃダメ?
どう考えてもそっちの方が実用性ありそうなんだけど。
「ま、作っといてなんだが使い方は任せるぜ」
「まぁ、チョコレート入れは流石に使い方が局所的過ぎますし……」
なんと言うか、使えないというわけではないよ? うん。
でも、わざわざチョコレートを専用の入れ物に入れて持ち歩く人ってのはちょっと見た事無いかなーって。
あー……また異世界のミステリーツアーに参加するようなときに、この容れ物にチョコレートを入れていたら受けるかも?
そうだな、普段遣いする以外の用途はそうなるかな。
「じゃあ、ありがたく頂いておきます」
「おう」
というわけで、旅の土産? にチョコレート入れ改め名刺入れを手に入れた!
「ん? そろそろか?」
「そうですね」
何やら時計を見て顔を見合わせる獣人夫婦。
何だろう?
「じゃ、俺らは昼寝をするからよ」
「マウラ、ミクリヤさんにお礼を言いなさい」
「お兄ちゃん、チョコレートありがとー!」
なるほど、お昼寝の時間か。
というか、食後で列車に揺られてると確かに眠くなってくるな……。
俺も仮眠を取ろうかな。
てなわけで特スイートクラスの客室に戻って参りまして。
「ビオラさん、ホットココアとかって貰えます?」
「もちろんです。甘さもお選びいただけますが?」
「選択肢を」
「甘い、ゲボ甘、火の出る甘さ、吐き気を催す甘さです」
「普通で」
「かしこまりました」
…………なんか、おおよそ甘さを表す言葉ではない物があったような?
しかも複数。
ま、いいか。
――エルフ達ってそんな甘い物を飲むんだろうか?
健康面とか大丈夫なのかな?
肥満とか、糖尿病とか……。
いやでも、エルフってそんな病気を患ってるイメージは無いな。
という事は大丈夫なんだろう……多分。
「お待たせしました、こちら、甘さ普通のココアでございます」
「ありがとうございます」
というわけで、持って来てもらったココアを一口。
うむ、程よい甘さとココアの香りが心身ともにリラックスさせてくれるね。
――どうしよう、上の段階の甘さがめっちゃ気になる。
でも、絶対に体にはよくないって分かってるし……。
が、我慢しよう。
「ふぅ」
というわけで美味しく飲み終わりました。
さて、と。
それじゃあ、
「ちょっと寝るんで到着前に起こして貰えます?」
「かしこまりました。……抱き枕などもございますが使われますか?」
「あ、じゃあお願いします」
寝ようとしたら、そんな事を提案された。
いいねぇ、抱き枕。
「どうぞ」
と、虚空から取り出された抱き枕は……。
「――チェンジで」
緑色の、巨大な芋虫を象った抱き枕。
キャ〇ピーかな? ポケ〇ンの。
「お気に召しませんでしたか?」
「見た目が嫌です。普通に」
自分とほぼ同じ大きさの芋虫を抱いて寝たいとは思わねぇのよ。
妙にリアルなのも気になるし。
「ではこちらなどは?」
で、次に取り出されたのはナメクジの形をした抱き枕。
もしかして、俺って嫌がらせされてる?
普通に嫌なんだけど?
「拒否で」
「人気ですのに」
人気なんだ。
今さっきの二つの抱き枕が?
それはこの世界の人たちの感覚が俺と違い過ぎるからなの?
それともエルフの感覚が俺と違うからなの?
「ではこちらなどは?」
そう言って取り出されたのはさやえんどうみたいな形状の抱き枕。
そうそう、こういうのでいいんだよこういうので。
「それで」
「かしこまりました」
というわけで受け取り、ベッドにIN。
うむ。ふかふかのベッドにふかふかの枕、ふかふかの抱き心地の抱き枕で全身ふかふかに包まれてますわ。
これならすぐに眠りに付けそう。
「では、町に到着する少し前に声をかけさせていただきます」
「お願いします」
「それでは」
そう言って客室から出ていくビオラさんを目で追って。
そのまま、本当に数秒で眠りの世界に落ちていった。
今思えば、抱き枕になんか魔法とかがかけられていたのかもしれない。
それくらい、即落ちと言われるレベルで眠りの世界に落ちていったのだから。
*
「御厨さま」
「ん……」
呼ばれて目を覚ます。
ん、時間か。
「おはようございます」
「おはよう……」
めっちゃスッキリ眠れた気がする。
こう、昼寝とかの時ってさ、声をかけられたり、チャイムが鳴ったりで自然じゃない起き方をすると、体がだるかったり頭が重かったりするもんじゃん?
それが無いね。
ベッドの柔らかさのおかげか、それとも抱き枕のおかげかは分からんけれども。
「お風呂……なんだっけ?」
「はい。夕焼けを見ながらの入浴やサウナをお楽しみいただき、その後に夕食となります」
「ちなみに夕食のメニューは?」
「焼肉かコース料理からお選びいただけます」
「また極端な」
普通その二つが並べられること無いけどね?
あと、風呂の後に焼肉食べるの?
匂いとか髪に付かない?
「ちなみに脱臭の魔法があるので匂いについてはご安心を」
「あ、はい」
考え読まれてたし。
んー……。
「ちなみにビオラさん」
「何でしょう?」
「列車内でもコース料理を食べられたりとかは?」
「可能ですよ?」
「焼肉は?」
「申し訳ありません。そちらに関しては列車内ではご提供しておりません」
「なるほど」
じゃあ、決まりかな。
「焼肉で」
「かしこまりました。それでは、温泉の方へと案内させていただきますね」
さてさて、それじゃあ。
異世界の温泉とやら、楽しませてもらいますかね。




