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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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アクシデント?

「ん?」

「どうなされました?」


 各種族の取説を聞いてて思ったんだけど、一種族だけ取説が無かった種族が無い?

 

「人間に関する注意事項的なのって無いんですか?」


 そう、人間。

 俺を含めた人間に関する情報が無かったなぁって。


「ありませんよ?」

「無いんだ」

「しいて言えば、先ほど挙げた種族の拘り全てを無視して構わない、という所です」

「ほぅ?」

「肉は固く焼かなくていいですし、酒もそんなに量を飲むわけではありません。魚の活造りも当たり前に食べますし、肉の焼き方は焼く前に希望を聞きます」

「まぁ」


 人間なら、特に気にするような部分じゃないもんね、その辺は。


「あと、ドワーフと同席させても問題ありません」

「でしょうね」


 エルフじゃないからね。

 ドワーフと同席したからって特に何か思うわけでもないでしょ。

 ――ん?


「質問なんですけど」

「なんでしょう?」

「ドワーフと同席した人間って、ドワーフにめっちゃ飲まされて潰されたりしてませんよね?」

「……」


 目を逸らすな目を。

 これ絶対潰されてるじゃん。

 人間はドワーフの酒飲め攻撃に対する生贄か何かなのか?


「ミクリヤ」

「はい?」

「ドワーフが他種族に酒を飲ませる時は、酒の代金はドワーフ持ちだ」

「はぁ」

「ただ酒が飲めるとはしゃいで勝手に人間が潰れるパターンが多い」

「えぇ……」


 酒は飲んでも飲まれるな、だぞ?

 確かに誰かの金で飲む酒は美味いけど、だからと言って自分の限度を超えて飲んでいいって事にはならねぇだろうがよい。


「ちなみになんですけど」

「なんだ?」

「お二人がドワーフからお誘いを受けたとして、お酒飲みます?」

「飲む」

「ご馳走になりますね」

「飲むんだ」


 今の流れ的に獣人夫婦は断るんじゃないか? と思ったりもしたんだけど。

 飲むんだね。


「考えてもみろミクリヤ」

「何をです?」

「他人の金で飲む酒がいっちゃん美味い」

「…………同意します」


 結局、種族は違えどみんな考えが一緒ってのが分かったよ、うん。



「ん?」


 それから、他愛ない会話をしながらゆっくりと外の景色を眺めたり。

 膝の上に陣取るマウラ君を撫でながらのほほんとした時間を過ごしていたら。

 急に、獣人旦那が窓の外へと鋭い視線を向けた。


「ミクリヤ、見えるか?」

「何が?」


 急に言われ獣人旦那の視線の先を見つめるが。

 ……何もない。


「アレだ。ワイバーンだ」


 そう言って指を差す獣人旦那。

 ほう、ワイバーンですか。

 ――さっぱり見えん。


「見えませんが」

「人間の視力じゃそんなもんか。少しだけ備えていた方がいいかもな」

「何がです?」

「どうもワイバーンがこっちを狙ってるらしい。ブレスの準備をしているようだ」

「え?」


 狙われてるの?

 『天葉』が?

 備えろって言ったってどうしろと……。

 とりあえず、飛行機の不時着する時の安全な姿勢みたいなのを取るか。

 えーっと、頭を守って、衝撃に備えて……。


「御心配には及びません。この列車のガードナーが出撃いたしました」


 そんな俺に降ってくる、ビオラさんの言葉。

 そういえばガードナーが乗ってるんだっけ、この列車。

 どんな身なりなのかちょっと気になるな。

 転移魔法と体の内側を沸騰させる魔法を使うんだっけ?

 ちょっと楽しみ。


「お。おお? おおお!!」


 なお、俺の視力では見えない模様。

 そもそも対象のワイバーンが見えてないからね、それもそうだって話だ。

 ……そうだ。


「もしよければどんな事が起こってるか解説お願い出来ます?」

「ん? おお、任せろ」


 俺に見えないのなら、見えてる人に実況解説を任せればいいじゃない。

 という事で獣人旦那に解説を頼むと。


「瞬間移動して脳天にかかと落とし。グラついた隙に後方に転移し、尻尾を掴んでジャイアントスイング」


 ……何だろう、聞いてる感じ闘い方がどう考えても魔法使い系の戦い方じゃない。

 本当に魔法が得意なお方なの?


「ぶん投げた先に転移して先回りし、顔面に膝を叩き込んでワイバーンが気絶したな」

「肉弾戦ですねぇ……」

「空中で魔法をぶっ放すと下に居る住人に被害が出たりするからな」

「ああ、なるほど」


 確かにそうかも?

 となると、肉弾戦が最適解だったって事か。

 だとしてもな戦い方だった気もするけど。


「なぁ? 気絶したワイバーンはどうするんだ?」


 色々と考える俺を余所に、獣人旦那がビオラさんへと質問。


「基本的にガードナーが狩猟した魔物はガードナーが所有権を有します。解体技術は持ち合わせていなかったはずなので、市場に流されるのではないでしょうか?」

「話を付ける事は出来るか? 俺が買いてぇんだが?」

「聞いては見ますが、了承いただけるかは保証できませんよ?」

「構わねぇ」


 という事で、狩ったばかりのワイバーンを購入したいという獣人旦那の言葉を、ガードナーへと伝えに行ったビオラさん。

 お、戻ってきた。

 果たして結果は?


「譲ってもいいが条件がある、と」

「お。なんだ?」

「先ほど食べていた抹茶のチョコレートを寄越せ、だそうです」

「……」

「…………まだありますよ」


 そんな目で見ないでくれ。あげるからさ。



「ん~、やっぱりこれですわ~。このチョコの滑らかさ、香り、抹茶の風味! どれを取ってもまだまだこちらでは勝負になりませんわねぇ」

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― 新着の感想 ―
あの時は手羽元を確保するために刈られたんだったか。 食材を譲るなんて、私の知ってる人物ではない可能性も…
何処ぞのエルフさん?
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