どんな見た目だよ
「何食べてるのー?」
ビオラさんに日本の事を話してたら膝の上からそんな声が。
マウラ君、起きちゃったか。
ちょっと騒がしかったかな?
「抹茶のチョコだよ。はいどうぞ」
「あ~ん」
というわけでオソラクカットを半分に割り、マウラ君の口へと放り込む。
「これ美味し~」
寝起きのへにょへにょした声でそう言って、
「あ~ん」
残った半分も催促。
可愛いねぇ。動物カフェにいる気分になるわ。
「随分とミクリヤさんに懐いちゃいましたね」
「迷惑だったらすぐに言ってくれな?」
「いえいえ。大人しいですし、全然大丈夫ですよ」
と、膝の上のマウラ君を撫でながら言う俺。
――いや、この辺の会話、明らかに対象がペットとかのソレなんよ。
あくまでマウラ君は獣人であって動物ではない、いいね?
「そういえばですけど」
「どうした?」
「どうして抹茶が希少なんです?」
で、気になった事を聞いてみる。
気にならない? 普通に。
「そうですね。……まず、抹茶を作るための茶葉が特殊です」
「ほぅ?」
茶葉、か。
そんなに特殊か?
ちょっと調べてみよう。
――中国種の茶葉なのか。
それを日陰で栽培、と。
まぁ、確かに異世界に中国種なんて茶葉は無さそうだなぁ。
となると代替品種って事になる?
その代替品種が希少品種とかか?
「一部地域に生息する『アブラカワセミ』という鳥型の魔物の羽根がそれなのですが」
「――なんて?」
茶葉って植物じゃないの?
魔物の羽根が原料? 何の話?
「『アブラカワセミ』っつー木に擬態する魔物でな。ワシワシうるせぇ声で鳴いてこっちを威嚇したり、集団で襲ったりしてくる厄介な魔物なんだよ」
「それはカワセミというかアブラゼミなのでは?」
「似たようなものです。その魔物の羽根を乾燥させ、粉末にしたものが抹茶の原料となります」
「……つまり、異世界の抹茶は鳥の羽根の粉末なんですね……」
「そうですが?」
ケロッと言われても。
なんと言うか、今までが割と普通だと思えただけに、お茶の原料が鳥の羽根って言うのは中々の衝撃だな。
――牡蠣に見えるバナナが普通かは一旦置いておく。
「でも、それでもさっきミクリヤから貰った抹茶よりも風味が弱えぇ気がするな」
「ですね。とても風味が良かったですもの」
そんな魔物から取れた抹茶も、オソラクカットの抹茶味の風味に劣る、と。
もし今後もこの異世界に来ることが出来るなら、抹茶の粉末でも持って来ようかしら。
高値で売れそう。あと、お湯を注ぐだけで抹茶ラテになるやつとか。
「その『アブラカワセミ』を使った料理もこの列車内で楽しめますよ? 羽根は流石にございませんが」
「あ、そうなんすね」
「よし! じゃあ俺がミクリヤにその料理をごちそうしよう」
「マジです?」
「おうよ! チョコレートを貰った礼だ! 『アブラカワセミ』の串焼きを人数分頼むわ」
「かしこまりました。少々お待ちください」
……一瞬で決まったけど、アブラゼミならぬアブラカワセミを食べることになりました。
というか、串焼きなのか。
ソテーとかを想像してたんだけども。
いやでも、カワセミもアブラゼミも大きいイメージ無いし、だったら串焼きでも納得か?
これでスズメやウズラの串焼きみたいなのが出てきたらどうしよう。
食べるの躊躇っちゃうかも……。
「お待たせしました」
「……おっと?」
なんてイメージしてたのは杞憂でしたわね。
普通に串焼きというか、焼き鳥っぽいものが出てきましたわ。
焼き鳥というか、うなぎの肝を串焼きにしたやつに見た目そっくり。
これなら特に抵抗なく食べられるね。
「じゃあ、ご馳走になります」
「おう!」
という事で獣人旦那に感謝の意を伝え、がぶっと一口。
瞬間、ジュワッと溢れる肉汁。
日本で食べる若鳥とは違う、しっかりと固い歯ごたえのその身は、串から外してゆっくり咀嚼。
めっちゃ固い。
前歯で噛んでも身で防がれて歯同士がぶつからない。
かと言って奥歯で噛んでもしっかりとした弾力で受け止められる。
――ただ、噛む度に肉汁と旨味とがしっかりと溢れ出して来て、ただの固い肉ではない事が分かる。
「美味しひです」
噛むのに苦労しつつも、しばらく咀嚼して飲み込んで。
うん。普通に美味しいよ。
「この歯応えがいいんだよな!」
とか言って、獣人旦那、一口で串に刺さったアブラカワセミの肉を引き抜くと。
ギュムッ! ゴリュッ! ゴリュッ! ゴクン。
とあっさり咀嚼。
……? ははーん。さては獣人、噛む力も人間とは比べ物にならんな?
人間があの速度で飲み込もうとしたら、多分日本刀とか必要だぞ?
肉を細かくするために。
「あなたはこれが大好物ですものね」
とか言ってる獣人奥さんも、おしとやかさを感じる所作で串焼きを口に運ぶと。
コキュッ! コリュッ! コリュッ! カリュッ! コクン。
と、気持ち旦那よりも長く咀嚼してたけど、明らかに俺より早い。
「兄ちゃん、兄ちゃん。あ~ん」
「あ~ん」
で、俺の膝の上でねだってきたマウラ君に串焼きを差し出すと。
カキュコキュコキュコキュカリュコクン! と、高速で咀嚼。
…………。
これ、食べ終わるの一番俺が遅くなりそうだな。




