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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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21/30

触れあい

「では、次の到着は夕暮れ頃になります」

「結構長い道のりですね」


 車内に戻り、ベッドに身を投げてくつろぎタイム。

 今がお昼過ぎだとして、夕暮れ前って事は大体四時間くらいは移動時間か。


「到着の少し前に声をかけさせていただきます」

「よろしくお願いします」


 お辞儀をし、部屋を出ていくビオラさん。

 さて……と。

 何をしようか。


「一応電波は通じてるんだよな」


 ポケットからスマホを取り出し確認しても、圏外という表記は無い。

 つまり、異世界でもネットにアクセスできるという事。

 ――これ、今の位置情報を表示させたらどうなるんだろう?

 試してみよう。


「…………ひっ!?」


 興味本位で自分の位置を表示したら、バミューダトライアングルの中央にピンが刺さった。

 しかも表示が『きさらぎ駅』だったし。

 怖すぎる。


「ん~……動画見て過ごすってのもなぁ」


 折角の異世界……というか旅なんだし、いつでも見られる動画を見るよりは景色とかを見たいかなぁ。

 そういや、この列車には展望デッキとかないんだろうか?

 ある列車にはあるよね、展望デッキ。

 教えてビオラさんするか。


「ビオラさん」

「お呼びでしょうか?」

「この列車に周囲の景色を眺められる展望デッキとかあります?」

「ラウンジがございます。二階にございますので景色も眺められるかと」

「お、いいね。行ってみよう」


 という事で列車のラウンジに移動。

 もちろん、ビオラさんの案内の下で。


「他のお客さんも居ますね」

「どのクラスのお客様もご利用可能ですので」


 で、いざラウンジに行ってみたら色んなお客さんが居た。

 と言っても一杯というわけではなく、程よく人がいる程度の量。

 家族連れの獣人たちとか、エルフ達、人間も居るな。

 ちょっと異世界人と交流してみるか。


「こんにちは~」


 声をかけるとぎょっとした表情をされたが、すぐに俺の近くにいるビオラさんを確認し、そういう事か、と納得する獣人家族。

 何か変だったんだろうか?


「俺たちの言葉を完璧な発音で喋ってたからびっくりしちまったぜ」

「ごめんなさいね。でも、人間には難しい発音だからつい、ね」


 と、驚いた表情をした理由を教えてくれた。

 なるほど。


「翻訳魔法付きとは結構なクラスでの旅行なんだな」

「羨ましいわぁ」


 で、ビオラさんを見て、すぐに翻訳魔法に行きつく当たり、この獣人夫婦も結構利用してるのかな?


「お兄さん誰ー?」


 その人らの後ろに隠れてた子供獣人から声をかけられる。

 可愛いねぇ。


「異世界から来た御厨だよ、よろしくね」

「ミクリヤー」

「ほう、異世界人か」

「確かに服装が全然違うものね。てっきり人間の最近の流行ファッションなのかと思ったわ」


 まぁ、現代の服装が異世界で浮くのはしょうがないよ。

 ……ちなみに俺の服装は全身マルっとユニ〇ロコーデ。

 すまない、ファッションには疎いんだ。


「異世界人が『天葉』を利用するってなった経緯が聞きてぇな」

「この列車の話が異世界にまで届いてるという事なんでしょうか?」


 という話から始まった異世界人との交流。

 ラウンジという事で適当な席に座り、飲み物と軽く摘まめるものを注文して会話に花を咲かせることに。

 なお、獣人の旦那さんの方は『ビタービール』という琥珀色のビールを注文。

 俺も頼もうとしたらビオラさんから、


「そちらの飲み物は追加料金がかかります」


 と言われ、断念。

 無料の範囲内であるカクテルから、『淡い日差し』というお洒落な名前のカクテルを注文した。

 その際に、


「飯や飲み物を考えて食いたくなくてよ。列車内の全ての飲み食いがし放題のプランにしてんだ」


 なんて言っていた。

 確かに、列車内の食事は美味しいし飲み物も美味い。

 俺のミステリーツアーにもある程度の食べ飲み放題は付いてるようだけど、さっきみたいに、特にアルコールに対してはあまり対象じゃ無かったりする。

 この辺は人それぞれかな。


「ミクリヤー」


 なお、獣人の子供からはなぜか懐かれた。

 めっちゃ寄ってくると思ったら膝の上にちょこんと座るし。

 獣人の奥さんが、


「マウラ、やめなさい」


 と止めようとしてたけど、


「俺は構いませんよ」


 そう言って膝の上に座ったマウラと呼ばれた子の頭を撫でたり。

 ちなみに獣人夫婦は恐らくベース? なんて言うんだろう……。とりあえず狼っぽい。

 でも、マウラと呼ばれた子供は耳の感じ狼ではないっぽいんだよな。

 狼よりは柴犬っぽい耳してる。

 

「俺がこの列車の利用してるきっかけですよね?」

「あぁ」

「これが偶然なんですよ」


 というわけで、俺が今現在に至るまでの説明を獣人夫婦へ。

 現代――夫婦からした異世界のミステリーツアーに応募したら、この世界に来ていて。

 そのまま流されて今に至る、と。


「へぇ。そんなツアーがねぇ」

「偶然なのに特スイートクラスなのは幸運でしたわね」

「いや本当に。なので、ゆっくり楽しもうかと」

「だな。もう乗っちまって出発しちまったんだ。あとは勝手に進んでくれらぁ」


 ……うん。

 何が言いたいか分からないけど、旦那さん、もうビタービール六杯目だもんな。

 頼んで到着したら即飲み干す、みたいな速度で飲んでるし、本人も何言ってるか分かって無かったりして。


「ん?」

「あら、寝ちゃってるのね」


 で、大人しいなぁと思ってたマウラ君はいつの間にか寝ている御様子。

 まぁ、膝の上を気に入って貰えたようで何よりだけども。


「お、そうだ」

「?」

「ミクリヤ、この列車のカレーは食べたか?」

「あるんです? カレー」

「おう。この列車のカレーはエルフの国の中でも一、二を争う美味さだぜ?」


 と言われ、ビオラさんを振り返るとゆっくり頷くビオラさん。

 ほうほう。

 だがいいのか? こちとらカレーライス大国の日本からの旅行者だぞ?

 その俺にカレーを勧める……。

 つまりは宣戦布告。

 ふっ。その勝負、買った。


「カレーライスを小盛で一つ」

「かしこまりました」


 ……ただ、お腹一杯だからね。

 量は少しでお願いします。

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