触れあい
「では、次の到着は夕暮れ頃になります」
「結構長い道のりですね」
車内に戻り、ベッドに身を投げてくつろぎタイム。
今がお昼過ぎだとして、夕暮れ前って事は大体四時間くらいは移動時間か。
「到着の少し前に声をかけさせていただきます」
「よろしくお願いします」
お辞儀をし、部屋を出ていくビオラさん。
さて……と。
何をしようか。
「一応電波は通じてるんだよな」
ポケットからスマホを取り出し確認しても、圏外という表記は無い。
つまり、異世界でもネットにアクセスできるという事。
――これ、今の位置情報を表示させたらどうなるんだろう?
試してみよう。
「…………ひっ!?」
興味本位で自分の位置を表示したら、バミューダトライアングルの中央にピンが刺さった。
しかも表示が『きさらぎ駅』だったし。
怖すぎる。
「ん~……動画見て過ごすってのもなぁ」
折角の異世界……というか旅なんだし、いつでも見られる動画を見るよりは景色とかを見たいかなぁ。
そういや、この列車には展望デッキとかないんだろうか?
ある列車にはあるよね、展望デッキ。
教えてビオラさんするか。
「ビオラさん」
「お呼びでしょうか?」
「この列車に周囲の景色を眺められる展望デッキとかあります?」
「ラウンジがございます。二階にございますので景色も眺められるかと」
「お、いいね。行ってみよう」
という事で列車のラウンジに移動。
もちろん、ビオラさんの案内の下で。
「他のお客さんも居ますね」
「どのクラスのお客様もご利用可能ですので」
で、いざラウンジに行ってみたら色んなお客さんが居た。
と言っても一杯というわけではなく、程よく人がいる程度の量。
家族連れの獣人たちとか、エルフ達、人間も居るな。
ちょっと異世界人と交流してみるか。
「こんにちは~」
声をかけるとぎょっとした表情をされたが、すぐに俺の近くにいるビオラさんを確認し、そういう事か、と納得する獣人家族。
何か変だったんだろうか?
「俺たちの言葉を完璧な発音で喋ってたからびっくりしちまったぜ」
「ごめんなさいね。でも、人間には難しい発音だからつい、ね」
と、驚いた表情をした理由を教えてくれた。
なるほど。
「翻訳魔法付きとは結構なクラスでの旅行なんだな」
「羨ましいわぁ」
で、ビオラさんを見て、すぐに翻訳魔法に行きつく当たり、この獣人夫婦も結構利用してるのかな?
「お兄さん誰ー?」
その人らの後ろに隠れてた子供獣人から声をかけられる。
可愛いねぇ。
「異世界から来た御厨だよ、よろしくね」
「ミクリヤー」
「ほう、異世界人か」
「確かに服装が全然違うものね。てっきり人間の最近の流行ファッションなのかと思ったわ」
まぁ、現代の服装が異世界で浮くのはしょうがないよ。
……ちなみに俺の服装は全身マルっとユニ〇ロコーデ。
すまない、ファッションには疎いんだ。
「異世界人が『天葉』を利用するってなった経緯が聞きてぇな」
「この列車の話が異世界にまで届いてるという事なんでしょうか?」
という話から始まった異世界人との交流。
ラウンジという事で適当な席に座り、飲み物と軽く摘まめるものを注文して会話に花を咲かせることに。
なお、獣人の旦那さんの方は『ビタービール』という琥珀色のビールを注文。
俺も頼もうとしたらビオラさんから、
「そちらの飲み物は追加料金がかかります」
と言われ、断念。
無料の範囲内であるカクテルから、『淡い日差し』というお洒落な名前のカクテルを注文した。
その際に、
「飯や飲み物を考えて食いたくなくてよ。列車内の全ての飲み食いがし放題のプランにしてんだ」
なんて言っていた。
確かに、列車内の食事は美味しいし飲み物も美味い。
俺のミステリーツアーにもある程度の食べ飲み放題は付いてるようだけど、さっきみたいに、特にアルコールに対してはあまり対象じゃ無かったりする。
この辺は人それぞれかな。
「ミクリヤー」
なお、獣人の子供からはなぜか懐かれた。
めっちゃ寄ってくると思ったら膝の上にちょこんと座るし。
獣人の奥さんが、
「マウラ、やめなさい」
と止めようとしてたけど、
「俺は構いませんよ」
そう言って膝の上に座ったマウラと呼ばれた子の頭を撫でたり。
ちなみに獣人夫婦は恐らくベース? なんて言うんだろう……。とりあえず狼っぽい。
でも、マウラと呼ばれた子供は耳の感じ狼ではないっぽいんだよな。
狼よりは柴犬っぽい耳してる。
「俺がこの列車の利用してるきっかけですよね?」
「あぁ」
「これが偶然なんですよ」
というわけで、俺が今現在に至るまでの説明を獣人夫婦へ。
現代――夫婦からした異世界のミステリーツアーに応募したら、この世界に来ていて。
そのまま流されて今に至る、と。
「へぇ。そんなツアーがねぇ」
「偶然なのに特スイートクラスなのは幸運でしたわね」
「いや本当に。なので、ゆっくり楽しもうかと」
「だな。もう乗っちまって出発しちまったんだ。あとは勝手に進んでくれらぁ」
……うん。
何が言いたいか分からないけど、旦那さん、もうビタービール六杯目だもんな。
頼んで到着したら即飲み干す、みたいな速度で飲んでるし、本人も何言ってるか分かって無かったりして。
「ん?」
「あら、寝ちゃってるのね」
で、大人しいなぁと思ってたマウラ君はいつの間にか寝ている御様子。
まぁ、膝の上を気に入って貰えたようで何よりだけども。
「お、そうだ」
「?」
「ミクリヤ、この列車のカレーは食べたか?」
「あるんです? カレー」
「おう。この列車のカレーはエルフの国の中でも一、二を争う美味さだぜ?」
と言われ、ビオラさんを振り返るとゆっくり頷くビオラさん。
ほうほう。
だがいいのか? こちとらカレーライス大国の日本からの旅行者だぞ?
その俺にカレーを勧める……。
つまりは宣戦布告。
ふっ。その勝負、買った。
「カレーライスを小盛で一つ」
「かしこまりました」
……ただ、お腹一杯だからね。
量は少しでお願いします。




