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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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分からん分からん分からん

「本ツアーは、世界樹より作られた木造列車『天葉(てんよう)』で世界樹を登るクルーズトレインのショートツアーです」

「ごめんなさい、さっきスルーしたんですけど、世界樹というのは?」

「窓の外をご覧ください」


 さっきは世界樹よりも衝撃的な単語があったからスルーしたけど、改めて聞くと世界樹ってなんだよってなる。

 いや、名前的には知ってるよ? あれでしょ? ユグドラシルとかって呼ばれてるやつ。

 ……それで作ったの? 列車を?

 まぁ、一旦それはいいや。

 促された窓の外を見たけど、特に壁しか見えないけど……。


「今見えているのは世界樹の外皮です」

「……どう見ても壁ですけど?」

「世界樹は大変に大きいので、壁と思われてもしょうがないですね」


 ……えぇっと?

 俺の認識が間違えてなければ、少なくとも木って円――とは言わないまでも楕円系の形状よね?

 てことは、全体的にカーブを描いているわけだ。どの方向から見ても。

 で、それがカーブを感じない……壁としか認識できない程真っ直ぐとなると……。


「どれくらい大きいんです?」


 バカみたいなサイズとなってしまうわけで……。


「世界樹の上に国家が作られる程度ですね」

「……程度?」


 ヘイ、モノシリ?

 程度の意味を教えて?

 某弾幕シューティングの能力説明かよ。

 程度を付ければ許されると思うなよ?


「世界樹の中央が首都となっており、各枝や葉の上に町や村が存在します」

「葉っぱの上に町レベル……」

「ですので、このツアーは世界樹を登りながらエルフの国を巡るツアーというわけですね」


 わけですね、と言われましても……。

 いやまぁ、納得するしかないのか。


「続いて日程に関してですが」

「……あ、そうだ。それがあった。三泊二日というのは?」

「言葉通りの意味です。二日間の日程内で三泊します」

「無理では?」


 言葉の意味を理解して欲しい。

 あれか? 一日を十時間に区切って考えます、とかならまだ分からなくも無いか?

 かなり強引だけど。


「お客様の利用される特スイートクラスは、使用されている世界樹の枝の中でも特に古い部分を使って作られておりまして」

「古い木材って大丈夫なんですか? 強度とか」

「客室の外と流れる時間が違います」

「強度とか以前に大丈夫ですか!?」


 なんかとんでもない事言い始めたぞ。

 浦島太郎みたいな感じになるって事?


「流れる時間が違うと言っても、そこまで大きい差はございません。せいぜいが四倍から六倍程度です」


 程度の意味って……あ、いや、もういいです。


「つまり、客室内であるならば、八時間が最大四十八時間に引き延ばされます」

「……あー。それで泊まる回数が増える、と」

「その通りです」


 日程的に二日でも、体感時間はそうじゃないって事ね。

 把握。

 いや、把握、じゃないが?


「そもそも、特スイートクラス?」

「はい。本日ご利用の御厨さまはそちらに割り振られております」

「ミステリーツアーなのに?」

「大変ご運がよろしいようで、羨ましい限りです」


 ……何だろう、すっごいもやもやする。

 というか、ミステリーツアーはそういう意味じゃないじゃん。

 行き先が分からないだけで、別に異世界で本当にミステリーな体験をする旅ってわけじゃないじゃん?


「ちなみにですが、今ならキャンセルが可能です」

「出来るの!?」

「はい。ただし、今後の御厨さまの人生で、このような体験をもう一度行えるような機会があるかは保証致しかねますが」

「……少し考えます」

「はい」


 ぶっちゃけた話、こんな明らか異世界な場所なんて早々に退散するに限る。

 だって、こういった異世界ではお決まりのように魔物が存在するわけだし。

 これがよ? 創作とかの主人公でチート能力付与とかされてるなら話は別よ?

 でも、俺にそんな物備わってるわけないじゃん?

 となると、君子危うきに近寄らず、さっさと帰る一択な訳。

 ただ、ビオラさんが言ったように、こんな体験、恐らく今後は出来ないわけで……。

 そうなるとなぁ……。


「よし」

「決まりましたか?」

「はい。このまま参加します」

「かしこまりました」


 好奇心が勝つ。

 何より、俺が両親からずっと言われてきた言葉がある。

 『旅は人生を豊かにする。どんどん旅行をしなさい』というものだ。

 事実、小学生から両親に連れられ国内旅行、高校に上がると国外旅行に切り替わり、大学生になったら好きに旅行しろ、とクレジットカードを渡された。

 旅行でのみ使っていいと言われたそのカードを使って、散々色んな旅をさせて貰ったっけ。

 ……ほぼほぼ国内旅行だったけど。

 

「では、ウェルカムドリンクです」

「あ、ありがとうございます」


 渡されたのは、ワイングラスに注がれた気泡が昇る綺麗なエメラルドグリーンの液体。

 何味だろう?


「そちらのドリンクは、飲む方によって味が変わるドリンクでございまして」

「へぇ」

「飲む方の最も馴染みのある味に変化します」

「なるほど」


 馴染みのある飲み物……何だろう?

 ジュース……あ、コーヒーか?

 コーヒーの炭酸はちょっとなぁ……。飲んだ回数で言えば学校給食で牛乳は飲んでたからワンチャン牛乳?

 牛乳炭酸かぁ……。

 まぁ、不味くはないだろうからいいか。

 と、ウェルカムドリンクをゆっくり口に含んで――。


「むぶっ!!?」


 咽た。


「だ、大丈夫ですか?」


 ビオラさんが慌てるけど、


「だ、大丈夫です」


 と取り繕う。

 そ、そう来たかぁ~。

 俺に馴染みのある味に変わるというウェルカムドリンク。

 その味は――味噌汁!!

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