食べログ評価☆3.8
スマホのアラーム音に目を覚ます。
……ん。
よく寝た。
「もうじき到着です」
…………寝起きじゃなかったら危なかったな。
間違いなく飛び上がってたと思う。
あれ? なんかいつもより遠くない?
「前回驚かれましたので、三歩程遠い場所に転移するようにして見ました」
「……誤差では?」
三歩だけ遠くなったって、下手すりゃ気が付かない人も居るのではレベル。
まぁ、俺はしっかりと気が付いているんですけれども。
「次の町では魔法の発射体験が出来るんだっけ」
「その通りです。ただ、初見ですとアコギな商売に引っ掛かりやすいので私も同行させていただきますが」
「? 観光地価格って事?」
正直、観光地だからで値段つり上げとかは体験談があるし、そこまで変には思わないけども。
というか、そうなんだったらそんな価格設定以外の場所に連れて行って貰えればいいだけなんじゃねぇの? と思わんでもない。
「いえ。度重なる追い金……課金と表現しましょうか。それを迫って来るので」
「具体的には?」
「まず発動する魔法がデフォルトで風魔法です」
「? ダメなの?」
「風を視認出来ますか?」
あー……なるほど。
金払って魔法を撃つ体験をしたのに、どんな魔法を撃ったか自分で視認出来ないのか。
「その後で、別の魔法が撃ちたけりゃあもう一発分金払えって要求するわけね」
確かに。
事前に説明しろよとは思うが、事前に、
「今から撃つのは風魔法です」
と説明されても当たり前に受け入れそうだよな。
風魔法が見えないってのは、ちょっと想像してなかった。
「そうではあるのですが、別属性の魔法に変えるには追加で課金が必要です」
「……は?」
「加えて、派手な火魔法や雷魔法は値段が高く設定されており、水魔法は言うなれば物凄い水流なのでそこまで……」
「あー……課金の意味が理解出来たかも」
「なので、追加課金が必要ないよう、御厨さまの希望をくみ取ったオーダーを私が責任もって伝えさせていただきます」
ビオラさんが同行してくれるの、本当に心強いな。
というか、エルフも商売考えてるんだなぁ。
商売というか、どっちかと言うと詐欺に近いのかもしれないけど。
俺みたいな現代人が、何の予備知識もなくこのツアーに参加したら、美味しそうな鴨だったんだろうなぁ。
「ちなみにおススメは、火属性変更、音、エフェクトマシマシです」
「ラーメンのトッピングか何か?」
その言い方はもう、某ラーメン店のイメージしかわかないのよ。
もうちょっとどうにかならなかったのか?
「そしてお昼ご飯ですが」
「また選択式です?」
「いえ。お昼には自信を持ってラメーンの店へとご案内いたします」
「……ん?」
今、ラメーンって言った?
ラーメンだよな?
「ラーメンですよね?」
「はい、ラメーンです」
……。
噛み合わない。
「そもさん」
「説破」
「魚鳥木申すか申すか?」
「申す申す」
話は通じてるんだよな。
何だろう、この感じ。
「有名なお店なの? そのラーメン店」
「一時期エルフにラメーンブームが巻き起こったのですが、そのブーム中に二人のエルフによって立ち上げられた本格的なラメーンの専門店になります」
ブームになったんだ、ラーメン。
……あと、もう気にしないって決めたからね?
あなたはラメーン、俺はラーメン。
そこに何の違いもありゃしねぇだろうが。
「ちなみにそのお店は近々百五十号店を出すようです」
「勢力拡大し過ぎだろ」
なんだ百五十号店って。
もはやチェーン店だろ、それ。
「お店の名前は『LIN&LIN』というお店ですよ」
「豚骨とかが有名だったりしません? そこ」
何だろう、そこはかとなく聞いた事がある店の名前なんだよな。
多分きっと恐らく偶然なんだろうけど。
「いえ」
ほら、良かった。
「ボア骨ラーメンが看板商品です」
……どっちだ?
イノシシか? 蛇か?
割と大事だぞ、そこ。
いや、骨って言ってるしイノシシだよね?
「あと、デザートのプリンが人気です」
「甘い物はもういいよ……」
なんでエルフってここまで甘い物推しなんだ?
何か理由があるのか?
あれか? 頭を回転させるために甘い物を欲してる的な感じなのか?
「さて、そうこう言っている間に到着です」
「また出る順番を最初と最後で選べる?」
「選べますよ?」
「まぁ、最初で」
「かしこまりました」
よくよく考えると、最後に降りたいって考えになる理由って何があるんだろう。
基本的に最初に降りれた方が得じゃない?
色々と見て回る時間が増えるし、ホームが人で溢れてないし。
「静かになった車内を歩き回りたいというお客様もおりますので」
「あー……確かに」
わざと遅く降りることで、誰も居ない列車内を貸し切り同然で見て回れるのか。
それはちょっと魅力的かも。
そういえば、自分の客室にすぐ乗り込んだせいで、列車内を見て回れてないな。
次の移動中は列車内でも見て回るか。
「では、魔法発射体験が行える場所までご案内します」
「お願いします」
という事で。
当然人生初、そして、おおよそ俺だけしか体験してないであろう魔法発射体験、楽しんで来ます。




