人間に優しくない
ふっふっふ。
分かってますって。
この牡蠣、見た目は牡蠣だけどアサイーボウルに入ってたバナナ味のやつでしょ?
ビュッフェに並んでいるのはブランチ用のご飯って言ってたし、だったら果物のバナナが並んでいても不思議じゃない。
何なら、牡蠣が並んでいる方が不思議まである。
というわけで……この牡蠣バナナをいただきます。
アサイーボウルの時も思ったんだけど、この牡蠣バナナ美味しいんだよね。
そうそう、この鼻に抜ける磯の風味。
ほんのり塩味の利いたクリーミィな味わいで、とろける様な味わいが……。
「牡蠣だ」
牡蠣でした。
誰だよバナナ味とか言った奴。
普通に見た目通りの牡蠣味だったが?
「日本の方が美味いな」
そしてその牡蠣も、美味しいには美味しいんだけれど……。
日本で食べる牡蠣の方が普通に美味い。
何だろうな、味の濃さが日本の方が濃い気がする。
異世界の牡蠣はちょっと物足りなさがあるな。
「お、牡蠣グラタンとかあるじゃん」
で、ビュッフェを眺めていたら、牡蠣の殻を剥いたままの姿に刻んだ野菜とチーズを乗せてオーブンで焼いた牡蠣グラタンが。
これは食べるしかないでしょ。
「チーズとホワイトソースが牡蠣とすこぶる合う……」
で、当然のように美味い。
この牡蠣グラタンなら日本の牡蠣とも渡り合えるな、うん。
「……て、違う違う」
俺は牡蠣を食べるためにビュッフェを頼んだんじゃあない。
えーっと、何かデザート……。
「オーダーメイドタピオカドリンク?」
そういえば、ビオラさんがさっきの町でおすすめのお店を紹介してくれた時、その内の一つの人気商品がタピオカドリンクって言ってたな。
エルフの中で流行ってるのかな? タピオカドリンク。
「えーっと? 注文票を書いて提出するだけか」
で、気になるから飲んでみることに。
注文方法はとっても簡単。注文票に書いてある項目に、自分好みになる様にチェックを付けて提出するだけ。
チェック方法は四角の枠があるから、そこに指を置いて魔力を込めればチェック完了……。
――? 簡単? 俺には不可能だと思われるんだけど?
しょうがない。こうなったら……。
「ビオラさん、居ます?」
「お呼びでしょうか?」
エルフを召喚。
これ、異世界人には優しくない注文方法だなぁ。
「タピオカドリンクを飲みたいので、注文票にチェックを入れて貰っても?」
「? ああ、魔力込式チェックの紙をお取りになったのですね」
そう言って空間の割れ目に腕を突っ込んだビオラさんは。
「こちら、ペンで記入する用紙もございますよ?」
と、ペンでチェックする式の用紙を渡してくれる。
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ。また何かあればお申し付けくださいませ」
そう言ってお辞儀し、どこかへ消える。
……何だ、あるじゃん。
俺が見つけられなかっただけか。
というわけでタピオカの注文へ。
「タピオカの固さ……固め普通柔らかめはいいとして、粉落としはタピオカに使う固さの表現じゃないだろ。当然の様にハリガネとかあるし」
ただ、この注文票がどこかラーメン屋チックなのはなんでだろうね?
タピオカの固さから始まり、タピオカの量、ドリンクの濃さ、ホイップクリームやチョコソース、キャラメルソースに至るまで。
タピオカドリンクでそこまでいる? みたいな注文が出来ちまうんだよな。
というわけで、タピオカの固さ柔らかめ、ドリンクはミルクティー、濃さ普通。
ホイップクリームやソースの追加は無しのスタンダードなタピオカドリンクを注文。
あ、タピオカの味も替えられたよ?
フルーツ味とか、チョコ味とか、挙句にはカスタード味まで。
まぁ、俺はこれもオーソドックスな黒糖味にしたけども。
「で、この注文票を提出と」
……どこに?
目の前にはビュッフェの料理が並ぶ棚しかないが?
どこでもいいのかな?
と、空間の割れ目に記入したタピオカ注文票を置こうとすると。
「うわ」
急に、注文票が虚空に消え。
「え?」
直後に、俺が座っていた客室の座席。
その横にあるドリンクホルダーにタピオカドリンクが出現。
なにこれ凄い。
「ん~、美味い」
早速一口だけど、まぁ、美味い。
ミルクティーの香りとミルクのコク、黒糖タピオカの甘さと俺が思うタピオカドリンクそのまんまの味。
タピオカの固さもいい感じ。
あんまりゴリゴリしたの好きじゃなくてさ。
噛んだ時に、タピオカの中心まで一気に歯が通り、そこで一瞬固くなる、みたいな食感が好きなの。
歯に貼りつく寸前くらいの柔らかさでさ。
このタピオカはその固さを完璧に体現してくれてるね。
「サイズも丁度いいし」
某ハンバーガーチェーン店のSサイズくらいのサイズ感だけど、食後に飲むならこの位が丁度いい。
もちろん、サイズの変更も可能。
よかった、サイズがアメリカ基準じゃなくて。
ちなみにサイズも、S、M、L、川、山、海、チャレンジとか言う謎段階に分けられていたよ。
あんまり飲み物のサイズで地形が出てくることは無いから、逆に海とかのサイズが気になる所ではある。
……これ、人魚種専用で、文字通りタピオカドリンクで泳ぐため、とか言わないよね?
あり得ないと思えないのがやだなぁ……。
「ん……眠くなってきた」
タピオカドリンクを飲み干し、お腹が一杯になったから眠くなった。
実に欲望に忠実な感じだけど、旅なんてぶっちゃけこんなもん。
その時にやりたい事をやりたいようにやる。
というわけで……一時間くらい仮眠しようかな。
おやすみ。




