エルフ仕草
「? あっちにも出入口あったんですね」
「まぁ、あるにはありますがね」
ん? ビオラさんにドワーフ達が入ってきた出入り口の事を尋ねると、なんか歯切れ悪いな。
何かあるのだろうか?
「とりあえず試飲を」
「まずはそれからよな」
「そうだそうだ。飲まねば始まらん」
と、ドワーフ達は店内を気にすることなく試飲をさせろと騒ぎ出し。
店員さんが出した試飲の紙コップを受け取ると一気に口を付けて逆さまに。
……紙コップなんだ……。
俺、グラスで出されたんだけど……。
「うむ! 味がある!!」
レビュー下手かな?
味はあるだろそりゃあ。
「じゃあ、これを十本」
「足りるか?」
「ここ以外でも買えばよかろう」
「そうじゃな!」
で、そのまま会計してドタドタと退店。
……騒がしかったなぁ。
「あちらの出入り口から出入りするお客様には、対応を変えさせていただいているんですよ」
「へ?」
ドワーフ達が出ていったドアを見ていたら、店員さんがそんな事を説明してくれた。
「そもそも、あのドアを使って店内に入ってくるお客は、ドワーフ種と一見の人間種のみです」
「それら以外は、お店の周辺にある魔法案内に従って店上部から来店しますからね」
「……一応聞きますけど、そうやって分ける理由は?」
「店内で騒がれますので。客が店を選ぶと同時に、店側にも客を選ぶ権利がございます」
う~む……。
いやまぁ、そうなんだろうし、異世界の文化とか言われたら納得するけどさぁ。
まぁ、選別というか、お客さんにかけるリソースの分配って事なんだろう。
「ちなみに、あちらから入られた場合、上部から来店されたお客様達を認知することはございません」
「文字通り隔離されてる感じです?」
「概ねその認識で間違いないかと」
徹底してるな。
「あ、ちなみにさっきのドワーフ達が買って行ったのも輝蜜酒ですよね?」
「もちろんです」
「どれくらいの比率のやつを買って行ったんですか?」
気になるよね。
ドワーフがどんな蜜比率のお酒を買って行ったのか。
「買って行かれたのは五分ですね」
「五分……。意外ですね」
「? そうでしょうか?」
五分って事は蜜比率半分って事でしょ?
てっきりドワーフの事だから、蜜比率はもっと低い奴を好むのかと思ってたよ。
ドワーフにはドワーフなりの拘りとかあるんだろうな、きっと。
「ああ、もしや五分をイーブンと同じ意味と思っていらっしゃる?」
「? 違うんです?」
「そのままの意味ですよ? 蜜比率五分。つまり残りの九割五分は酒精ですよ?」
「……はい?」
五分ってそっちか。
五分五分って意味の五分じゃなく、打率とかに使われる五分って事か。
……アルコール分95%? 死なんか? それ。
「炭酸で割ったりするみたいですからね」
ああ、納得。
割る事前提でその比率を買ってるのか。
だったらまだ分かるわ。
「最近ではウイスキーで割るのが流行っているとか?」
いや、割れよ。
それは割ってるって言わずに掛けてるって言うんよ。
もしくは混ぜてる。
あれか? ウイスキーの方がアルコール度数が低いから、結果的に総アルコール度数は下がってるって主張か?
ウイスキーですら何かと割って飲んだりするのに、そのウイスキーを割り材に使うな。
全く、これだからドワーフは。
「あと、彼らは他のお客様に絡んだりしますので」
「隔離する理由については納得しました」
あまりするつもりなかったのにね。
聞けば聞くほど他の人と一緒にしちゃダメだなって思うわ。
「御厨さま」
「?」
「そろそろ出発のお時間が迫っております」
「あ、もうそんな時間」
お店の人からドワーフの事聞いてたらいつの間にか時間が経っちゃってたや。
じゃあちょっと急いで輝蜜酒買うか。
「蜜比率6割のやつを一本お願いします」
「かしこまりました」
「あ、それと――」
「?」
「このお酒に合うおつまみ、教えて貰えません?」
*
「もうすぐ出発です」
「次はお昼まで移動なんだっけ?」
「そうですね」
無事に輝蜜酒を購入し、ついでに合うおつまみも教えてもらい。
買ったお酒を持ったまま、ビオラさんの転移魔法によって客室へと到着。
移動時間が無いってマジで素晴らしいな。
「お帰りドリンクやお帰りショコラ、お帰りピザがございますが?」
「さっき食べたばっかりなので遠慮しておきます」
「さようでございますか」
お帰りドリンクってなんだよ。
麦茶とか牛乳とかか?
あと、お帰りピザはなんかもうツッコむの疲れた。
無視で。
「……そう言えばビュッフェがあるとかなんとか」
「ございますよ? 食べられます?」
「何があるか見るだけみたいなーと」
列車内にビュッフェがあるのって結構珍しいと思ってて。
どんなものだろうと思っていたら。
「こちらになります」
と、指パッチンするビオラさん。
そして、
「えぇ……」
俺の目の前でヴン、と音を立て、空間がひび割れまして……。
ひび割れた空間から、様々な料理がこちらを覗く。
「現在はブランチ用の食事と、軽食や紅茶、コーヒーと合うデザートの提供が行われています」
「ここから好きに取っていいの?」
「もちろんでございます。あ、取り皿はこちらをお使いください」
そう言ってどこからともなく現れたお皿を受け取り、割れた空間から覗く料理を一通り確認。
そうして目についた、とある物に手を伸ばす。
「牡蠣なんて久しぶりだなぁ」
それは、プリプリとして光り輝く、切ったレモンの添えられた牡蠣だった。




