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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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11/30

弓と斧の仲

「そう言えば、紅茶やお酒なんかもあるんだっけ?」


 市場を見て回りながら、ビオラさんが事前にしてくれた説明を思い出す。

 世界樹に生えた葉の紅茶とかなんとか言ってたような……。

 世界樹の葉の紅茶、じゃなく、世界樹に生えた葉の紅茶なんだね。


「輝蜜酒や時間茶の事ですね」

「……両方詳しく」


 気軽に気になる言葉を発さないで欲しい。

 聞きたくなっちゃうから。


「輝蜜酒は世界樹の樹液を加工して作ったお酒になります。蜜の比率が低いほどあっさり、スッキリした味わいになり、蜜の比率が高いとこっくり甘いお酒になります」

「人気的には?」

「ドワーフ連中は蜜比率低めを、獣人族は逆に蜜比率高めを好む傾向にありますね」

「なるほど……」


 エルフも居るんだ、ドワーフも居るか、そりゃあ。

 獣人もまぁ納得。

 獣人が主催するツアーとかもあるんだろうか?

 勝手なイメージ、獣人は野蛮というか、野性味あふれる姿のイメージが強いが。


「時間茶についてはそのままの意味で、世界樹に根を張る植物の中で、朝、昼、夜、それぞれに花を咲かせる植物の葉を加工したものです」

「……つまり、『時間茶』というお茶ではなく、『時間茶』の中の『朝』という紅茶とかになる?」

「その通りでございます。それら全てを合わせて『時間茶』と呼んでおります」

「なるほど……」

「ちなみに食事に合わせることが多い事から、朝や昼ではなく、朝餉(あさげ)昼餉(ひるげ)と呼ばれる事がほとんどですね」

「ほぇー」


 ……いや味噌汁!!

 違うけど! 本来は正しい意味だけど!!

 もう今の日本人に朝餉(あさげ)って言うと間違いなく味噌汁が連想されるのよ!!

 ウェルカムドリンクと言い、紅茶と言い、なんでエルフの飲み物はみそ汁に結びついてくるんだ!!


「試飲とかって出来ます?」

「冷やかしでなければ快く可能ですよ」


 いやまぁ、そりゃあそうだろうけれども。

 でもなぁ、飲んだ結果口に合わないとかありそうだしなぁ。


「ちなみにこの世界の人間も時間茶って飲むんです?」

「飲みますよ? というか、時間茶の卸先は人間相手がほとんどです」

「なるほど……」


 この世界の人間が飲んでるって言うんなら、口に合わないって事も無さそうか?

 少なくとも、炭酸味噌汁よりは喉を通るでしょ。


「時間茶のお店に案内して貰えます?」

「かしこまりました」

「その後に輝蜜酒のお店に」

「そうしますと、そのお店で見て回るのも最後となりそうですが……」

「結構楽しめたし大丈夫です」

「かしこまりました、では案内しますね」


 という事で、時間茶を取り扱うお店に案内してもらい……。


「美味しい」


 現在、時間茶を試飲中。

 現在飲んでるのは朝餉。味噌汁ではない。


「霜の降りた日に収穫することで、茶葉にギュッと甘みが詰まっております」

「ですね、砂糖いらずです」


 朝餉の味なんだけど、馴染みのある紅茶って感じ。

 ただ、紅茶自体に甘味が結構あって、砂糖入れなくても十分に甘い。

 香りに関しては桜みたいな香りがする。

 スコーンとかと合わせたいな。この紅茶なら。


「続いて昼餉です」


 ちなみに試飲はお猪口サイズの小さなカップでさせて貰ってる。

 あるんだねぇ、そんなものが。


「一転して香ばしい」

「甘さもありませんし、気分転換にピッタリの茶葉となっております」


 さっきまでの朝餉と違って、一転して香ばしさが凄い。

 黒豆茶みたいな、スッキリした飲み口に強い香ばしさ。

 飲んだ後も香ばしさの余韻がしばらく残ってて、これは煎餅に合うな。

 後はおかきとか、あられとか。


「これも美味いですね」

「ドワーフが特に好む茶葉ですね」

「ドワーフも紅茶なんて飲むんですねぇ」


 てっきりお酒ばっかり飲んでるものと思ってたから、何の気無しに口を出たその言葉に。

 ビオラさんと、お茶屋の店員さんが顔を見合わせクスリと笑い。

 何やら奥に消えていく店員さん。

 どうしたんだろう。


「御厨さまの先程の発言が気に入られたようですよ」

「? 何か言いましたっけ?」

「酒のみのドワーフに紅茶の味が分かるもんか、と」

「言ってませんよね!?」


 気軽に発言を捏造するな。

 言ってないわ、そんな事。


「昔ほど仲が悪いわけではありませんが、やはりエルフとドワーフは昔から確執がございますので……」

「俺の発言をドワーフ下げと捉えて機嫌が良くなった、と?」

「ドワーフ下げというか、エルフも思っている事なんですよ。ドワーフが紅茶を飲むのか? と」


 何だろうな、俺の発言の場合はそのままの意味で、単純にドワーフが紅茶を飲んでる絵面が想像出来ないって話なんだけど。

 ビオラさんとかの言ってる意味って、ドワーフが紅茶の味や香りを理解出来るのか? 位まで含めてそうなんだよな。

 これ以上この話に首突っ込むの止めよ。


「お待たせしました、こちら夕餉になります」


 なお、店の奥に消えた店員さんが何をしてたのかと思ったら、試飲用のカップがお猪口サイズから通常サイズに代わってました。

 しかもこう……なんて言うの? アフタヌーンティーとかで使われてそうな紅茶のカップ。

 どれだけ俺の発言を気に入ったんだよ。


「……おー……」

「エルフにはこちらの茶葉が一番多く買われていますね」


 と説明を受けた夕餉の味わいは……。

 チョコとか、ココアっぽい風味のあるフレーバーティー的な感じ。

 いや、チョコとかの香りの後にしっかりと紅茶の香りが来るな。

 でも甘さは感じない。マジで香りだけチョコって感じ。

 あと、紅茶自体の味がかなり長く続く。

 これも美味い。


「今試飲したやつ三つとも下さい」

「お買い上げありがとうございます」

「客室に送る他にも、ご自宅に送ることも可能ですが?」


 飲ませてもらった三種の茶葉はどれも美味しかったので、三つとも購入。

 そして、ビオラさんのありがたい提案を受け、荷物を増やすことなく旅行を楽しめることに。

 ――後日、思ったよりも茶葉の値段が高く、カードの支払いを終えた母親からの久しぶりの電話で長々と説教を受けたのでしたとさ。

 ちなみに電話での第一声は、


「そろそろ死ぬか小僧?」


 でした。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。  わかっているのに、どうしても異世界トラブルツアーと認識してしまいます。
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