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異世界トラベルツアー  作者: 瀧音静


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ここどこですか?

本日より投稿開始、毎日更新に努めます。

なお二月中は毎日二話投稿を予定しております。

 早朝五時。


「さっむ」


 スマホの画面に表示された集合案内をチラリと見て、間違いない事を確認。

 白い息を吐きながら、指定されたクルーズターミナルへ。

 ――というか、開いてるのか? 早朝五時だぞ?

 普通こういう所って、朝九時とか、常識的な範囲でしか開いていないのでは……?

 いやでも、指定はされてるしなぁ……。

 と、あまりにも早い時間に指定されたせいで、前日の夕方に前乗りし、近くのネカフェで仮眠。

 こうしてやって来たわけであるが……。


「……明かりはついてるな」


 クルーズターミナルに明かりがついている事を確認し、中に入ると……。


「ミステリーツアー参加のお客様ですか?」


 と受付に声をかけられる。


「はい」

「番号を確認出来るものをお願いします」


 そう言われ、スマホの画面を受け付けの人に見せると……。


「確認しました。お客様の乗船チケットはこちらです」


 と言ってチケットを渡され、


「ご乗船はデッキ一番奥となっております」


 そう言って案内される。

 言われた通りに一番奥まで荷物を引きながら歩いて行って……。

 そこで、俺の意識は暗転した。



 ミステリーツアー。

 それは、当日チケットを発行するまではどこに向かうか分からない、いわゆる『ガチャ』要素の旅行である。

 文字通り行き先は運であるが、普段行かない場所や食べない物、見ない景色などと巡り合えるチャンスでもあり、割と人気なツアーとなっている。

 とはいえ、完全ランダムであると、予定していた日数を余裕でオーバーしたり、逆に足りなかったりという事が起こり得る。

 そこで、ある程度の期間……例えば、三泊なら三泊する日程のツアーからランダムで選ばれるようになっている。

 今回俺が参加したミステリーツアーは一泊二日のショートツアー。

 船でショートツアーというのはそんなに無さそうだが、離島で一泊して帰ってくるプランを想定していた。

 ――のだが、


「えぇっと……ここどこですかね?」


 何故か目の前には列車。

 そう、列車である。

 どう考えても俺の記憶で思い出せるのはクルーズターミナルの景色であり、クルーズターミナルなのだからそこで乗るのは当然船なのだが……。

 目の前には列車、訳が分からない。

 そして……、


「楽しみだねー?」

「ねー!」

「食事が美味しいと聞きますから、期待してしまいますね」

「そうじゃのう。ふぉっふぉっふぉ」


 という、聞いただけならば何の違和感もないこんな会話も……。

 話しているのが背中に翼の生えた人やら、耳の長い人たちやらだと話は別だ。

 映画のセットか何かで?

 あ、耳が長いってのは耳たぶじゃないよ?

 耳の上側が長い。

 ハッキリ言うなら、エルフとかって呼ばれる空想上の生物のそれである。


「チケットを」

「え、あ、はい」


 自分の置かれた状況が呑み込めず、ただボーっと突っ立ていた俺に、バッチリ車掌です! と主張するような服装の人……違うな、この人も耳が長い。

 エルフだな。

 車掌エルフが声をかけて来て。

 手にはあの……なんて言うか、切符に穴開けるやつ? を持ってるんだけど、


「これ……ですよね?」


 俺が見せたチケットを確認すると、やや驚いたような反応を見せ、


「先頭車両へどうぞ」


 と促された。


「どうも」


 と言って軽く会釈し、一歩を踏み出そうとした瞬間……。

 ギュンッ!! と、視界の端に移る景色がただの色のついた線になり……。


「え?」


 いつの間にか、先頭車両へ。

 いや、マジで、何が起こったの?


「ようこそ。『御厨(みくりや) (ただし)』様でいらっしゃいますね?」

「え、あ、はい」

「お待ちしておりました。客室へと案内させていただきます」


 そう言ってお辞儀をし、いつの間にやら俺の荷物を持っていた乗務員エルフは。


「本日は、我々エルフ族が主催する世界樹クライムツアー、三泊二日の旅にご参加いただき、誠にありがとうございます」

「……へ? なんて?」


 今、なんか訳が分からない単語が聞こえてきたような……?


「我々エルフ族が主催する世界樹クライムツアー、三泊二日の旅、でございますが?」


 ございますが? ではなくて。

 いやあの、三泊してたら四日では?

 二日って、泊まる日数に対して経過する日数が変ですわよ?

 もしかしてエルフって計算が出来ない?


「ああ。もしかしてではございますが、ツアーの詳細を把握されていないのでしょうか?」

「あ、すいません。そうです」


 なんてったって当日まで内容不明のミステリーツアー参加者ですからね。

 いやそもそも、ここいずどこ。


「では、そちらの説明をさせていただきますが……とりあえずは客室へとどうぞ」


 そう言って、再度促される。

 まぁ、従うしかないか。

 乗務員エルフに付いていき、案内されたのはなんと言うか……高級寝台列車の一室というか……。

 俺が知る高級寝台列車の一部屋を、更に倍にした程度の間取りの部屋と言いますか……。

 でっかい。純粋に。広い。

 一応趣味が旅行で、そういった旅行関係の動画とかを見漁ったりしてるんだけど……。

 正直、ここまでの広さの客室の旅行列車は海外含めて知らないかも……。


「では改めまして、私は今回のツアーにおいて御厨さまを担当させていただきます『ビオラ』と申します」

「はぁ」

「何かお困りのこと、あるいは尋ねたい事ございましたらお呼びいただければすぐに駆け付けます」

「はぁ」

「では、今回のツアーに付いて説明させていただきます」


 部屋の広さ、装飾の煌びやかさ、ベッドの大きさと、旅をする上で欠かせない事を確認していたらほぼ生返事状態。

 でも、ビオラさんはそんな俺に嫌な顔一つせず、にっこりと微笑みながらツアーの内容を教えてくれるのだった。

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