表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
卑屈令嬢と甘い蜜月〜自己肯定感ゼロの私に、縁切りの神様が夢中です〜  作者: 永久保セツナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/34

第23話 帰るべき家

 一方、中國トウマは、気絶した令嬢を連れて高天原家に戻る。


「なにぃ!? 娘を神社から連れ戻してきただと!?」


 彼の報告を聞いて、コノハの父は目が飛び出そうなほど仰天していた。


「はい、きちんとお嬢様を助け出してまいりました!」


 眠らせたコノハを元気いっぱいに見せて、自慢げに眷属をどうやっつけたか話すトウマを見て、コノハの父は忌々(いまいま)しい顔をしていたが、トウマが気づいていたかどうか。


「……そうか。あいにく、コノハの部屋は嫁入りしたときに物置にしてしまって、今は使える状態じゃない。トウマくん、君の部屋に寝かせておいてくれないかね」


「承知いたしました。またコノハお嬢様と一緒に生活できると思うと楽しみです」


 トウマが立ち去ったのを見届けると、コノハの父は頭を抱えてしまった。


「頭が痛くなってきた……。コノハを連れ戻した、だと? 冗談じゃない、葦原命主にこのことを知られたらどうなるか……。この家は呪われるかもしれん。なんとかあの神様にバレないうちに葦原神社に戻しておかないと……。トウマのやつ、とんでもないことをしでかしてくれたな……」


 うごご、と頭痛に悩まされ、うなり声をあげるコノハの父。

 トウマは義父の言う通りに、自室に布団を敷き、コノハの身体を横たえた。

 そして、彼女の顔の火傷を見て、痛ましい顔をする。


「コノハ……可哀想に、こんなひどい顔にされて……」


 指先でそっと火傷の痕に触れると、ビクッとコノハの身体が震え、勢いよく飛び起きた。


「ああ、コノハ、目を覚ましたのか。よかった」


「トウマさん……? ここは、まさか……」


「ああ、君の家だよ。これから、また生まれた家で暮らせるんだ」


 コノハは顔面蒼白になって震え上がる。


「か、帰して……葦原神社に帰してください……!」


「何を言っているんだ? ここが君の帰るべき家だろう」


 トウマはこの高天原家で起こった事件を何も知らない。

 だから、高天原家がコノハの帰還に困惑していることも関知していないし、コノハがなぜ、こんなに怯えているのかも理解できない。

 彼は、コノハを説得して、いかにあの神様が危険な存在かを説明し、「縁切りの神様なんてろくなものではないから、別れたほうがいい、あの頃のように一緒に高天原家で暮らそう」と勧めた。


「そもそも、神様なんてのは人間が関わってもろくな目にあう連中じゃない。ギリシア神話を昔読んだならわかるだろう?」


 しかし、当然ながら彼女は首を縦には振らない。


「ミコト様とはすでに婚姻しておりますし、夫婦の契りも交わしております。私はあのお方を愛しているのです。どうか、もう私には構わないでください」


 トウマは、「夫婦の契り」という言葉に、顔を曇らせていた。

 おおかた、コノハがミコトに洗脳されているとか、そういった考えに至っているに違いない。


「コノハ、昔、僕が言ったことを覚えているか」


 トウマは優しい眼差しを向けて、コノハの両手を自身のそれで包みこんだ。


「僕は何があっても君の味方だ。君のためならなんでも力になる。だから、正直に話してほしい。僕が絶対に助けるから」


「いや、だから……」


 トウマは思い込みが激しいらしく、コノハの話をろくすっぽ聞いてくれない。

 彼女が「ミコトに脅されている、助けてほしい」というまで、ずっとこの問答を続けるのだろう。

 どうしたものか、と悩んでいると、使用人がトウマの部屋へやってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ