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余談:とある蛇の気持ち

リアクションやブックマーク、本当にありがとうございます。

誤字報告も助かっております、感謝です。

僕は蛇型の魔獣として生まれた。

気が付いた時にはポツンと森の中に居たから仲間が居るのかとかも解らない。

でも森には多くの魔獣や魔物が住んでいたから別に寂しいとも思わなかった。

仲が良い訳ではないけれど襲われる事もなかったから気にする必要も無かったんだ。


ある日 人間達に襲われてる熊を見つけた。

僕達魔獣は縄張りを守るとか空腹を満たすとか理由がある場合にしか攻撃をしない。

でも人間は違う。

空腹でもなく、自分達の縄張りでもないのに自分達と違う種だって理由で襲ってくる。

熊は魔獣では無かったけど親子連れだった。

特に害も無いのに何故人間は種が違うと言うだけで襲ってくるのだろう。

僕には理解できなかったし、親子連れを狙うのは卑怯だと思う。

だから僕はこの熊の親子を助けようと思った。

だって魔獣ではない普通の熊なんて、とても()()()()()()んだから。


僕はスルスルと樹から滑り降りて人間達にそっと近づく。

本当は首を狙うのがいいんだけど、人間は大きいから僕だと登らなきゃ届かないんだよね。

今は急いでいるから踵でいいかな。

口を大きく開ければ細くて長い毒牙がひょこっと現れる。

せーのっ、かぷっ


「いってぇ!」「なんだ」「どうした」「げっ」「ぎゃぁー」


人間達は騒ぎ出した。うるさいなぁ。

僕が噛んだ人間はすぐに絶命していた。

他の人間達は僕に向けて魔法を放ったり剣で切りつけようとしたりしてくる。

僕は体が小さいけどスピードには自信がある。

ひょいひょいと避けながら思った。

森の中で火魔法を放つとか馬鹿なんだろうか、馬鹿なんだろうな。

草木が焦げる臭いがする。

うーん、さすがに複数の人間を相手にするとちょっと疲れちゃうな。

残念ながら僕は水魔法が使えない。どうしよう、このままだと火事になっちゃうよ。

悩んでいたらブンブンと羽音が聞こえた。

あ、この羽音は主さんだ。

主さんは普段は温厚でとても優しい。だけど怒ると凄く怖いんだよね。

僕は熊の親子に逃げるよう促す。

人間達は僕に気を取られているから今がチャンスだよって。


僕はウロチョロと走って人間達の注意を引き付ける。

きっと人間達は主さんに気が付いていない。

主さんと目が合った。


『 愚かなり 人間 』

「ぎゃぁ」


主さんの声と人間の悲鳴が同時に響く。

人間達は魔蜂に囲まれ無残にも切り刻まれていく。

それと同時に主さんが魔法で火を消して行く。

さすが主さん、すごいや。


『 おちび 頑張ったな 』


そう言って主さんが僕の傷も癒してくれた。

自分では気が付かなかったけど火傷をしていたみたいだ。

感謝を込めて頭を下げた。 ぺこっ


そう言えばあの熊の親子は無事かな。

怪我とかしてないかな。

僕は熊の親子の無事を確認しようと思った。

主さんと別れて森を彷徨う。

河の上流で姿を見つける事が出来た。

親熊は河で魚を獲っている。疲れて無いのかな、大丈夫かな。

子熊は少し離れた木陰で体を丸めていた。

あ、少し怪我をしているじゃないか。

僕は薬草を探してきて子熊の傷口にペタリと張り付けた。

これで大丈夫。後はお腹いっぱい食べてゆっくり眠ればすぐ治るだろう。

ああ、そうか。親熊はこの子熊に元気を出してもらおうと魚を獲っているのか。

僕は少しだけ羨ましくなった。

僕の親も、もし一緒に居て僕が怪我をしたらこうやってお世話をしてくれたんだろうか。


しばらく様子を見ていたら人間達の気配がした。

また人間か。

僕は樹の上に登って様子を見る事にした。

熊の親子を襲うようなら僕が追い払ってやる。


そう思っていたのに。


バジ『 クォーケッ ケケケッグォックォ?』(通りたいんだけどいい?)


熊 『 グァ? グォガグァ 』(痛い事しない?)


バジ『 クォッケ ゲケッグォ 』(しない。心配ない)


熊 『 クゥオン グァグォ 』(魚横取りしない?)


バジ『 クォッケクォッケ クォーケッコゥ 』 (しないしない、通るだけ)


熊 『 オンオン クゥー 』(じゃあいいよ)



人間達と一緒に居たバジリスクが熊と会話した。

なんで人間と一緒に居るんだろうとかなんで熊と会話ができるんだろうとか不思議だったけど、危害を加えないみたいだからそのまま様子を見続けた。

河を渡り終えた後1人の人間がそっと地面に木の実を置いていた。

なんで木の実を置いているんだろう。まさか毒でもあるんじゃないだろうな。

僕は人間の姿が見えなくなってから木の実を確認した。

毒は無かった。

うーん、僕が考え込んでいるとさっきのバジリスクが戻って来た。


『 河を通らせてもらったからお礼だって言ってた 』


河を通らせてもらったお礼?

僕にはその人間の行動が理解出来なかった。

人間て僕達を見かけたらすぐ襲ってくると思ってたから。

だから僕は興味を魅かれて木の上からこっそり付いて行ってみる事にした。


人間達は特に騒ぐこともなく、獣や魔獣を襲う事もなく黙々と歩き続けている。

冬ごもりの巣穴でも探しているのかな。

後方の銀髪の人間が時折木の実を採っているみたいだけど、時々熟してない実が混ざっている。

あの人間はこういった事に不慣れのようだ。

オレンジ色の熟した実に手を伸ばして、あ!食べちゃった。

それ誰も食べない渋柿なんだけど・・・

あぁぁ、ほら吐き出してる。

人間にもああゆうオマヌケさんが居るんだ。

僕は益々興味を魅かれた。


その後も木の上を移動しながら付いて行ったんだけど、スルッと足を滑らせてしまった。

足は無いんだけどね、蛇だし。

ポトリと落ちたのは、あの木の実を地面に置いた人間の背中にある荷物の上だった。

どうしようこれ。

銀髪の人間と目が合った。


『 小首をかしげて目を潤ませる 』


え?・・・


『 人間に敵意は無いと示すのにはこれがいいと聞いた 』


バジリスクが話しかけて来た。

そうなのか、うん解った。やってみるね。

小首をかしげて 目をうるるんっ


銀髪の人間が金髪の人間を呼び寄せて2匹で困惑してるみたいだった。

やがて荷物が降ろされて、木の実を置いた人間と目が合った。


何か言ってるけどごめんね。僕人間の言葉は解らないや。

この人間からは敵意も害意も感じない。

優しく見つめる目が輝いて見えた。

僕に手が伸びて来て身構えたけど、そっと優しく掴んで自分の手の上に乗せてくれた。

僕に手を伸ばして触る人間なんて初めてだ。

ちょっと嬉しくなってスリスリしてみた。

この人間も嬉しかったみたいだ。

でも他の人間に何か言われたのかな、残念そうな顔になって僕を森の中に放してくれた。

だけど僕はまた木に登ってこっそりと付いて行った。

だって気になるから。もっとこの人間を観察してみたかったんだ。


次の朝人間達が起きて動き出すと、初めて嗅ぐ匂いがした。

気になって仕方がなくて。誰も見ていない時に匂いの元へ近寄って見た。

くんくんっ

なんだろうこの真っ黒な水は。


『 飲んでも大丈夫 』


バジリスクが飲んで見せてくれたので僕も飲んでみる。

ごくっ

なにこれ!初めての不思議な感覚。

全部のんだら駄目だろうなぁと思っても止まらなくて、気が付けば飲み干していた。

見つからない内に隠れようと思ったけど遅かったみたい。

木の実を置いた人間と目が合っちゃった。

えっと・・・

取り敢えず小首を傾げて敵意はないよと伝えてみる。

ゲフッ

あ・・・

これ、僕が飲んだってばれちゃったよね。怒られるかな・・・

そっと目を逸らしたけど緊張してシッポが動いちゃう。

むぎゅっ

人間が僕の顔を掴んで口を強引に開いた。

驚いていたらそのまま指を奥まで突っ込んできて・・・

やだやだ、せっかく飲んだのに吐いちゃう!

僕は必死に人間の指を押し出した。 ぺっ

人間は困ったように何かを言っている。

そして溜息をつくと僕に何かを言って森の中に放した。

よし、この人間の顔と匂いは覚えたし、またね!


僕は満足して森の中を進んだ。また会えるといいな、あの黒い水おいしかったし。

と思ってたら次の朝また遭遇した。

やったね!あの黒い水はあるかなぁ。  あった!

ごきゅっ ごきゅっ おいしぃー!


「ゲフッ」

「 ・・・ 」


銀髪の人間と目が合った。

なんだかプルプルと震えてるけど寒いのかな?

ガシッと掴まれてぐらぐらと揺さぶられた。

おえぇーっぷ。

なんだか凄く必死だったから、この人間にとって黒い水は大事な物だったみたい。

ごめんね? でも僕もこれ気に入ったから吐くのは嫌だった。

他の人間がなんとか銀髪の人間を落ち着かせてくれたけど、あの木の実の人間は僕を連れて森へと入った。

何かを言っているけどやっぱり僕には理解出来なくて。

それでも表情が凄く心配しているのが解ったから僕はここでお別れをする事にした。

もっと見て居たかったし、この人間の群れの事も知りたかった。

僕達魔獣を、見かけただけで襲ってくる事は無かった珍しい人間。

もしかしたら、仲良くなれたりしたのかな。

少し寂しくなってトボトボと森を進む。


ガシッと首を掴まれた。

しまった、ボ~っと考え事をしてて反応が出来なかった。

食べられちゃうのかな。うん、それも仕方がないかな。

楽しい経験も出来たし、美味しい黒い水も飲めたし。

なんて考えてたのに。


『 気に入ったのなら付いて来い 』


フワフワの羽の中に僕を突っ込んだ。

え? さっきのバジリスク?


『 羽に隠れていればバレない! 』


フフンと笑うバジリスクが僕を迎えに来てくれたみたい。

僕一緒に行っていいのかな。

悩んだのはほんの少しで、僕は嬉しくなってスリスリした。

人間達に見つからないように、静かにしてたよ。

黒い水も我慢したよ。でも匂いを嗅いだら涎でバジリスクの羽が濡れたのは内緒だ。


そのまま何日か移動を続けて、到着した場所には獣人達も居て人間達とも親しそうだった。

僕は新たな好奇心が湧いたけど、しばらくはそっと隠れて居ようと思う。

驚かせないように。

そしていつかバジリスクみたいに会話が出来るようになったら

『 友達になって 』と言ってみよう。

その日が来るのを楽しみに 僕は眠りについた。




サブレ『モモ!勝手に連れてきたら駄目でしょ!』

モモ 『だって小さいしかわうそだった』

クッキー『カワウソ?』

ビスキュイ『それを言うならカワイソウじゃない?』

クッキー『ああ、かわいそうだったのね』

サブレ『マォは知っているのかな』

モモ 『マォにはまだ内緒』

クッキー『内緒って・・・』

ササミ 『どうせこれから魔獣も増えるだろうしいいんじゃなーい?』



そうして魔獣達はコッソリホワイトマンバの飼育を始めるのであった。

なお、マォ達がホワイトマンバの存在に気付くのは1年と少し経ってからである。


「ぬぉっ、私のコーヒーがぁ!!」

「またお前かぁぁぁ!」

「てかどっから湧いて出て来たよ!」


「ゲフッ」


何気にお気に入りなマンバくんのお話でした(笑)

読んで下さりありがとうございます。

また気が向けば小話などを・・・書くかもしれません。

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