面接四~六組目
面接二日目、今日はマトモな人達だといいなぁ・・・
そう思いながら面接会場の隣室に待機して資料を眺める。
まぁこの資料も当てにはならんのだがね。
うーん、有能な諜報員とか暗殺者とか欲しいなぁとは思うが小説じゃぁあるまいしそんな都合よく居る訳でもなく・・・
王家の影とかおらんのかね?・・・
居たら苦労はせんか・・・はぁ。
本日の一組目。19歳の騎士爵、独身者。
ん? 若くね? そして見た目がなんというか厳つい。
いや顔の作り自体は綺麗なんだけど、ざっくりと大きな傷跡が・・・
3本の爪痕みたいなのがあって子供は泣きだしてしまいそうな?
なんで見えるのかって、マジックミラーじゃないよ?
覗き穴があったんだもんよ・・・
「お久しぶりですアルノー殿」
おや?アルノーと知り合いか?
「君は確か・・・何度か戦線で一緒になったか」
へぇ。戦場に出向いた経験があるんだその若さで。
これはちょっと期待が出来るかも?
話を聞いていると彼はずっと南の国境付近で任務に当たっていたらしく、その間に父親である準男爵があれこれとやらかした。まああれよね、アレの派閥だったって事よね・・・
彼からすればアレがおかしいのは一目瞭然なのに何故にアレの派閥に入ったのかと。彼は勿論の事、母親と妹も知らなかったらしくてそりゃもぉオカンムリだそうで・・・
気持ちは解らんでもない・・・
父親以外の家族で話し合った結果
「貴方は騎士として優秀なのだからその力を招き人様の為に役立てなさい。
こちらの事は心配しなくてもしっかりと監視しておくから任せなさい」
と言われたらしいし、彼自身も以前共に戦った事がある獣騎士団の事が気に掛かっていたらしい。
「ちょっとした家屋修理くらいなら出来ますし
頭を使うのは苦手ですが体を動かす事なら任せて下さい」
家屋修理が出来る・・・それは助かる。
オルガ達に任せきりなのも申し訳ないしね。
ルークがチラリとこっちを見たので儂も会ってみる事にする。
会ってみればやっぱり好青年、というか彼の母親が素晴らしいんだろう。
上に立つ者ならば下の者の苦労を知らねばならぬと、小さい頃から畑仕事も家の掃除もやっていたそうだ。ただ料理は1度やったら「料理は壊滅的ね・・・」と言われ二度と台所には近寄らせて貰えなかったらしい。裁縫もせめてボタンくらいはつけれるようになりなさいと言われたらしいが、これも壊滅的だったらしく。笑ったら悪いなと思ったけど・・・肩がプルプルした。
そんな母なので今頃父はしごかれていると思いますよと彼は笑っていた。
うん、彼は決定だな。ルークも宰相も穏やかな顔で微笑んでいるし。
本日の二組目、まぁ昨日から数えたら五組目?
ブフォッ
隣室でお茶を飲んでいて吹いた。
え? 侍女長?・・・ 侍女長って王族だったの?!
そういや名前知らんかったし・・・
ルークも宰相も平然としてるって事は知ってたんだな?
だったら前もって教えてくれよぉぉぉぉ。
アルも知ってたんかな? あ、顔が引き攣ってるって事は知らなかったんだな。
「こちらのリストをどうぞ。
そこに名が挙がっている者達は皆王妃様に忠誠を誓った信頼出来る者達です。
またこの侍女はスェイキョウ商会の家の出でして、諜報活動に優れております。
そしてこちらの侍従ですが実家が薬師の家系でして有用かと。
後は菜園職員のクルシカさんも有用かと。
現在は王妃様が保護されており、王妃様専用の菜園で働いて貰っております。
彼、野菜作りの名人ですよ」
侍女長優秀じゃん!最初から侍女長に聞いたらよかったんじゃね?
あの報告書つくったヤツよりかなり優秀だよ?
そしてシカさんの名前がでてびっくり。
別れの挨拶も出来なかったからなぁ、今どうしてるんだろうと気になってたんだよね。
これはもう文句無しというより、こちらからお願いしたいくらいの人材じゃないか。
そして本日ラストの三組目。トータルして六組目。
20代の夫婦と幼子が1人。
どうやらここも奥方の方が強そうだ。
「私の父がアレの派閥の筆頭でしたの・・・
主人は気が弱くて父の言いなりになっていたようなのですが・・・
子に恥ずかしくない父でいるようにと言い聞かせまして。
私、幼い頃より父が嫌いでしたのよ。
自分の子供達ですら駒としてしか見ておらず、使用人や領民も物の様な扱いで
私から大切なものはすべて取り上げてしまって、友人ですら・・・
いえ、私の事はこの際いいのです。
招き人様に対しての悪態や暴言がゆるせませんの。
同じ女性として母として。子に会えなくなることがどんなに辛い事か。
アレの言動も諫めるどころか同調するなどクズですわ!クズ!
あ、それでですね、こちらをどうぞ。
アレの派閥の相対図とお金の流れが纏めてあります。
主人に纏めさせました。
これでも記憶力は確かな人なのでどうかご活用下さいませ」
いや驚いたよね本当に。
女性陣有能な人が多くないか?・・・
この女性がしっかり手綱を握っていれば旦那さんの方も大丈夫そうだ。
奥方がしっかりと権力の波に飲み込まれるな、流されるなと言い聞かせて離婚をチラつかせて脅したらしい・・・
奥方の事も子供の事もしっかり愛しているので、これからは自分で考え地に足を付けて頑張るそうだ。
しかもこの夫婦、身分を隠してあちこちに出掛けて平民の暮らしぶりを知る事にしたそうだ。
「実際に農作業を手伝ってみてその苦労とありがたみも解りましたし。
今の私共には何が出来るのかお手伝いできるのは微力でしかないかもしれません。
ですが新しい1歩を踏み出さなければ何も変わらないと思うのです。
あの父のお陰で忍耐力だけはあります。
微力ではありますが招き人や民の一助となれればと希望したのです」
「言葉での謝罪は薄っぺらく感じるでしょう。
これからの私の言動を持って償いたいと思うのです。その機会をいただけませんか」
お? 初めてしゃべったよ旦那さん。
確かに言葉だけの謝罪とかいらんわなぁ。
この旦那さん根は悪い人じゃなさそうだよね。
こんな感じで今日の三組はいい感じだった。
夜は当然の如く、報告会と言う名の愚痴大会だった。
特に陛下のうっぷんが凄かった・・・
「あいつ等のせいで俺の頭頂部が寂しい事になってきてるんだ!
あいつ等なんぞ禿てしまえ!」
「そうだそうだ。俺達の髪を返せー!」
気にするのそこなんだ(苦笑)
読んで下さりありがとうございます。




