面接三組目
「先日はご不快な思いをさせてしまい誠に申し訳ありませんでした」
三組目の面接は謝罪から始まった。
時代錯誤な偏見と選民意識を持ったままだった己を悔いていると謝罪してきた訳なんだがね。
儂等に謝罪されてもね? 被害を被った本人達にして欲しいもんだ。
この貴族家は老夫婦の2人だけ。もっとも老夫婦と言えども儂よりは若いんだが見た目がね?
ただやっぱり高齢なだけあって、なかなか昔ながらの考え方が抜けきらないようだ。
本人は無意識なんだろうけど、言葉の端々に女性蔑視が見て取れるんだよ。それに平民に対してもだし獣人に対しても・・・
形だけの謝罪はいらないし、活かされない反省はしてないのと同じ。
申し訳ないがこのご夫婦を受け入れるのはちょっと無理かなと思う。
「今から自分の身の回りの事を自分でするのはちょっと・・・
ほら齢が齢ですしねぇ?」
「平民に混ざって畑仕事などとんでもない。私は元文官なので」
「貴族が厨房に立つなどとんでもない」
「貴族たるものうんぬんかんぬん」
うん、こいつめんどくさい。
そんな考えで何故に辺境に来ようと思ったのか不思議過ぎる・・・
「そもそも招き人様も尊き存在なのですからもっと貴人らしくあるべきで」
と始まったので切れてしまったよ。
「先程の貴殿の謝罪は建前と言う事か。貴族貴族と偉そうに。
民無くして生活は成り立たんしそないに偉いと言うならば
そのまま貴族社会に身を置けばよかろう。
大体だな?貴様が努力し実力で得た爵位か?違うよな?
貴様の先祖が努力して得た爵位だろう。
それに胡坐描いて甘い汁だけ吸って生きて行こうなんざ他でやってくれ。
阿呆臭い、時間の無駄だったな。どうぞお引き取りを」
「なっ・・・無礼な」
ウダウダ言い始めそうだったので外に引きずり出した。宰相が・・・
「なんとも情けない。貴族としての矜持がここまで廃れておるのか。
この様な者ばかり相手をしておれば兄上も陛下も頭が寂しく、んんっゴホン
そう言えば兄上、心なしか髪の毛がフサフサに・・・肌も艶やかに?
おや?まさか噂は本当の事で?」
「宰相・・・心労が無くなれば心身共に健康にもなるんだよ」
「なるほど・・・」
何はともあれ初日の面接は終了した。
明日の面接3組は領地持ちらしい。調査報告書によると領民思いだと書いてある。
まぁこの調査報告書が当てになればの話だが。
最初の王弟殿下の報告書以外が当てにならんかったもんなぁ・・・
その日の夜、陛下・王弟殿下・宰相・ルーク・アル・儂の6人で集まった。
何の事は無い、単なる愚痴大会である。
「陛下よくあんなの毎日毎日相手してるな」
「そうだろそうだろ」
「前より酷くなってないか?」
「そうなんですよ、兄上達が居なくなった途端に阿呆が増えた気が」
「俺は宰相引き受けずに騎士でよかったとつくづく思った」
「なんだかなぁ。もちっとマシな貴族も居ると思ったんだがな」
「廊下から聞いただけでもうげぇってなってるオカンの顔が浮かんだもんなぁ」
「声に出さなかった儂を褒めてくれ」
「いや出てたぞ?」
「マジか」
「「「うんうん」」」
「ありゃま・・・まぁいいけども」
明日明後日の面接も期待出来そうに無いなと溜息をつく6人であった。
なので最初は宰相とルークだけで会い
マシそうなら後半儂を呼んでくれる事になった。
それまで儂隣の部屋で待機・・・ マジックミラーとかあればおもろかったのに。
「んで陛下の方はどうなのよ。準備進んでる?」
「口煩い連中に予算組以外の政務は少しずつ回すようにしておる。
ああ、先にエウリケを向かわせることにした。
古狸共が仕事を押し付けてきそうだからな、避難させる。
それと城下町に住まう民達には侍従達を通して噂が流れるように仕向けてある。
どれも口が堅い者達だからうまくやるであろう」
「そかそか。エウリケくんね。了解。我が家で預かっとくよ」
「んむ、頼んだ。
それでだな、俺が領地を治めるにあたってケイルを領都にしようと思っている。
こちらも根回しを開始した」
「なるほど。でしたら兄上より一足早く俺が向かって屋敷の手配をするか?」
「それはもう少し後の方がいいだろうな。町の大掃除が済んでからがいい」
などと真面目な話をしたのは最初だけ。
後半は皆酒が回ってきたようで、どこぞの伯爵は息が臭いだのどこぞの男爵夫人は香水がキツイだのと愚痴なんだか悪口なんだか分からなくなって来た。
「そうは言うがな、マォ殿! 間近で嗅いでみろ!」
「そうそう、近付きたくもないのに近寄ってくるんだぞ」
「殿下や閣下はまだいいじゃないすか。
俺なんか巡回中に酔いつぶれたおっさん運んだりしてたんですよ?
酒とおっさん臭で・・・」
「あ、察し・・・」
結局のところ皆気苦労が多いのであった・・・
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