面接一組目
ぬおぉぉぉぉおぅ・・・
只今絶賛地中を高速移動中。何処へ行くのかって?
今日から3日間、面接に立ち会うので城に泊まる事になっているんだよ。
で、移動中な訳なんだがね・・・
シールドが張ってあるので衝撃とか何も無いのはいいんだ、でもね?
周囲はちゃんと見えるてるんだわ・・・
ぶっとい木の根にぶつかりそう!とか尖った大岩がぁぁぁ!とかね?
気分は暗闇トンネルを走るジェットコースターに乗った感じ?
地上に出るまでハラハラドキドキだったさ。
地上に出たら出たでニコニコとすこぶるいい笑顔の妃殿下が待っていた。
「久しぶりですね、マォ殿。ささ、まずはこちらへ」
と、案内されたのはサンルーム。
まずは休憩をと促されて席に座る。
おや?なにやら書類っぽい物が置いてある。
「本日の面接者達の資料ですわ」ニッコリ
なるほど、これはありがたい。
お茶を飲みながら目を通す。
この日は貴族家2家族、と王弟一家との面接?
「妃殿下、聞いてもいいかな? 王弟殿下のご家族もなん?・・・」
「マォ殿はお会いした事がないでしょう?
本人も会った後で判断して欲しいと希望してますの」
確かに会った事は無いというより、王弟殿下が居る事すら初めて知ったよ。
おかしいな、末っ子長男と聞いていたんだがな。
「ルーク殿がご存じなかったのも無理はありませんの。
だって極秘事項でしたからね、でも今はご存じですので大丈夫ですわよ?」
ん?極秘事項だったの?何故に・・・
「前国王陛下が今際の際に隠し子の存在を明かしたんですのよ。
それはもう私も陛下も腰を抜かしそうになりましたわぁ・・・」
うわぁ・・・前国王陛下なにしてんだ、すげぇ爆弾投下して逝くなよ!
そしてそんな極秘事項を儂に言うなよ!
「あ、兄弟仲はすこぶる良好ですのでご安心くださいましね?」
兄弟仲が良いのならばまぁよかった・・・のかな。
さて1組目は・・・ いきなり王弟殿下かよ・・・
ご家族は妃と娘2人。
国でも無く王家にでも無く陛下自身に忠誠を誓っていると。
何よりもお互いが兄弟であり親友でもあると。ほぅ、いい関係を築けてるんだね。
他種族だろうが亜人だろうが分け隔てなく、家族思いの仲間思い。
武術にたけており騎士団団長を務めているとな。ふーん。
まぁ会って見なければどうとも言えんな。
面接を行う部屋に入れば・・・
陛下そっくりな王弟殿下が居た。
なるほど2人が似てるという事は前国王に似てるって事か。
奥方の方はこれまた騎士服を着ているので女性騎士なのだろう。武術一家?・・・
子供達は・・・奥方に似たのかな、ふわっとしたくせ毛の可愛い子達だ。
簡単に自己紹介をした後、ルークがいくつかの質問を投げ掛け殿下が答えていく。
兄である陛下について語る時の熱量がすごい・・・ちょっと引きそうになった。
「ではマォの方から何か聞いておきたい事はあるか?」
「ん?そうだなぁ。一平民になるとしたらどんな生活が送りたい?」
「畑仕事をしながら家族でのんびりと暮らしたい。
出来上がった野菜を兄上に召し上がっていただきたいな。
兄上は野菜嫌いだが、私が作った物なら食べてくれると思うんだ」
「畑仕事に抵抗はないん?」
「ありませんよ? 私を産んでくれた母は平民でしたし」
なるほど、ならば平民の気持ちも察する事が出来るだろう。
「奥方や子供達は大丈夫だろうか?」
「ご心配なく。私も末端貴族の出ですので平民とほぼ変わらぬ暮らしでしたし」
「私も大丈夫ですし妹も大丈夫です。お花を育てるのが好きなんです」
「そっか、じゃぁおばちゃんと一緒に沢山お花育ててみる?」
2人の少女は両親の顔をじっと見ている。殿下が頷くと
「ほんと? いいの? あのねあのね、育てたいお花があってね」
と、怒涛の勢いで喋り始めた。あー、この子達は貴族令嬢ってより伸び伸び育てた方が良いタイプなのかもしれない(笑)
「ほらほら、少し落ち着いて。マォ殿が驚いてらっしゃるよ」
「大丈夫ですよ、ちょっと孫が懐かしくなっただけで。
ルーク、この後少し話を詰めるんだろ?
この子達と庭園に行ってもいいかな?」
「マォは小難しい話が苦手ですからね。いいですよ。
話が終わる頃に迎えを行かせます」
難しい話は儂パスッ!
子供達と手を繋いで庭園まで歩く。護衛は勿論アル。
庭園に到着すると子供達は嬉しそうにあれこれと花の名前を教えてくれる。
知っていても知らないフリでニコニコと聞いていく。
やっぱ可愛いよなぁ。ゆっちゃんよりも少し小さいくらいかなぁ。
「あったぁ!このお花を育ててみたいの!」
・・・・
子供達が指差したのはドクダミだった・・・。
いや確かに小さな白い花は可愛いかもしれないし生薬にもなるしお茶でも飲める。
でもさ? ぶっちゃけ葉っぱとか臭いよね? そして繁殖力がえらいこっちゃになるよね?
なんでこれチョイスしたのかな・・・
「違うよ、こっちだよ。このお花だよ。甘くて三角の実が生るの」
「あれ?間違えちゃった。えへへ」
あ、そっちなら解るよ。苺だね。
迎えが来るまでの間、多少の可愛らしいミスはあったものの楽しい時間が過ごせた。
ちょっとドジっ子だけど明るくて優しい子達だ。なによりも可愛い。
あの子達の為にビニールハウスならぬ温室を用意しようかと考える儂であった。
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