飴とベタなテンプレ
1ヶ月後、獣人達が戻って来た。
半分の4人は恋人を見つける事が出来たみたいだ。定期的に手紙のやり取りをしたり、数ヵ月毎にはなってしまうが会いに行ったりと交流を深めていくらしい。
残る3人は今回は縁がなかったと言うよりも、お一人様の方が気楽でいいそうな。
まぁ気持ちは解らんでもない。
ジャックもそのお一人様希望の方だった。ちょっと残念。いやだって猫型獣人の子供ってめっちゃ可愛いんだろうなぁと思ってね? 見たかったなぁ。
そしてリオルからお土産?にとドッグタグっぽいプレートを渡された。なんだこれ。
「実父から皆にと渡されたんだ」
「これは・・・」
ルークもダルクもそれが何か知っているらしい。
「いつでも好きな時に遊びに来いとさ」
ん?・・・ いわゆるビザみたいなものなのかな?
「マォ、いまいち解ってないだろ」
「いまいちどころか、まったく解らん」
「これは王家が発行した通行手形みたいなものでな。
王家が身元を保証するから審査不要って事だ」
「つまりはフリーパス?」
んん? 今王家がって言った?
「俺の実父はつまり獣人国の王って事だな」
「俺の姉は王妃って訳だ」
うわぁお・・・ って事はあれか。
ここの国王とは再従兄弟な訳だから王族同士の政略結婚?
「政略結婚という建前だがガッツリ恋愛結婚だな・・・」
ちょ、馴れ初めとか凄く興味あるんだがっ!
園遊会で出会った2人が互いに一目惚れ?! 当初反対していた両親を熱心に口説き落として結ばれたと! いやいいねぇ~。
その後皆からの土産話とノロケも聞かされ、久々に賑やかな夜となった。
ブラッディソーセージは大人気だったそうな。そりゃよかったよ。
ケイルの町では春にちょっとしたお祭りが開かれるらしい。
その時に例の木彫り人形達を露店で売る予定になっている。
木彫りの人形だけじゃなんか味気ないと思ったので、簡単に出来るべっこう飴も売ってみる事にした。
とは言え砂糖は平民だとちょっとお高めなので、そのままのべっこう飴と飴に果物を潜らせたフルーツ飴の2種類用意した。
子供の頃 お祭りで食べるリンゴ飴は特別感があったんだよね。
フルーツ飴は姫リンゴとイチゴ。どちらも大きさは同じくらいなので同じ値段にする。
子供でも買えるように日本円で100円くらいにした。
なんせダンジョン産の材料だし? 原価も儲けも気にしなくていいし。
普通のべっこう飴の方は1袋5個入りで300円、こっちも格安だと思う。
お祭りの日の特別、自分へのご褒美って事で喜んでもらえるといいな。
お祭り当日、獣人達はお留守番。
気にせずに行けばと言ったけど、やはり抵抗があるみたい。
「せっかくの祭りで子供達に泣かれてもな?」
確かにそうか・・・お互いに気まずくなってもだよなぁ。
お祭りはなんというか文化祭とかのバザーって感じ?
各家庭から色々な露店が出ている。
串焼きやパンが多いのかな。たまに手芸品を見かける程度だった。
なので木彫りの人形は目立つ。
等身大とか持って来なくてよかったよ、無くても十分目立ってるし!
そして売れていく。
子供達がかわいい、かっこいいと喜んでいるんだよ。
大人達には厄除けになりそうだと熊が人気だった。
飴の方も大人気で開始早々1時間で完売した。
もっと用意しておけばよかったかもしれない。
初めてだし、どのくらい売れるか予想できなかったからね・・・
来年も参加するようなら多めに作ろう。
「秋には豊穣祭があるぞ?」
秋にも祭りがあるのか。まぁあっちじゃ夏と秋に数多くの祭りがあったし。
コレットとダルクに店番を任せて3人で露店を見て回る。
串焼きやパンは各家庭で味が違うのでいくつか買って食べ比べてみる事にした。
「「「 ・・・・・ 」」」
「マォの味に慣れたからだろうか」
「なんかこう、物足りないよな?」
「あぁ・・・」
甘いんだかしょっぱいんだかよく解らない味だったり、匂いはいいのに味が薄かったりと残念な味が多かった。マズイ訳ではないんだよ、なんか残念としか表現できない・・・
パンもパサついてたり口の中の水分全部持っていかれるような感覚・・・
でもこれが一般的なんだと思う。儂の料理に皆が慣れただけなんだろうなぁ。
でも手芸品はよかったんだよね。
端切れやあまった毛糸を利用して作られた縫いぐるみとか髪飾りとか。値段もお手頃価格だったので幾つか購入しておいた。
一通り見て回ったので自分達の露店に戻れば何やら揉めている・・・
何を揉めているんだか・・・
「どした?」
「丁度いい所に。この人達が飴の作り方を教えろと」
「あんたが店主か?どうだ金貨1枚で飴の作り方を買い取ってやろう」
・・・
なんだろうこのテンプレみたいな上から目線文句は。
「先に聞いとくけど皆、この人知り合いだったりする?」
「「「「いやまったくの他人」」」」
「だよなぁ。んじゃスルーで」
なんかこのまま露店する気にもなれないので撤収作業を開始する。
「おぃ、無視するんじゃねぇ。俺を誰だと」
「知るかボケ! 邪魔だ!どっか行けよ」
「このっ・・・」
とベタなテンプレよろしく殴りかかってきたので
めんどくせぇなぁと思いつつ殴り返した。
「3歳の子供でも知ってる礼儀を覚えてから出直してこいや」
気を失ったらしいのでアルに町の外に捨ててくるよう頼んだ。
春だからなのか、祭りだからなのか、変なのが湧くとこまるよね。
うーん、やっぱり必要最小限にしか町には来ない方が良さそうだなと思った。
読んで下さりありがとうございます。




