名前
これでもかってくらいのブラッディソーセージととばを持たせて帰郷組を見送った後、残ったのは儂・ルーク・アル・ダルク・コレットの5人だ。
リオルも帰郷組で聞いて驚いた。
ルークのお姉さんと獣人の間に産まれたのがリオル、つまりリオルはルークの甥。
それがなんで養子になっているのかと言えば
「ルークは絶対結婚しそうにないし老後1人は寂しいでしょ!」
と言われたらしく、お姉さんの所は子沢山でリオルは7人兄弟の末っ子だったらしい。
7人・・・確かにそれは子沢山だ。しかも双子が2組・・・育児大変だったろうなぁ。
「ふふっ、姉上がリオルから今の状況を聞いたら驚きそうだ」
そりゃまぁ4人の子持ちだしね?・・・
残った儂等はアルの母親を始めとするスタンピードで亡くなった人達を弔う事にした。
人数が不明なのでお墓ではなく慰霊碑を作る事にした。
なにかこう、神様の像とか彫るかとも思ったがこの世界の神様の姿しらんし、なんならおまぬけさんな気がするので(失礼な)
皆で話し合った結果地蔵尊を彫る事になった。
道祖神や子供の守り神として広く知られているけど、実は慈悲深く人々を救済する菩薩様でもあり大地が全ての命を育むように、苦しむ人々を包み込み救済すると言われている菩薩様でもある。
この地にピッタリだと思うんだよね、彫るにしても簡単だし・・・(ボソッ)
儂が絵を描いて、それを見ながらアルが彫る。これはアルが自分で彫りたいと言ったからだ。
なので儂等はお堂を作る事にした。これもまたこんな感じだと儂が絵を描いた。
ちなみにすこぶる上手い訳ではないが画伯でもない。至って普通の画力だ、たぶん。
お堂は3日で出来上がった。ちゃんとお供え物を置く台も用意した。
設置場所は居住区の北。そこに盛土をして少し高台にしてみた。こうすれば居住区全体も見えるし、遠くにケイルの町も見える。
亡くなった人々も安心して見守ってくれるんじゃなかろうか。
ついでに儂が彫った四神獣の像も居住区の東西南北に設置する事になった。守り神様だしね。
ただ石像ではなく木像なので何年かに1回は彫り直さないとだめかもしれない。
朱雀が一番苦戦するんだが・・・ どっかに防腐塗料とかないんかな・・・
そして1週間後には地蔵尊も完成してお堂に設置された。
ちゃんと石碑もあるよ? この石碑はオルガが作ってくれたんだけどね?
『 金色の羆と優しきハンター達 ここに眠る 』
金色の羆ってなに?! と言うか文字書けたの?! 凄いね?!
『 文字 ダルク教えてくれた 』
なるほど、って事はダルクがこの文言考えたのか?
「お前の仕業かダルク!!」
「良い名ではないか! 後世まで語り継がれるべき英雄だろう!」
「そうかもしれんが、せめて名前も入れてくれ!」
なるほど・・・金色の羆はアルの実母の通り名らしい。
金色の羆って・・・ きっと勇猛果敢な人だったんだろうな。
ん?・・・
アルの実母に雰囲気が似てるとか言ってたよな?
あれ? て事は儂のイメージも羆? いやいやいや儂カヨワイのに?・・・
「「「「 は? 誰がカヨワイって?! 」」」」
総ツッコミは止めて欲しい・・・
いいよいいよ、今度から儂も漆黒の羆と名乗ってみる?
「そう言えば、凄く今更なんだが・・・」
「どうしたルーク」
「いつまでも辺境の地のままでは困るので名前を付けろと陛下が・・・」
確かに、辺境の地ってのは雪国だの南国だのみたいな通称だよなぁ。
「何かいい案がある人は?・・・」
シーン・・・
まぁね?モッフルに付けた名前からしてもネーミングゼンス良さげな人おらんよね。
儂も人の事言えんけどもっ!
あー、でもどうせなら自然保護区とか付けたいなぁ・・・
「〇〇自然保護区とかは駄目なん?」
「ふむ・・・ 自然保護領なら行けるかもしれぬな」
区は駄目なのか。チェッ。
「素直にウォーカー自然保護領でよいのでは?」
まぁ今ここに居る全員ウォーカーな訳だし、ルークが領主だし。
「うん、いいんじゃね?」
「むぅ、仕方が無いか。では次に領の紋章を・・・」
「家紋じゃないの?」
「家紋とは別に領の紋章が必要なんだ。家紋だと紛らわしくなる場合がな」
あぁ、兄弟で別々の領地とかあるもんね。
紋章・・・
「ちなみにウォーカーの家紋はどんなのなん?」
「コレだな」
と見せてくれたのは・・・ モファームが描かれた盾に蔦が絡まっている物だった。
どうしよう・・・ モ〇ラにしか見えなくて ゴ〇ラしか浮かばん!
「自然保護だから動植物系がいいと思う」
で、次に浮かんだのが北海道土産とかで売ってるヒグマ注意の黄色いTシャツ。
熊がガォーって顔してるやつ。
あれ、意外といいかも。
皆に説明すべく絵にしてみたらデフォルト系になってしまった・・・
厳つさは無いけど・・・可愛いかも?
「これを元に絵の上手い人に描いて貰えば・・・」
「それ書類の印章にもなるが?」
「却下で・・・」
書類に吠える熊の絵があってもなぁ・・・
「熊に剣を持たせて仁王立ちしたのはいかがでしょうね?
ほら金色の羆の地でもありますし」
なるほど、そう考えればいいかもしれん。
「だが母は基本素手だったが・・・」
はい?! 素手でスタンピードに立ち向かったん?! すげぇな!
「ならさ立ち上がって吠えて威嚇してる熊ならどう?」
デザインのプロに任せればきっといい感じに仕上げてくれるだろうし。
て事で決定したので身分証も新しくするらしい。
なんだかやっとこの地に腰を落ち着けるんだって実感が湧いた。
なお後日提出された書類を見て 陛下と妃殿下が「自分もここの身分証が欲しい」と駄々を捏ねたとか・・・
読んで下さりありがとうございます。




