道を作ろう
うっそうとした森を抜けて開けた草原ならぬ荒れ地に到着した。
ここからが辺境の地になるらしい。
これは・・・予想以上にやりがいがあると言うか荒れ放題と言うか・・・
建物の残骸らしき物すら残っていない。
「こんなもんだろ。俺達が住んでいたのは家と呼べるような代物ではなかった。
質素な小屋だったからな。難民なんかは小屋とも呼べなかったかもしれん」
なるほど。領主は居なかったんだっけか。
統治者が居なければ当然住環境も整うハズがないよな。
「まずは拠点となる場所を決めてそこから手を着けて行こうか」
と話していたら奥の方から獣人達がやって来た。
「親父殿!マォ殿!早かったな」
「リオル!久しぶりだな」
「拠点場所はもう少し奥に設けてある。
俺達も昨日着いたばかりでな、まだ整い切ってないんだ。すまんな」
「大丈夫だろ、皆でやった方が早いし」
「そうだな。ってうぉっ!オーガ?の親子ぉぉぉ?!」
まぁ驚くよね、そりゃそうか。
「あー、縁あって仲間になったんでよろしく」
「そ、そうか・・・さすがマォ殿だな」
なにがさすがなんだ。まぁいいや。取り敢えずは荷を下ろして少しでも整えよう。
リオルに案内された場所には元獣騎士団のメンバー達がティピのようなテントを幾つか張っていた。
当座の寝泊りにはいいかもしれない。組み立ても解体も簡単だし。
「マォ殿たちはこちらのテントを使ってくれ。荷物を置いたら表に来てくれるか。
今後の予定を立てよう」
適当に荷物を置いて外に出る。だってリュック1つだしすぐ終わるのよね。
外に出ればリオルを始めとする元獣騎士団メンバー総勢7名が・・・
何故整列している・・・。もぉ騎士団じゃないから整列せんでもえかろうに。
「さて諸君、これからの事を相談する前に私から話しておきたい事がある。
この辺境の地についてだ。
諸君も知っての通り、この地は別名:見捨てられた地とも言われている。
故に領主や代官なども存在せず、王家直轄の土地となっていた訳だが。
私自身が一応は王族なのでこの地を退職金代わりに貰い受けた」
おぉ? ルークが領主って事? え?儂領主夫人? うわー似合わねぇ・・・
「私が侯爵でもあり、この地を治める辺境伯ともなる。
まぁあくまでの書面上の事で普段は気にする必要もない。
なにせ見捨てられた地だからな、税も免除されておるし。
古狸共も何も言えんだろうよ。
私がこの地の領主になる事で、無暗にこの地で悪さをする者を裁く権利も得た。
つまりは? ニヤリ」
「なるほど、陛下も考えたなぁ。
あの阿呆みたいなのを勝手に裁いてもいいんだな? ふへへへへ」
「ぶっ、マォ ふへへへへって・・・」
「おかん、その ふへへへへ は止めろよ。おかんが悪者みたいだ」
「あれ?そんな声出てた?・・・」
皆一斉に頷いたので出てたらしい、気を付けよう。
「細々した事は後々決めるとしてだ。
居住区を整えつつ冬籠りの準備となるので2手に分けようと思う」
確かに2手に別れた方が効率はいい。
「質問、この国の冬ってどこまで冷え込むんだろうか?
それに期間としてはどのくらいになるんだ?」
「期間としては3ヵ月、雪が降るのは2~3回だが1度の降雪量が多い。
後は、川や湖は凍り付くくらいの寒さだな」
儂の住んでた場所だと薄氷は張ってもカチコチにはならんかったからなぁ。
まぁ薪はこんもり用意した方がいいんだろうな。
食料もかぁ、こりゃ忙しいな。
「ちなみに冬、と言うか寒さがきつくなるまで後どんくらい?」
「1か月あるかないかくらいか」
「はやっ! んじゃ急がないとだな。
家とか小屋とか作った事ある人はおる?」
しーん・・・・ ですよねぇ・・・
「えっと・・・じゃぁ今日はすぐ日も暮れるだろうし皆で整地だな。
ここ、井戸ってある?」
「ああ、あったはずだ」
「じゃぁ井戸を中心として東西南北に十字の形に道を作ろう」
儂とダルクの魔法で軽く地面を耕し、その上を皆で踏み固めながら歩いて道を作っていく。
ここで活躍したのはモファーム達とオルガだった。
儂等が道を1つ作り上げる間に残りの3つ終わってたよ。どうやってたかって?
モファーム達が地中を駆け抜ける、これで土が柔らかくほぐれる。
その上を地面に寝転がった子オーガをオルガがコロコロと転がす。
うんそう。子供転がして地均ししてた・・・ 子供もキャッキャと楽しそうだからいいんだろうけども!
びっくりするから予め教えて欲しかったよ。
そんなこんなで日暮れ前には井戸を中心とした道は出来上がった。はやっ!
明日は森で倒木集め班と狩猟班の2つに別れる。
倒木で柱や板を作って行かないとだし、越冬用の肉も確保しておかなければならない。
晩飯を食いながら班別けをしそれぞれに明日の予定を組んだ。
オルガは儂と一緒に倒木集め。子オーガはもっちゃんとササミが見ててくれるらしい。
もっちゃんはいいとしてササミ大丈夫か?・・・
クォケッ! モモちゃんがササミの監視をする?そっか、じゃあ安心だね。
モモちゃんの方が頼れるってどうなん・・・
さて寝ようと思ったらもっちゃんに呼ばれた。なんだろう?
『 騎獣達も契約したいって、話せるようになりたいって 』
ん?それなら騎乗パートナーとの方がいいんじゃね?
『 それはそれ、これはこれ なんだって 』
それはそれ、これはこれって何が?・・・
まぁ意思の疎通が出来て損はないからいいか。
ぽいぽいと騎獣達に魔力を渡して行く。
『 あぁぁやっと会話が成立するー! 』
『 身振り手振りだと上手く伝わらないんだよ 』
『 僕達いっぱいお手伝いするからね! 』
うん、ありがとう。でもね?そんなに詰め寄ってこないでくれるかな?
さすがに一気に来られると・・・あぁぁぁぁ・・・・コケッ
『『『 ・・・・・・・ 』』』
押しつぶされたよね儂・・・
『 マォごめんね? 』
『 マォ大丈夫? 』
『 怪我してない? 』
取り敢えずは先にのいてくれるかな?・・・
読んで下さりありがとうございます。




