ショートカット
温泉とハンモックのお陰ですっかり疲れは取れていた。
久々に気持ちのいい朝を迎えた気がする。
あれ?今日はモモちゃんの鳴き声で目が覚めてないな。
モモちゃんどうした寝坊か?
見渡しても姿が見当たらない。おや?
「あー、モモならササミの元に戻って行ったと思う」
「ん?どういう事?」
ルークは早朝に突かれて起こされ、バンっとどっからか出した紙を突き付けられて書けと言わんばかりに詰め寄られたらしい。笑ったら駄目だと思うが想像すると笑えてくる。想像しなきゃいいのか・・・
「確かに返信はしておいたほうがいいだろうからな。
まさかモモに指摘されるとは思わなかったが」
そりゃそうだろう、儂だって思わなかったしな。
内容は ケイルの崖崩れの件は了解した事とモファームが3匹になったので当初の予定より早く到着しそうな事を書いたらしい。
そうだね、早めに到着するってのは伝えておかないと向こうの都合だってあるだろうからね。
獣騎士団の皆は先行してるし辺境の地にも先に到着するだろうから下準備をしてくれるそうだ。
アルの話では以前のスタンピードで元々の住民たちは避難し今は住んでいる人はいないハズだと言っていた。きっと荒れ放題になっているだろうから生活基盤を整えるのも大変かもしれない。
取り敢えずはこの冬が越せるだけのスペースが確保できればいいと思う。
「そうだおかん。もふりん達のお陰で後4日くらいでケイル周辺に着くぞ」
「はえぇな!」
「俺も驚いたんだが
どうやらもふりん達は最短コースを選んでくれているみたいだ」
なるほど、どのルートがいいのか本能で解るのかな?
もっちゃんを撫でながら、会話が出来ればいいのになぁと思った。そうテイマーみたいにさ。
ネトゲだとテイマー選ぶことも多かった。理由は2つ。
1つめ、大抵の場合武器が鞭! いいよね鞭!
2つめ、可愛かったりかっこよかったりな獣魔が多かった!(強さより見た目)
「なぁアル。この世界にはテイマーって職はないん?」
「テイマー? 少なくともこの国では聞いた事ないなぁ」
「そっかぁじゃぁ無いのかもだね。残念」
「テイマーというのはどんな職なんだ?」
「簡単に言うと猛獣使い、じゃないや魔獣使いかなぁ」
「魔獣使いか、ダルクなら他国にも通じているから何か知ってるかもしれんな」
「私がなにか?」
「ぬぁおっ 急に湧くな!背後に現れんな!驚くだろうが!」
「おや失礼を・・・ で、何がですか?」
まったく気配を消して現れないで欲しい、心臓に悪いんだが。
ダルクにテイマー・魔獣使いについて聞いてみた。
この国を始め近隣諸国には存在しないらしい。ただ遠く海を越えた南西にある国には存在すると聞いた事があるそうだ。聞いた事がある程度なので詳しい事は何も解らないらしく残念だが仕方がない。
ジィー
もっちゃんが仲間になりたそうにこちらを見つめている。
仲間にしますか YES NO ってそうじゃない!
どうしたもっちゃん、お腹でも空いたのかな?
昨日採った完熟スモモを上げると美味しそうに食べている、うん可愛いな。
見ていたら儂も腹が減って来たので朝飯の準備に取り掛かる事にした。
ピザトーストならぬピザバケット! ピザソースじゃなくてケチャップだけどもまぁそこは勘弁して欲しい。いつか時間があれば・・・作るかもしれない。
このピザバケットも大好評だった。
もういっその事 落ち着いたらピザ作ろうピザ!
儂はマルゲリータが好きだけどきっと皆はお肉タップリが好きなんだろうな。
さぁ今日も移動開始だ。もっちゃんに乗ってるだけだけども。
順調に・・・
いや確かに順調だけども! でもね、もっちゃんやぁぁぁぁ
ほぼ垂直の崖を下るのはいかがなものかとぉぉぉぉ!! ヒェェェ・・・
崖を下り切った所で休憩となった。 ゼェゼェ・・・
「久々にジェットコースター乗った気分だ・・・」
「なんだそれ。
まさか崖を垂直に下るとは・・・」
「しかも走ってとか予想外すぎて!」
「なんか下腹あたりがこう、ヒュッてなった。ヒュッって」
「モファームで崖を駆け降りるとかこれまた前代未聞で私達だけダロウナァ」
どうやら本来はこの崖を迂回するのに2日は掛かるらしい。
それをショートカットしたのかもっちゃんや。
出来れば予め教えて欲しかった、せめて直前でもいいから教えて欲しかった。
心の準備がしたかったぁー!
まぁこのショートカットのお陰で後2日ほどで辺境の地に辿り着くらしい。
当初の予定よりめっちゃ早くね?
* * * * *
もっち『 もうちょっとでマォが気が付きそうだったのにぃー! 』
もふり『 名前貰ったんだから後は魔力を少しだけ貰えればいいのにねぇ 』
もっふ『 魔獣使いとは少し違うけど従魔契約は出来るのになぁ 』
もっち『 伝えられないのがもどかしぃー 』
もふり『ねぇー』
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