移動開始

草木も眠る丑三つ時

城壁に沿って移動する影3つ・・・4つ　5つ

うん、そうだね儂等だね。

結局のところ、1時間の仮眠を取り真夜中に移動する事になった。

明け方だと登城する人達と鉢合わせる可能性が0ではなかったのと、町を抜ける時に姿を見られる可能性が高いとの事でこの時間に早めた。

当初の予定では3人だったのが5人に増えたからね。3人ならまだ人混みに紛れてもなんとかなるがさすがに5人だと目立つ。

行商人とか商団にでも扮すればよかったのかもしれないが、体格的にもアルが目立ってしまうしルークやダルクだって商人の目付きではない。

なので普通に旅人です、が一番見た目としては無難だろうと言う事になったのだ。

明日からは普通に日中移動する事になる。

勿論人目に付かない・目撃情報を残さないのが一番良いので立ち寄る町や村も最小限にとどめる。必要な物はそれなりに持ってきたつもりではあるけれども目的地の辺境の地までは約12日間の道程だ。持ってきた分だけでは足りなくなるだろう。特に調味料・・・

もっちゃん、陛下から貰ったモファームだけども。もっちゃんには儂等とは別に西の森を抜けて貰いその先にあるエキルと言う町で合流する事になっている。

このエキルは城下町から3つの町を挟んでいるので最初の補給場所にもなっているのだ。日程にして3日で到着する予定。

「城下町を抜ければ少しだけ安心できるので森に移動して少し休憩をいたしましょう」

ダルクくんはルークのスケジュール管理もしていただけあって旅程のスケジュールも組んでくれている。無理の無いように所々で休憩を挟んであったのでありがたかった。

儂等が目指す辺境の地は北にある。北に行くにはどうしてもこの城下町を通過しなければならなかった。

たしかにこの丑三つ時なら人はほぼ居ない。そりゃまぁ寝てる時間だしな。

たまに巡回中の騎士が歩いている程度だ。

気配を消して物陰に身をひそめれば見つかる事も無い。

初めての城下町がこんな状況下でなのは残念だが仕方が無い。

色々と店を見て回りたかったなぁ・・・

街を抜けるまで早歩きで40分。さすが広いわなぁ。

早歩きとか久々だったので足がつるかと思った。むぅ、これは時々早歩きをするべきだろうか・・・

街を抜けて少し行けば森が広がっている。その中を整備された道が通っているのだが儂等はこの道を利用せずに森の中を進む。

ぱっと見解りにくいが獣道ぽくなっている箇所がいくつかあるのでそれを利用させてもらっている。

その方が多少なりとも歩きやすいのだ。

「そろそろ夜も明けてくるでしょうし、ここらで1時間の休憩としましょうか」

ダルクくんの声で各々荷物を卸して適当に座る。

今ならまだ火を起こしても煙が目立たないというので小さな焚火をおこす。

そこに竹筒の水筒をかざして温める。中にはコーヒーが入れてある。竹筒なんてあったのかって？

正確には竹じゃないかもしれないけど竹っぽいのを山で見つけて持ち帰っていたんだよね。

水筒も作れるしコップも作れるしなんだったら飯盒代わりにだって出来る。

その竹もどきを節で切って水筒を用意しておいた。昔の水筒って竹筒だったんだよね。作り方教えて貰っていてよかったよ。近所のじぃちゃんありがとう。

暖まった竹筒を皆に配りハードパンも渡す。

「これはありがたい」

「朝晩と冷え込み始めましたからね。温かい飲み物は嬉しいですね」

「このパンも旨いな」

少し塩気があるのでバケットに近いものが出来たと思う。うん、我ながら旨い。

次の休憩の時は甘いものがある方が良いかもしれない。木の実のパウンドケーキの出番だな。あれもいい感じに出来上がってると思う。

飲み終わった竹筒は回収し、水魔法で洗って風魔法で乾かしておく。

そうしないとカビちゃうからね。

「さて空も白み始めましたし、そろそろ行きましょうか」

初日だから少し無理してでも距離を稼いでおきたい。

森の中だから魔物と遭遇しないか不安だったけど、魔物避けの匂い袋を持って居るから大丈夫らしい。

万が一にも遭遇した場合、戦闘力的にはよっぽどじゃないと余裕なんだそうだ。

「当たり前です。マォ殿なら普通にどつくだけでなんとかしそうじゃないですか」

しれっとダルクくんに言われたのだが解せぬ。儂普通の一般人なのに！

「一般人は固有スキルにタマ潰しとか出ないです！」

うぐぅ・・・　それは儂のせいじゃないと思う・・・

まぁそんなもんで　順調に進んでいた。

時々栗を拾ったりアケビを取ったり、あくまでも歩きながらだけどね。

そして太陽が真上に来た頃　昼食を兼ねた休憩をする事になった。

さすがに昼間は火を起こすのを控えて　作り置きで持って来ていたサンドウィッチを皆に配る。飲み物はビタミン補給も兼ねたオレンジジュース。天然果汁100％でちょっと酸っぱいが疲れた体にはいいだろう。

「このサンドウィッチも美味しいですねぇ」

「オレンジジュースの甘酸っぱさが疲れた体に染み渡るな」

そうだろうそうだろう、干し肉とパンだけじゃ飽きるし栄養バランスも悪いからね。

摂れる時に野菜や果物も摂っておかないとね。

後2～3時間歩けば少しだけ開けた場所に辿り着けるらしいので今夜はそこで野営する予定になっている。交代で見張りをするからゆっくりとはいかないだろうけど、それでも纏まった睡眠がとれそうでよかった。