表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おかんは今日も叫んでる  作者: 猫茶屋
一章:城内
25/80

コレットて誰

燻製を作るついでにソーゼージも作ってみた。勿論粗挽きで。腱鞘炎になりそうだったんだよ。

ベーコンやハムも作りたかったけど、水抜きする時間が無いので塩漬け肉で妥協した。

昨日思いつけば作れたのに何故思いつかなかったよ儂。

燻製も上手く出来たと思う、その代わりに自分含めて家中が煙臭い。きっと護衛(見張り)はもっと煙臭くなっていると思う。

最後の魚が燻し上がったので後片付けをしていると、いかにもな古狸・・・もとい貴族っぽいおっさんがやって来るのが見えた。儂に近づくなと言われてるんじゃないのか?めんどくさいなぁと思ったので片付けを中断して再び扇いで煙を上げる。無駄にチーズでも燻製しておこう。

今度は意図的に煙が古狸に向かう様に仕向ける。


「げほっげほっ おいそこの下働き。ここの主はおるか」


下働き・・・儂か?儂の事か! 下働きに護衛が付く訳ないだろうが。見ろよ護衛までぎょっとした顔になってんじゃねぇか。

そもそも家の主が在宅か不在かを訪ねるならまず名乗りやがれ。不審者にこたえる訳ねぇだろう。

後ろに居たアルが前に出ようとするのを手で制しマカセロと口パクで伝えた。

なるべくなら今は揉めたくない。


「げほっ ごほっ 聞こえんのか貴様!」


この野郎と思うが下働きだと言うならばそれなりに対応してやろうじゃないか、ふっふっふ。


「あぁ~?あんだってぇ?オラ耳が遠いだでよぉ。

 もうちっと大きな声で言ってくんなまし~」


片手を耳に当ててそう答える。なんだったら立ち上がって腰も曲げてやろうか。

ぶふっと吹き出す声が聞こえる。こら護衛笑うんじゃない。アルも肩が震えてる!やめろ、こっちまで笑いそうになるじゃないか。


「なっ・・・これだから年寄りは。

 (少し大きな声で) ここの主はおるかと聞いている!」


「あぁ~?? あんだってぇ?」


「だから! げほっ ここの! げふっ 主は! ごほごほ おるのか!」


まぁ大声で叫べば叫ぶほど煙吸い込むよね。


「あ~んだってぇ~?」


故大御所コメディアンのおばぁちゃんコントを思い出し再現してみている。

このやり取りを繰り返す事10分、古狸はプリプリと怒りながら帰って行った。

古狸の姿が見えなくなると護衛とアルは爆笑し始めた。


「おかん、あれは・・・笑うなってのが無理だろ」


「えー・・・」


「自分まだまだ修行が足りないと実感しました!」


そういう問題でもないと思うんだが・・・


「やれやれまったく。どこの狸だあれは」


「マォ殿あの方は狸ではなくタヌークィ男爵です」


タヌークィ・・・


「狸じゃん・・・」


「ぶふっ」


だから護衛笑うな! 今日の護衛は無表情ではなかったらしい。どちらかと言えばゲラっぽい。

しかし何しに来たんだあの古狸。まぁ御前会議に呼ばれてないって事は下っ端なんだろうな。狸だし男爵だし狸だし。


「と言うか護衛だったらああゆうのも排除してくれよー」


「すみません・・・」


さて今度こそ片付けて夕飯の準備をしよう。とは言っても持っていけない食材の処理になるけども!葉物野菜とかトマトとか。そうかサラダにして余ったのをサンドウィッチにすればいいか。明日の朝飯だな。

て事でたっぷり野菜のミネストローネとサラダと小魚の南蛮漬けと鶏もも焼き!


ルークが最後の勤務を終えて戻って来たので入れ替わりに護衛が帰って行った。今日は夜番は居ないとの事。そうだろうねぇ、ご苦労!

飯を食いながらアルが古狸と儂のコントをルークに話している。勿論ルークも大爆笑で「見たかった」と言っていた。

食事が終わった頃にダルクくんがやって来た。荷物はリュック1つ。


「最低限の物しか入ってません。落ち着いたら買えばいいだけですしね」


まぁそうだよね。騎獣達と合流するまでは徒歩になる訳だし荷物は少ない方が良い。


「ああそうだ。陛下からの言伝が。

 『もお面倒だからお前等全員家族になっちまえ。

  そうすれば俺とも親族になる訳だから何かと都合がよいし文句も言えないだろう。

  よしこれ決定ね!』

 だそうです。あ、これ戸籍の一覧の写しです。って、えええええ。

 私いつのまにマォ殿の養子になってるんですか!」


ダルクくんや・・・ここに来る前に確認してなかったんかーいっ!

テーブルに置かれた戸籍の写しを皆で覗き込む。


「は?!待って? えぇ。儂ルークといつの間にか夫婦になっとるがな!」


「息子が3人に・・・ん? この娘になってるコレットて誰!」


「て事はルークが・・・なんて呼べばいいんだ」


「母がおかん、父はおとん。おとんでいいんじゃね?」


「おかんはそれでいいのか、ルークを夫と認めてるが」


「はっ・・・」


「駄目か? 嫌か? と言うよりも陛下も強引だなおい! でコレットて誰!」


「私です」


うわぁ、いきなり現れんなし!って、あれ?コルディ?・・・


「コルディ? え?? コルディってコレットなの?女性なの?!」


「コレット・コルディ。これでも女ですよ。隠してましたけどね」えへっ


えぇぇ・・・ずっと男だと思ってたし。男にしか見えなかったし!


「厨房には男しか入れなかったからね。どうしても料理人になりたくてさ。

 ちなみにこの話はついさっき、ほんとについさっき聞かされたんだよ。

 10分で荷物を纏めろ最小限で!て。何事かと思ったら陛下の前に連れていかれて

 行き成りマォの子になれ、なんだから腰が抜けるかと思ったぞ」


そりゃ驚くだろうよ、陛下なにしてんすかね。

しかもその後此処に連れて来られて何も聞かされてないとか!

おぉーい、説明位簡単にでもいいからしろよぉー!!

飯もまだだと言うのでミネストローネを温め直して渡し食べながら話を聞いて貰った。コルディは盛大に吹いた。それはもう見事に。


「そんな大事な事すっ飛ばさないで説明して欲しかったー!!」


ごもっともである。

んで何故コルディもここに合流させられたかは、どうやらコルディの粗探しをしているヤツがいるらしい。女性だとバレれば今までの功績も無になってしまうので陛下がこれ幸いにと手を廻したようだった。陛下は最初からコルディが女性だと解っていたそうだ。女性だから男性だからと就けない職がある事も陛下は不満らしい。ここも古参貴族達との意見の相違になるんだろうな。ガンバレ陛下。


娘よ・・・ おかん一気に9人家族で7人の子持ちになったわ。

アンタの兄ちゃん姉ちゃん増えたぞぉぉぉ!

読んで下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ