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おかんは今日も叫んでる  作者: 猫茶屋
一章:城内
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おかん迷子②

落雷には驚いたけども、ササミの姿にも驚いた。

猫が驚いた時って尻尾がブワッと狸みたいに膨らむんじゃけど、ササミの尻尾もブワッってなってた。但し猫の様なモフモフではない。ブワッと広がった蛇の・・・・どういえばいいんだこれ。扇の骨組みみたいな感じになってるんだよ。鶏の尻尾が蛇ってコカトリスみたいじゃん。


「ササミ、コカトリスじゃったん?!」


デカイだけの普通のニワトリかと思ってたよ。そっかコカトリスか。今まで尻尾何処に隠してたんだろうか。

そう言えば蛇は帰巣本能とまではいわないが地形を覚える事が出来るって本で読んだ気がする。


「ねぇアル。ササミの尻尾の蛇ってさ1本?

 1匹ずつの個体と考えてもいいのかな?」


「どうだろう。だが抜け落ちた蛇がそのまま生きているのは見た事があるな」


抜け落ちたって、抜け落ちるもんなのか?抜け毛みたいな感覚?・・・


「ササミ、1匹だけ切り離すとか出来る?無理じゃろか?」


「クォクェ」


ササミは少し考えるそぶりを見せて踏ん張った。


「クォークォークォー、ククククッ クゥオックェ」


ポンッ


おお、出来た? って卵産んでんじゃねぇよ!今産むなよ! いやこれ食えるのか?晩飯に使えるか?

ササミ、ドヤ顔してるけど、そうじゃなくてな?尻尾の蛇をだな?・・・


ペキッ ペキペキッ


え、何の音? よく見れば卵にひびが入っている。

え?ええ?もう孵化すんの?はやっ!


「俺初めてコカトリスの産卵見た・・・」


うん、儂もだよ!もっとも儂の世界にはコカトリス居ないけどな!

パカンと出て来たのは・・・バジリスク?・・・

尻尾が蛇ではなく蜥蜴になってるからたぶんバジリスク・・・


「コカトリスからバジリスクって産まれるもんなの?」


「まさか。そんな話は聞いた事がない」


「でも今儂等見たよね?」


「見た・・・な」


生まれたてのバジリスクとは言ってもすでに大型犬くらいの大きさだ。

ササミが何やらコケコケッとバジリスクに言っている。 チラリとこっちを見たバジリスクは頷いた後一目散に走って行った。こんな雨の中いくらバジリスクとはいえ生まれたてで大丈夫か?

もしかしたら帰巣本能発揮して城まで行ってくれたのかと少し期待した。


うん、期待した儂が悪かった。生まれた場所此処だもんな。そりゃ此処に戻ってくるわなぁ。

でも口にしっかりと兎っぽい何かを咥えていた。晩飯用の狩りをしてきてくれたんだろう。それはそれで有難いので早速捌いて調理していく。水も火も魔法で出せる、便利すぎだな魔法って。

・・・ 火があるなら狼煙上げてみてもいいんじゃないか?


「アル、狼煙を上げてみたらどうだろう。もしかしたら誰か気付くかもしれんし」


「なるほど、ならば雨が上がったら少し開けた場所に移動しよう」


雨が上がるまでにはまだ時間が掛かりそうなので、肉を食った後仮眠をとる事にした。

ササミの羽の下に潜り込めば羽根布団に包まれたかのような気持ちになる。お陰でぐっすりと眠れ・・・


「コカトリスって自己繁殖?!」


バガッと起き上がり叫んでしまったら、ササミにグイと押し戻されてしまった。

静かに寝ろと言われているみたいだ。すまん・・・

気を取り直して寝直す。


しばらくして目が覚めれば雨は止んでいて星空が見えた。星が見えるなら北極星を見つければ北が解る!この世界にも有れば・・・だが。

見上げては見たものの・・・うん、星座とかも違うっぽいので北極星らしき星がわからん!

これはあれだ、無事王城に戻れたらこの世界のサバイバル知識を身につけようと思った。


いくらササミの羽で温かかったとは言え地面に寝たので腰が痛い。アルは全然平気そうだった。くっこれが若さかっ羨ましい。

体をひねってほぐしてみる。あー、ペキピキいうわぁ・・・

水で水分補給した後、移動を再開した。どこか開けた場所が見つかればいいんだが。


清流とでも言うべきか、川の流れを見つけた。この流れに沿って行けば取り敢えず山からは脱出できるんじゃないだろうか。このまま川に沿って歩いてみる事になった。

いっそ筏でも作るかと思ったが残念な事に今日は斧を持ってきていなかった。


「おかん、疲れたら言ってくれ。背負うぞ」


「そこまで年寄りじゃないから大丈夫。タブン」


気遣いはありがたいけどね? さすがにまだ大丈夫だと思う。これは何日も続けば解らんけども。

そう、先が見えないんだよねぶっちゃけ。

土地勘が皆無だし、方向を確認できそうなものがない。あ!日の出で解るんじゃね?日が出始める方向が東だ!

・・・ ここが何処か解らんから城の方角どっちかも解らんのじゃった・・・

やっぱ狼煙が無難か?


段々と空が白み始め日の出が見えた。迷子中じゃなかったら綺麗だと見惚れただろう。

幸いにもこのまま川沿いに下って行けば東に向かって行ける。きっとどこがで村なり町なり駐屯地なりが見えるはず。水場に近い場所には人が集まるはずだと思いたい。


空がすっかり明るくなった頃に焚火の後を見つけた。冷え切っているので時間が経っているが、人のいた痕跡ではある。ならば何処かに人が通った道なりなにかがあるんじゃないか。


「ここで少し火を起こして狼煙上げてみようか。

 んで離れ過ぎないように気を付けながら周辺を探索してみよう」


「そうだな、ここが何処かを知る手がかりでもあるかもしれない」


周辺から乾いた枝を集めて火を起こし、まだ枯れ切ってない針葉樹の葉を少し被せれば、はい狼煙の出来上がり。近くにいるとちょい煙いんだがね。まぁこの煙が虫よけにもなるから良しとしよう。

儂が火を起こしている間にアルは果物を見つけて来ていた。


「リンゴンベリーとブルベリーが自生していた。国内なのは間違いないようだ」


リンゴンベリーは確か栄養価も高かったし今の状況にはありがたいね。

川の水でサッと洗い2人でモゴモゴ食べているとかすかな人の声が聞こえた気がした。


「「!!」」


2人で顔を見合わせて耳を澄ます。やはり何か叫んでいる声が聞こえた。


「俺は様子を見てくる、おかんはここで・・・

 いや少し離れた場所で隠れて待っていてくれ。

 声の主が敵か味方かは解らないから念のためにな」


確かに密猟者とか盗賊の可能性だってあるわけだしな。

アルが歩いて行った方向とは逆の方向に少し離れ茂みに身を隠した。

正確には茂みに隠れたササミの腹の下に・・・

儂卵みたいに抱えられてるんだが・・・


息をひそめているが 時々羽毛が鼻をくすぐりクシャミが出そうになる。


「マォ殿!聞こえるか」「へぇっくしょいっ」


クシャミと同時にピアスから閣下の声が聞こえた。なんつータイミングなんだか。


「風邪か?」


「すまん、ちょっとササミの羽が へっくしょい」


どうやら先程かすかに聞こえた声は閣下と捜索隊だったらしい。無事アルとも合流したようなので儂も焚火の方へと戻る。


「おかん!」

「「「マォ殿!」」」

「キュイ~~~」


ぶわっと黒い影が飛び跳ねて儂にしがみついて来た。というかうん、押し倒された。

あー、うん。この感触はカカオかな・・・

スリスリと頬擦りをしてくるのはいいけど、まずは降りて貰えるかな。儂苦しい。


「マォ殿が戻ってこなくて

 捜索隊を組んでいる最中にカカオが親父殿を咥えて走り出すもんだから

 我々も大慌てだったんですよ」


リオルも来てくれていたのか、すまんのぅ。


「まったく閣下も閣下です。カカオを諫めるどころかそのまま突っ走るんですから」


ダルクくんまで来ているのか。


「それにしてもここは何処ですか。よく此処に居ると解りましたね」


アルの問いに対して閣下が答えてくれた。


「小さなバジリスクと途中で遭遇してな。カカオが気が付いてくれたんだよ。

 ササミの匂いがしたんだろう、攻撃するそぶりもなかった。

 バジリスクも付いて来いというようにこちらを振り返りながら移動していて

 後を付いて行ってみれば狼煙が見えた」


なるほど、あの卵から孵ったバジリスクが捜索隊を見つけて案内してくれたのか。

期待外れだとか思ってすまんかった。

あれ?そう言えばバジリスクが見当たらない。


「そのバジリスクは?」


「あー・・・それがだな」


え?なにその沈黙止めて? まさか・・・


『 ンギャークルルル クルッポーゥ 』


何今の声・・・


「ここへ案内出来たのが嬉しいのだろう、奇声を上げて踊っている」


ぶっ・・・ 

てっきり力尽きたとか思ったじゃねぇか!変な間を開けるんじゃねぇわ。



ともあれ全員無事に城へ戻る事が出来た。勿論チビバジリスクも一緒に。


後で聞かされた話によれば、儂らが居たのは国の最西端にある山脈でもう一山ずれていたら隣国に入っていたらしい。よくもまぁそんな場所まで飛んだもんだよ。

全速力の騎獣でも通常は3日掛かるらしくそれを2日で移動したとかどれだけ無理をしたんだろうか。


え? ちょっと道なき道を走ってショートカットしただけ?

そ、そうか・・・それだけ心配してくれたのだろうからごめんね、ありがとう。


なお、南にはクッキーとチョコ 北にはビスキュイとモルト 東にはサブレとポップが捜索隊に加わってくれていたらしい。

近い内に捜索隊に加わってくれた騎士兵士にもお礼をしなければと思う。

が、今はとにかく風呂に入ってゆっくり眠りたい。足腰がバキバキだ・・・

読んで下さりありがとうございます。

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