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おかんは今日も叫んでる  作者: 猫茶屋
一章:城内
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おかん吠える②

少々ネガディブな部分がありますがシリアスな話はこれでおわりのハズですタブン。

ミシッ ミシッ 廊下の軋む音が聞こえる。


なんて事も無く。そりゃそうか。さすが獣人足音は全くない。

扉も無音で開いた。


「「「 !!! 」」」


驚いたのは獣人達の方だった。声を上げなかったのは正解だと思う。ここで叫び声が上がりでもしたら騎獣達が騒いだだろう。

まぁ獣人達も予想外だったんだろう

寝てると思った儂がベットの上で胡坐かいてるんだから。


「何故寝てないんだ」


何故と言われても困る。そもそも殺気が出てるを察して寝てられるか。


「何故と言われてもなぁ、どっかから殺気出てるのは夕方から解ってたし」


「何故それが解るんだよ、アンタ騎士でも兵士でも無いだろ!」


「年齢からして暗殺者でもないだろうし!」


いや世の中探せば高齢の暗殺者も居るかもしれないじゃん。


「あのな、山に近い僻地で畑仕事してみろよ。

 猿だの猪だの鹿だの狸だのアライグマだのと居る訳だ。

 立ち上がった瞬間にはいご対面~とかあるし

 背後から襲われる事だってあるんだよ。

 常に神経とがらせてりゃその内なんとなくでも解るようになるさ」


幸い熊との遭遇はなかったけどな!


「まてまて、何故そんな危険地帯で畑仕事とかしてんだよ!」


「そこまで危険でも」

「「「 十分危険だろ! 」」」


あれ、おかしい。儂責められてる?・・・


「この状況の方が危険な気がせんでもないが?」


虎・獅子・狼 猛獣じゃん。 猿とか鹿とか猪とか可愛いもんじゃね?


「はっ! 会話してる場合じゃないだろう!」


「お、おぅ」


やっと3人は気を取り直したらしい。

互いに頷き合ってこちらに襲い掛かって来た。

普通ならここで「きゃー」とか「誰か助けてー」とか叫べば可愛気があるんだろうなぁ。

すまんのぅ可愛気がなくて。

君達忘れてるよね、儂一応人間で魔法が使えるって事をさ。しかも儂隠してるけど全属性持ち。ランクはⅠだけどな!て事でグラビティ発動。イメージは象・・・じゃ駄目か潰れるか。ベンチプレスダンベルの100㎏とか?まぁ動けない程度で。獣人だと動かせるのかな。

あ、ダンベルじゃく全身に掛かるから大丈夫そうだった。また洩らされてもこまるから股間周辺だけ20㎏で・・・だってここ一応儂の部屋だしな?だったら0でも良くないかってなるけど、なんかそれは嫌だ。そこだけ解放感で洩らすとかあるじゃん。赤ん坊のオムツ交換がいい例で。


「ぐっ・・・魔法か」


「アンタはそうやって魔法も使える。俺達とは違う。

 俺達の気持ちなんか解らないんだ」


「そうだ!いくら体を鍛えても努力しても心無い言葉を浴びせ続けられたら

 卑屈にもなるだろう!」


「そうやって自分に言い訳して逃げてんのか、くだらんし阿呆くさい」


「「「 なっ 」」」


「お前等の気持ちなんぞ解るか、解りたくもない。

 お前等だって儂の気持ちなんぞ解らんだろうし興味もなかろ?

 だがな、言っておくぞ。

 最初から心身共に強い奴なんていねぇし誰もが弱い部分なんて持ってんだよ。

 誰にも理解されない、解って貰えない。だったらまず自分で自分を理解しろや。

 自分の強さも弱さも自分でまず受け入れろや。

 自分を卑下するって事は自分を大切にしてないって事だし

 どうせ自分なんてと諦めてるって事だろ。

 自分が自分を見下してどうすんだよ。

 本当にお前等見てると昔の自分見てるみたいでイラつくわ!」


思わすコイツ等を蹴りそうになったが寸前で止めた。騒ぐと騎獣が気付いてしまうから。もっともこんだけ話し声がすりゃ気付いてるかもだけどな。


「昔のアンタを見てるみたいって・・・ どういう事だよ」


「ん?気になる?聞かせてやろうか?長くなるけど。

 やっぱ簡単に話す、思い出して発作おきてもいやだし」




子供時代は出来のいい妹と比べられ、なにもかもが妹優先で「お姉ちゃんなんだから我慢しろ」と言われ続けた。

学生時代はいじめられた。物が無くなるのは日常茶飯事。体育倉庫や図書室・資料室に閉じ込められることも多々あった。朝まで気付いて貰えないことも。

親は「お前が悪い。お前に原因がある」としか言わなかった。だが心当たり何て有る訳もなく。本を読んで現実逃避するのが精いっぱいだった。成績は悪くなかったと思う。作文とかで何かの賞を貰った事もあるが1度だって褒めて貰った事なんかない。

どうせ私なんか頑張ったって無駄だとこの頃には何かを求めるのも頑張るのも諦めた気がする。

卒業間近に母が事故で亡くなった。この時見た父の背中は小さく感じた。

母が亡くなったのを機に家を出て一人暮らしを始めた。


就職してからもいじめはあった。新人いびりと言うヤツだ。当時はハラスメントなんて言葉無かったからな。

やがて職場結婚をしたが結婚後に相手が本性を現した。生活費は貰えず暴力を振るわれ暴言を浴びせられた。体中青痣が常にあり生傷も絶えない。反抗や反論すれば倍になって暴力が返ってくるので耐えるしかなかった。いわゆる恐怖支配だよね、今思えば。

どこから精神崩壊が始まったのかは今でもわからない。

子供が3人生まれたが育てるのに必死で可愛いとか思える暇も無かった。

そう、子供達にご飯を食べさせないと、服を買わないと。

幸いと言うか子供達の分だけはお金が貰えた、たぶん扶養手当の金額だろうな。

この頃が一番最悪だったんだと思う。ほぼ記憶が飛んでる。嫌悪感と吐き気が凄いんだよ。


末っ子が小学生になる頃 母の法要で実家に戻った時に父や伯母に泣かれた。

「何故こんなになるまで何も言わなかったのか」と。

自覚がないので助けすら求められなかったし、いつも儂の話など聞く耳も持たず「お前が悪い」しか言わなかったのにどうしろと。としか思わなかった。

が体も心も正直なものでとうとうぶっ倒れて病院に運ばれた。子供達が救急と父と妹に連絡をしたのだろう。ぼんやりとだけど子供達の泣き顔は覚えている。

連絡を受けた父と妹はすぐに駆け付け、離婚手続きへと行動を移した。

儂はそのまま精神科に移動入院となった。体重が恐ろしく低くて骨と皮しかないんじゃないかと思ったと後に妹は言った。

この精神科の入院生活で私の考えが変わった。

担当医やカウンセラーとの相性もよく、多種多様な入院患者と揉める事もあったけど大半の人とは仲良くなった。似た者同士、同じ傷を負った者でなければ理解出来ない事だってある。お互いに駄目なものは駄目、いいものはいいと励まし合い一緒に泣き一緒に笑い。そう、久々に泣いて笑ったんだよこの頃。そっか、儂感情も表情もなくしてたのかと思ったよね。


女性患者や高齢患者に暴力を振るおうとする患者やストーキングする患者も居た。看護師たちの眼を盗んでね。

自分の中で何かが弾けたというべきか、本来の自分が出て来たのか。

自分より弱い人を守らなければと変な正義感が目覚めた。正義感ではなかったかもしれない。母性だったのかもしれないがそこら辺はイマイチ解らん。夜勤の看護師まで襲われそうになってた時はさすがに儂キレた。なにしとんじゃワレ!とどつき倒したら筋者のおっちゃんに止められた。

そう、患者の中には筋者のおっちゃんやじいちゃんも居たけど、皆甘党の人のいいおっちゃんじぃちゃんだった。よくコーヒーを奢ってもらったけな。面会に来た子供達もとても可愛がってくれた。

たぶん、この入院生活の中で儂は人間らしさというか自分らしさを取り戻したんだと思う。

そして子供達の言葉も大きかったと思う。


「おかん、もう我慢せんでもええけぇ。うちらが今度はおかん守るけぇ。

 おかんは笑ってくれればええけぇ」


談話室で言うもんだから居合わせた患者達号泣、いかつい筋者ですらだよビックリだよなぁ。

でもね、心の病に陥ってる人って基本涙もろいし感情ジェットコースターなんだよ。

皆でTVの映画見た時なんて号泣しすぎてティッシュの奪い合いだったもんなぁ、いい思い出だわ。

この頃になればすっかり頼れるねえちゃん、面倒見のいいおかんと言われるようになってしまっていた。

高齢者の食事介護手伝ってたり(人手不足だったし)徘徊者の介助したり(人手不足だったし)おっちゃん達の相談相手になったり。

そんなこんなで長いような短いような1年の入院生活は終わり通院治療となった。


断片的にしか覚えてないんだよ、解離性健忘症って言うらしい。トラウマ的出来事とか喪失しているらしいんだよ。カウンセリングの途中で断片的に思い出す事もあったけど、体が拒絶反応を起こした。

話ながら今もまだ体が震えて嘔吐感がある。



「お、おい。大丈夫か。血の気が失せてるじゃないか!」

「もうわかった、無理して話すな。俺達が悪かった」

「深呼吸しろ深呼吸」


ん? 何が解ったんだろう? まぁいいか。眠いし眩暈がする。


「少し横になる。お前等も部屋に戻って少しねれば?」


グラビティを解除して解放し儂は眠りについた。



「んぁぁぁぁぁっ、ざけんじゃねぇぞ!タマ潰すぞゴラァァァァァ!」

夢の中で思い出したくもないアノ男に叫んでいた。もっとも姿はモヤって見えていない。

手にはモーニングスターを持っている。腰を抜かした男の股間めがけて振り下ろす。

勿論命中しないようにはしたよ?

男はカタカタ震えていた。 なんか少しだけ、ほんのすこーしだけスッキリした気がする。

読んで下さりありがとうございます。

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