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おかんは今日も叫んでる  作者: 猫茶屋
一章:城内
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おかん吠える①

ぬかるんだ地面は歩きにくいので、ドライヤーの弱温風をイメージした魔法で乾かしながら歩いた。勿論目立たないように儂の周辺だけしれーっと。

そして虫嫌いなぼっちゃん騎士の前に立ちニッコリ微笑んでやる。


「この獣舎担当の世話係です、どうもこんばんは?

 炎なんぞぶっ放して何してくれてんですかね?

 ここ獣舎兼儂の自宅って知ってます?()()焼き殺すつもりですかね?

 儂、あんたと面識無いと思うんですけどね、何か恨まれるような事ありました?」


「なっ、俺は虫を殺そうとしただけで人間を殺すつもりなどない!

 だいたいこんな虫小屋に住む人間がいる訳がないだろう!

 さては貴様魔物か!魔物だから俺の炎が消せたのか!おのれ小癪な!」


なんだろうこの陳腐な言いがかりは。誰が魔物か誰が!失礼な!

これならまだアレのババァ発言の方がマシな気がする。

ずいと一歩近付き、加減しろと言われたので胸倉は掴まずにおく。代わりにドンとどつけばぼっちゃん騎士はそのまま地面に尻餅をついた。

立ち上がろうとするのでそのまま腹を踏みつけた。儂の体重じゃそこまで負担にはならんだろ?たぶん。


「何をする!」


「何をするってどついて踏んだだけだが?

 虫小屋ねぇ、ここ昆虫類以外にも住んでますし?儂れっきとした人間ですけど?

 獣人は魔法が使えないとタカを括っていたんだろうけどな。

 魔法を使えるのはお前だけじゃない、使える人間はここにも居たんだよ。

 ついでに自分が昆虫類を嫌いだから万人(ばんにん)も嫌いだと思い込むなよ?

 そもそもがだ。

 昆虫類にも種類がある。害虫と呼ばれる者も居れば益虫と呼ばれる者も居る。

 害虫を餌とし退治してくれる者、地中に住み土を耕してくれる者

 有機物を分解して土壌を豊かにしてくれる者。

 それらが居なくなったらどうなると思う?土壌は瘦せこけ地表に枯葉や枝

 野生動物の死骸や糞が分解されずに残り疫病が発生する原因にもなりえる。

 そして土壌が痩せ細ると言う事は農作物にも影響が出ると言う事だ。

 解るか?昆虫類も人間も生態系の一部なんだよ。

 その一部である昆虫類を絶滅させる、すなわち生態系の破壊。

 いずれは人間も滅びるって事に繋がるんだよ。

 別に嫌いなら嫌いで良いし無理に好きになれとも言いませんけどね。

 嫌いなら此処に近寄らなければいいだけじゃないですかね?

 それをわざわざ自ら近寄って来て殺そうとするとか、阿呆ですかね?」


一気にまくし立てて腹に乗せた足に体重を掛ける、少しだけね少しだけ。


「何を訳の分からぬ事を。そんな小難しそうな話で俺は誤魔化されんぞ!

 虫も虫けら同然の獣人も汚ら   ぐぇっ」


ちょっと力を強めたら・・・洩らしやがった、大小両方を・・・

あ、白目になって気失ってやがるし・・・えぇー・・・


「嘘じゃろぉぉぉぉぉ」


思わず叫んでしまった。いやだってそこまで力は入れてないし下腹部踏んでた訳でもないのに?腹筋鍛えてないの?嘘だろ、騎士なら下半身含め全身鍛えとけよ!どうすんだよこれ。


「マォ殿大丈夫ですかって、うぇぇぇコイツ」


「そこは言ってやるな」


「あ、はい」


しかしどうするかな、一応洗浄だけしておく?乾かさなかったら洩らしたようにも見えるし?いやでも一応は騎士だしなぁ。悩みつつも水魔法で洗浄しておいた。下半身だけ。

このままにしておくと目を覚ましたらまたうるさそうなので閣下とダルクくんに連れ帰って貰った。後の処理は任せよう。


「しかし、さすがマォ殿ですね。自分感服いたしました!」

「自分もであります!」


などと獣騎士達が寄ってくる。いや感服しました!じゃねぇんだわ。


「ところで君達は大事な仲間である騎獣達にいちゃもん付けられてんのに

 何をしていたのかな。傍観していただけなのかな?

 同じ騎士という立場であるのに何故反論しなかったのか、誰か教えてくれる?」


「同じ騎士と仰いますが自分達は獣人ですし」


何故にそこで視線反らして下を向くのか。


「で?獣人だから何?獣人は地位が低いの?立場が弱いの?

 人間だと偉くて見下されてもそれを当たり前に受け入れてんの?

 種族関係なく立場は同じ騎士なんじゃねぇの?

 己が持つ実力を認められて騎士になってこの場にいるんじゃねぇの?

 なんで自分からそんな壁を作って理不尽受け入れるかな」


「それはマォ殿が人間だから言える事ではありませんか!」


儂に対してそう言い返せるならアイツにもそうやって言い返せばよかろうに。

ああ、なんだ儂が女だからか?年寄りだからか?

自分達より弱いと下に見てるって事か?


「そうだね、儂人間だからな。どんなに嫌でも人間でしかない。

 しかもこの世界の人間じゃねぇしな。

 いきなりこの世界に連れて来られて家族も人生も奪われたあげく刺されて

 元の世界には帰れませんとか言われて

 変な貴族に狙われるから城からは出せないとか言われて理不尽だらけだけど?

 だけど儂その理不尽を受け入れる気はないぞ。

 納得出来なきゃ相手が王だろうが宰相だろうが抗うが?

 それにすべての人間が理不尽を押し付ける訳でもあるまい。

 理解し差別や偏見無く受け入れてくれる人間だって居るから

 今君等は此処にいるんじゃないのか?

 なのに自分達が自分達を、獣人を卑下してしまったら

 受け入れてくれた人々に対して失礼だと思わないか?

 もっともこれは儂の考えだから君等に強要する気も無いし共感しろとも思わん。

 獣人だから を言い訳に逃げるな、自分と向き合って考えてみれば?」


「「「「 ・・・・ 」」」」


儂だって散々理不尽な目にあってるつーの。

いやぁ~異世界の人間だし年寄りだし家族や人生奪われても仕方ないよね。

こっちに縁も所縁も無いから殺されかけてもしかたがないっすよねー。

なんて言えるかつーの!


「まぁ若いから考えるのは難しいか。年寄りの戯言と聞き流せばいい。

 ただ騎獣と言えど仲間だろう、仲間を大切にできない奴は儂好かん」


これ以上は言うのを止めた。

あくまでも儂の考えだし、国や種族が違えば考え方も違って当たり前。

ましてや世界が違うんだから考え方も常識も物の捉え方もすべて違うだろうし。

今ここで論破してもそれは儂の考えの押し付けにしかならん。

とは言ってもだいぶ言った後だけどな、ハハハ・・・


そのまま獣舎に戻り、今度はちゃんとシャワー程度の水量で洗浄し乾燥させ騎獣達の寝床を整える。止まり木が流されていなかったのはせめてもの救いだろう。騎獣達はせっせと後片付けを手伝ってくれたが獣人騎士達は手伝う気も無いようだった。リオル以外は。団長が手伝ってるのに動こうとしないのはある意味凄いなと思った。

なんとか整ったが床材が無いのが残念だ。すまんな、明日また倒木取って来るから。



その夜、虎・獅子・狼 3人の獣人が儂を襲いに寝室に忍び込んだ。

誤解の無いように言っておくと性的な襲うでは無い。暴力的な襲うだ。

まぁ反感は買うだろうと思っていたので想定内ではある。リオルとアルも()()を心配していたが生憎城への報告へ向かってまだ戻っていない。本来なら儂も報告に向かわなければならなかったが、()()を想定していたので所謂(いわゆる)待ち伏せだ。

こうゆう揉め事の火種はくすぶり続けるよりもさっさと消火するほうがいいし、言葉で解らないなら拳で語れ、である。

・・・

だから年寄りらしくも無いし女らしくも無いんだろうか・・・




 

 

読んで下さりありがとうございます。

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