ボアと煙草
獲物を狩って捌くので多少のグロ表現があります。苦手な方は飛ばしてください。
飛ばしても今後の話に影響は無いと思われます(;´Д`)
コッキョクウクウコーコォォォォ
なんとも奇妙な鶏の鳴き声で目を覚ます。
できればチュンチュンとか可愛い鳴き声で目覚めたいものだ。
さて今日は山へ出かけるので手早く朝飯を済ませる。
この世界にもシリアルがあるのは助かる、出来ればグラノーラも欲しい。
この世界の主食はパン。米よりはパンが好きなので最初は喜んだ。本当に最初だけ。
素朴過ぎて硬かっのだ。確かにハードパンは好きだ。だが硬いにも限度がある。
この世界の人々はどうやって食べているのか。
スープにつけて?否、普通に食べている。
つまりものすごく噛む力が強いのだろうと思う。
幼い頃から食べていればそうもなるか。
こっちに来てから数日してシリアルに出会った時には歓喜した。
なぜなら顎が非常に疲れていたから。これで楽になると思った。
気が向けばそのうち自分でパンを焼いてもいいかもしれないとも思った。
あくまでも気が向けばだ。
昼飯は現地調達の予定なので調味料だけ持って行く事にする。
準備も出来たので出発するかと獣舎に行けば
「仕事はどうしたよ閣下」
何故居るのか、暇人なのだろうか。
「フッ、当然私も行くからだな」
何が当然なのか問いただしたい。
「閣下説明が足りませんよ。
いいですか、遊びじゃないんです、浮かれないでくださいね。
あ、おはようございますマォ殿。
陛下からこれを機に獣舎の環境改善に取り組むよう言われましてね。
マォ殿に付いて行き学んでくるように部下に申し渡そうとしたんですがね。
見ての通り意気揚々と自分がきてしまったんですよこの閣下」
あー・・・ なるほどと思った。この閣下騎獣すきだよね。特に蛇が。
「お陰で私まで付いていかなきゃならないじゃないですか。
他の部下では閣下を抑えきれませんからね」
それはご愁傷様? ダルクくんは毎度閣下に振り回されているんだろうなと思う。
今日の非番は蜘蛛のココア。乗せてくれる気満々なのでお願いする事にした。
ゲームでは騎乗で蜘蛛使ってた事もあったけど、こうやって実際に乗るとは思ってなかった。
予想外に毛はフワフワで気持ちがいい。例えるなら馬の毛並みににているかもしれない。
他の皆はモファームで行くみたいだ。
儂・アル・閣下・ダルク・リオル・獣騎士団の非番の子の6人で・・・ リオル?!
「リオルって騎士団長だよな? 仕事は?」
「これも仕事の一環だろう」
「誰がマォ殿に付きそうか揉めたんですよ。自分は非番だったので決定でしたが
もう1人は腕相撲勝ち抜き戦の勝者でという事に。」
「それでリオルになったのか」
「おうよ!」
おうよじゃねぇんだわ、そこは新人とかに譲ってやれよ・・・。
なんと言うか子の親にしてこの子有りという気がした。
気を取り直し出発。山までは1時間くらいかと予想してたのに30分で着いた。
意外にも速かったんだよココアのスピードが。
モファームは以前に乗った時で解っていたが、蜘蛛はもう少しゆっくりめなイメージだった。どっちかって言うと糸を使って風に乗って飛ぶイメージだったんだよな。
ただ風圧で髪がボサボサになってる、全員だけど。
器用に前足で乱れた髪を直してくれている。うん、ありがとう。でもその気遣いが出来るなら帰りはもう少しだけゆっくり走ってくれると嬉しい。
さて欲しいのは朽木や流木・倒木と少量の腐葉土。山には天然の腐葉土があるので利用させてもらおう。
「おかん、止まり木に使うのはこのくらいの太さの枝でいいのか?」
見て見れば少し細い気もする。なんせ蛾も鶏もデカイからな。
「ん~、もうちょい太くてもいいかな。枝じゃなくて幹その物でいいかもだなぁ」
「了解」
儂も倒木を見つけたので余分な枝葉を払っていく。
鉈も持ってくりゃよかったな、あるのか知らんけど。
そう言えば昼飯用に何か狩ってこないとだなぁ。 チョイチョイ
ん?ココアどうした。余り近づくと怪我するよ。
つつかれて振り向けば 立派なボアが置いてあった。ちょっと驚いたのは内緒。
何時の間に獲って来たんだ。そして嬉しそうだな?
これはあれか、犬が投げたボール取って来た時の撫でろの眼か。
撫でようとして疑問に思う、蜘蛛が気持ちいい場所ってどこだ・・・
犬猫と同じで喉元でいいんだろうか。くいくいっ
あ、ここ? やっぱり喉元でいいのか。ほれほれ。
ってじゃれている場合ではない。せっかく獲って来てくれたんだから血抜きして捌かないと。おや?すでに血抜きが済んでいる。
さすがココア、わかってるねー。ココアも肉喰うか?
げふっ
(・・・そういう事か)
抜かれた血はココアの腹の中と。知りたくなかったなぁ(遠い目)
いや蜘蛛の種類によっては消化液を流し込んで溶かして食べるタイプや吸血するタイプが居るのは知ってた。知ってたけども。うんまぁ、自然の摂理というか生きる為だし単なる血抜きであって無駄がないエコサイクルだと思おう、そうしよう。
「アル・リオル。儂昼飯の準備すっから集めた木纏めといてくれん?」
「「 了解 」」
「マォ殿、自分は何をすればよいでありますか!」
ここにも居たよ軍人もどき・・・
「えーっと、じゃあ君はそこの大鍋に湯を沸かしてくれるかな」
「了解であります!」
だから何故に敬礼・・・儂上官じゃねぇんだが。ただの騎獣世話係なんだが。
ババァ呼ばわりよりいいけどさ。
さぁ捌いていこう。内臓を破損させないように気を付けて腹を裂く。次に洗浄、これは魔法が役に立った。ランクⅠでも水は出せるからね。そして内臓はそのまま丸っと取り出す。特に排泄器官は要注意。その後腹腔内をまた洗浄。
ここからが体力勝負となる。
手頃な高さの枝を利用して足から吊るし皮を剥いでいくんだが、儂は正規のやり方を知らないので我流でやる。まずは毛を除去する、これはガスバーナーがないので火魔法で。その後さっと洗浄し足首部分に切り込みを入れそこから一気に下へ。これが結構力仕事で下手をすると腰がやられる。皮剥ぎナイフがあれば楽なんだけど無いので包丁で代用。意外と難しい。剥ぎ終わり切り分ければ馴染みのあるブロック肉へと変貌する訳だ。
平気な顔してやってるように見えるだろうが実は慣れるまでは何度か吐いた。
慣れないと視覚だけでなく嗅覚的にもやられるんだよ。
まぁ普通の人ならこんな経験はめったにないんだが。
久々にやったから腰が痛い。
「おかん、言ってくれれば俺が捌いたのに」
「よく捌けたな」
「んー、まぁ年とりゃそれなりに色々経験があるって事だな」
「「「 なるほど 」」」
腰が痛いのでちょっと休憩。あー、煙草が欲しい、出来ればメンソールがいい。そういやこの世界には煙草はないんだろうか。
「この世界には煙草ってないん?」
「あるにはあるが、おかんが知ってる煙草と同じ物かはわからんな」
確かに。名前が同じでも別物かもしれない。
「自分持っているであります!」
と非番の騎士くんが差し出してくれた煙草は儂の知ってる煙草だった、見た目は。
火をつけて吸って見れば・・・よかった普通に煙草だった。
「ありがとう、えっと何くんだろう?すまん名前聞いちょらんかった」
「はい!自分の名はジャックであります!」
「ではジャックくん。ありがとう!どこで買えるのか後で教えてもらえるかな?」
「了解であります!」
店に行けばメンソールもあるかもしれない、無かったら自分で改良してみようか・・・
出来るのか?ミントオイルがありゃなんとかなるか。
一服もしたしさて調理開始。猪肉で手軽なのはやっぱ串焼きか。
食べやすい大きさに切って臭み消しで生姜と胡椒を揉みこむ。本当なら牛乳で揉みこみたいけどさすがに野外でそれはちょっと。後処理(牛乳の処理)が困るからなぁ。
揉みこんだらそのまま串に刺して行けば出来上がり。塩は焼きながら掛ければいい。ちなみに醤油でも旨い。
焼き始めれば辺りにいい感じの匂いが漂う。
ぐぅーと誰かの腹がなった。焼きあがるまでしばし待てぃ。
結果としてボア肉がこんなに旨いとは思わなかったと好評だった。
儂が知ってる猪肉よりも味が濃くて脂の甘みも強かった。
このボアがモンスターだと知ったのは帰宅後で驚いた。食えるんだモンスター。
ゲームだけど某有名ハンターゲームでも狩って食ってたもんな。
そっか、儂モンスター捌いて食ったのかぁ59年の人生で初だよ!ハハハ・・・
読んで下さりありがとうございます。




