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41話 ひとつ、問題が解決した。

 日も暮れかけた頃。

 ベッドの上で屍のように転がっていたら、アオイくんから通話がかかってきた。


「どうだった?」が第一声。

 ねぇねぇ今どんな気持ち? という台詞に、私の脳内では変換された。


「真っ白に燃え尽きました」と答えそうになって、踏み止まる。

 そういうことではない。

 時を戻そう。


 今日の朝にまで話は遡る。

 1日の中身が濃すぎて、ずいぶん前のことのような錯覚が起きていたけれども。

 午前の診察は、どうだったのか。


「安静にさえしていれば、無事に出産まで行けるって言われたよ。だから、心配しなくても大丈夫」


 記憶の彼方から、私は最適解を引っ張り出してくる。

 なんとか、不自然な間を空けずに済んだ。


「良かったね」

 思いのほか、嬉しそうな声がスマートホンから聞こえてきた。


 ふわり、とした穏やかな雰囲気が漂う。

 良かったけど、良くない!


 ちょっと彼が呑気すぎるように感じられたので、直近の問題を私はぶつけてみることにした。

 たまには彼も困ればいいのに、と少しだけ思ってしまう。


「それで、分娩予約をしないといけないんだけど」

「うん」

「……今、通っている産院でもいい?」

「いいよ」


 うっかり、話が終わりかけた。

 いやいやいやいや、おかしいだろ。


 大丈夫?

 ちゃんと考えてくれてる?

 まさか一生、別居するつもり!?


 そこはかとない不安に包み込まれる。

 しかし、事もなげに彼は言った。


「豊田市内の産婦人科は混み合うことで有名だから、そっちの方がいいと思うよ」

 穏やかな声が続く。

 

「もし朝のラッシュの時間帯に被ったら、豊田市内を移動するのは至難の業だしね」


 世界の豊田市は、どうやら凄まじい街らしい……。

 正直、よく知らなかった。

 数えるほどしか、私は行ったことがない。


 住む場所が名古屋市だろうと豊田市だろうと、今の産婦人科で分娩予約をした方が良いという結論は想定していなかった。


 直近の問題が解決しただけでも、気分は軽い。

 今日のところは、話を終えても良いのかもしれない。


 しかし、私のなかでは先に新居問題が解決するはずと思っていたので、腑に落ちないところはあった。

 逆に、聞いておいても良いのかもしれない。


 新居、という言葉を使うのは気が引けたので、遠回しに私は質問してみた。

「アオイくんは今後、住みたい場所ってあるの?」

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