37話 食事の注意点
しかしながら、お金が増えているのは揺るぎない事実。
気兼ねなく、コンビニでお昼ご飯を買っていくことにした。
朝・昼・晩の3食。
自炊をしていると1日が早い。
あっという間に、時間が過ぎてしまう。
しかも、私は料理をするのが好きではない。
本当は毎日でも、学食を食べるためだけに大学へ行きたいくらいである。
食堂のおばさんに、顔を覚えられてさえいなければ良かった。
「あれ? 木原ちゃん、今日も授業なの?」と、何気なく聞かれてしまうと恥ずかしいので行けない。
何にしようかな、と悩みつつ。
おにぎりコーナーを物色した。
よく私が選びがちな明太子に、手が伸びそうになる。
アウト。
生肉・生魚・生卵。
加熱されていないものは、食中毒を起こしやすいため避けた方が良いらしい。
嘘でしょ? と思う。
アルコールもカフェインもダメ。
生食もダメなんて、何かの冗談では?
でも、妊娠中の免疫力は低下するのが当たり前だ。
免疫細胞が通常運転だと、母体は赤ちゃんを異物と見なしてしまうから。
赤ちゃんを攻撃しなくても良いように、免疫力がザルになる。
結果として、細菌やウイルスも入りやすくなる。
だから、今まで普通に食べてきたものが食べられない。
なかなか欠点の目立つ仕組み。
もうちょっと、何とかならなかったのだろうか?
しかし、愚痴を言っても始まらない。
パスタサラダ、果汁グミとソーダ飴、グレープフルーツジュースを持ってレジに並んだ。
飴やグミを買ったのは、高校生以来かもしれない。
まるで別人になったみたいな、ラインナップ。
好みのものが食べられないことに関して、唯一の救いがあるとすれば——。
徐々に、私の味覚が変化していることだった。
無性に酸っぱいものを口にしたくなる自分が、不思議でならない。
誰の? という感じのコンビニのレジ袋を提げながら、帰宅する。
お昼ご飯を食べ始めると、気持ち悪いのが収まった。
ホッとしたのも一瞬。
食べ終わってからも、まだ胃に不快感がある。
え?
何かが口に入っていると、症状がない。
気づいてからは、飴やグミを食べ続ける羽目になった。
地味に、つらい……。
もう寝てしまおうか、とも思う。
しかし、日に日に体調の悪さが増していくとしたら厄介だ。
母子手帳を受け取りに、私は午後から保健センターへ行くことにした。




