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エピローグ

 1561年春、武田(上里)和子は、自らの腹を痛めた幼子の面倒を乳母に任せて、この年では初めての法華宗徒の幌馬車の群れが、ミシシッピ川流域を目指して旅立つのを、夫と共に見送っていた。

 ほぼ同時に、同様にカリフォルニアの大地からも、法華宗徒が集った幌馬車の群れが、ある程度は間隔を空けた上でミシシッピ川流域を目指して、旅立ちつつある筈だ、と和子は考えた。

 更に考えれば。


 テキサス・トレイルにより、本願寺門徒の幌馬車の群れも、テキサスを目指しつつある筈だ。

 先陣を切った松平家によりニューオリンズ周辺を東端として、テキサスの開拓活動が行われつつある。

 そこに下間家の本願寺の坊官等も乗り込み、原住民への布教、改宗活動を試みつつある。

 リオグランデ川が、事実上のスペインと日本との国境ということになっており、それ以北で日本人の植民活動が続いている。


 この状況について、メキシコのスペイン植民地政府は徐々に気付きつつあるのでは、という噂が北米の日本の植民地内では広まりつつある。

 北米から中米の原住民間で、全く交渉、交流が無い訳がない。

 そういった原住民同士の交渉、交流を通じて、スペイン植民地政府が、日本の植民地が急速に拡大していることを当然に把握している、と推測するのが、むしろ当然だった。


 和子は、自分のいる土地がオレゴンであることに、少し安心感を覚えており、更にそれについて罪悪感も覚えていた。

 日本とスペインとは、何れは戦争に突入するだろう。

 そうなったら、米大陸は戦場になるのは必至だ。

 だが、主な戦場はメキシコ、テキサス、カリフォルニアになる筈で、オレゴンにまで本格的な戦禍が広がることは無いだろう。

 仮にそうなっても、武田家の面々が自分達を守ってくれるだろう。

 そんなことを考えてはいけないのだろうが。


 そして、戦争になった場合、日本の北米植民地の人口は膨大だ。

 日本本土等からの移民に加え、出産等による自然増も多いし、北米の原住民をドンドン取り込みつつもあるからだ。

 最新の推計だとカリフォルニアを中心に、日本の統治に服している原住民を含めると約300万人近くに達しているとか。


 更に日本本土や豪州、比島等の日本の植民地の人口を併せれば、日本の人口は約1500万人を数えようとしている。

 夫の義信に言わせれば、最大10万人の日本兵が北米で募兵するだけで揃うだろう、日本本土からも併せれば、数十万単位に達するとのことだ。


 それに対して、スペインの人口は本土に加え、属領と言えるネーデルランドやイタリア、更に中南米の原住民等を併せれば、日本を確実に人口的には上回るだろうが。

 スペイン本土はともかく、ネーデルランドやイタリア等では、スペインの統治は上手くいっていないらしいから、当然に守備隊をスペインは残さねばならない。


 更にカリフォルニアという大規模な根拠地を北米大陸に持つ日本に対して、スペイン軍は中南米に大規模な根拠地を持っていない。

 そして、武器や戦術においても、日本は優位に立っている。


 武器においては、日本の正規軍の歩兵では後装式ライフル銃が標準装備になっているし、後方部隊、民兵隊でさえ前装式ライフル銃が標準装備になっているのに対し、スペイン軍はマスケット銃だ。

 更に日本軍は全員が銃兵なのに対して、スペイン軍は槍兵が未だに多数を占める。

 大砲に至っては、スペイン軍がカルバリン砲が主力なのに対して、後装式ライフル砲が日本軍では採用されつつあるのだ。


 戦術に至っては言うまでもない。

 皇軍の戦術指導を受けている日本軍に対して、スペイン軍の戦術は旧弊なものだ。


 だから、大丈夫と思うのだが、それによる戦禍を考えると。

 和子は想いに沈んだ。

 これで完結させます。


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